「なんで性欲だけは手持ちの駒で満足しないといけないの?」レス夫婦が抱える本当に埋まらない、埋めたい「穴」

マンガ

更新日:2024/5/5

私の穴がうまらない

 結婚しても、子どもができて親になっても、配偶者以外の相手に目移りすることはあるだろうか。もし、その思いが叶い、相手と性行為に至ることがあれば不貞行為となり、十分な離婚理由となる。結婚はイコール「あなたとしかしません」と決めることだ。しかし、どんなに「あなただけ」と願っても配偶者との性的関係が薄れる=セックスレスになることだってある。ではレスになった時、どうしたらいいのだろうか。

私の穴がうまらない』(おぐらなおみ/KADOKAWA)は、そんな夫婦間のセックスレスを題材としたフィクションコミックエッセイ。雑誌『レタスクラブ』で2017〜2020年に連載され、多くの反響を呼んだ後、単行本化された。

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 筆者は主婦になってからレタスクラブを手に取るようになり、本作も連載当時に読んでいた。親しみやすいかわいい絵柄とは裏腹に、題材がセックスレスであることに大変な衝撃を受けたことを、今でもよく覚えている。

私の穴がうまらない

私の穴がうまらない

 主人公は、フリー編集者の中井ハルヒ・42歳。2歳上の夫・マサルと結婚して15年、中2の娘・アラタとの3人暮らし。夫婦仲が悪いわけではないし、家族仲が悪いわけでもない。それでも心にも体にも満たされない穴があるように感じている。それはきっと、何年にも渡ってセックスレスだから…。

 悩みがある時は、何を考えていても自分の悩みと結びつけてしまうことは誰だってあるだろう。ハルヒもそうだ。賃貸マンションの更新通知が来た時は「引っ越してから、この家で1回もしていない」と思ったり、仲睦まじそうな新婚カップルを見て「現実ってやつを教えてやりたい」と思ったりする。レスという悩みが解消されない限り、この考え方も解消されないのかもしれない。そんな時、夫と温泉旅行に行くと、布団の上で「できなくなっちゃった」と宣言される。さらに、夫の転勤が決まり、家族としての岐路に立たされる。

 もしセックスレスで悩んでいる時に「できなくなっちゃった」と言われたらどう答えるだろうか? 「できなくなるってなんで? どうしたらできるようになる?」と夫を問い詰めるかもしれない。「病院に行ってみる?」とすぐさま解決に向けて動き出す人もいるかもしれない。ハルヒの場合は、何も聞けなかった。聞き返してしまうとそこには絶望が待っていると分かっていたから。さらに転勤という家族にとって大きな転機が訪れたことで、心は揺れ動く。

 民法上では、婚姻届を出せば夫婦になれる。しかし、夫婦関係を続けていくには努力や気遣いが必要だ。何か壁にぶち当たったとき、一緒に乗り越えたいと思えるかは、普段の関係があってこそだろうと思う。

 ハルヒの夫婦関係とあわせて、ハルヒの同僚のミヤコのエピソードにも注目して欲しい。結婚して2週間で夫に浮気され、それから夫婦関係は悪いが離婚するつもりもない。彼女にも何らかの「穴」があるのではないかと読者は考えさせられることだろう。

私の穴がうまらない

私の穴がうまらない

 レス、そして転勤という夫婦の壁にぶち当たったハルヒは、一体どうするのか。ミヤコの夫婦関係はどうなっていくのか。そしてタイトルにある「穴」の本当の意味とは、何なのだろうか。ぜひページをめくって確かめてほしい。

文=ネゴト/ すぎゆう

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