【ネタバレあり】累計500万部超えの『よふかしのうた』ついに完結! 恋をしてしまった少年と吸血鬼が選ぶ未来とは?

マンガ

公開日:2024/3/31

よふかしのうた
よふかしのうた』(コトヤマ/小学館)

※本記事には若干のネタバレを含みます。『よふかしのうた』20巻までを読んでいない方は20巻までの若干のネタバレがあることをご了承の上お読みください。

 夜ふかしの時間はやがて終わる。眠気の我慢が限界を迎えるし、日が昇り朝がやってくるからだ。

 マンガ『よふかしのうた』(コトヤマ/小学館)が完結した。本作は、2024年1月24日発売の「週刊少年サンデー」9号に最終回が掲載され、そのおよそ2か月後に、最終巻となる単行本20巻が発売された。

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 TVアニメ化もされた人気作で、第68回小学館漫画賞の少年向け部門も受賞。累計発行部数は500万部を突破している。2019年から始まった物語を振り返り、最終巻の20巻について書かせてもらう。はたしてどのように大団円を迎えたのか。

“体だけの関係”だった友達の吸血鬼。

 不登校かつ不眠の少年・夜守コウは、深夜に吸血鬼の七草ナズナと出会う。彼女は彼を夜遊びに誘い、彼の血を吸う。しかし何も起こらない。いわゆる吸血鬼の眷属になるには、“条件”を満たす必要があったからだ。

 それが「吸血鬼に恋をすること」だった。

 コウは吸血鬼であるナズナが怖くはなかった。「私たちは体だけの関係の友達」だとからかってくる彼女を気に入っている。街をブラブラすることや、家でゲームをするような夜ふかしも楽しかった。かくして、彼は吸血鬼に、ナズナに恋をして眷属になろうと考えた。ただ、恋心がまだよく分からないコウは、頭で考えているだけでなかなか上手くいかない。

 物語は展開する。ナズナがコウへ好意を抱くのだ。余裕があるミステリアスな“おねえさん”だった彼女は、周囲が驚くほど分かりやすい、照れまくりの純情少女になってしまう(元々恋や愛を恥ずかしがってはいたが)。

 さて、これで「めでたしめでたし」ではない。吸血鬼が先に人間を好きになると、血を吸った時点で人間に戻り、死んでしまうからだ。あるいは人間のほうが死んでしまう可能性もあるのだ。吸血鬼の吸血衝動は「死が待っている」と分かっていても抑えられない。お互いの気持ちが通じ合ったのに、二人の関係は友達のままではいられなくなってしまった……。

真夜中のせつない別れとボーイ・ミーツ・ガール

 コウは、ナズナ以外に多くの吸血鬼や眷属たちと出会ってきた。そんな彼らと話をし、ときには拳を交えて成長してきた。

 突然血を求めてこなくなったナズナを気にしていたコウは、彼女の母親・ハルの眷属であるハルカから真実を知らされる。また、ナズナの仲間の吸血鬼・セリと会い「私は眷属とは離れ離れになってもさみしくない、なぜなら彼とは元々友達だから」「友達は10年ぶりに会ったって友達」だと聞く。

 心を決めたコウは、彼と距離を置いていたナズナのもとを訪れ、夜の海へ誘う。終わりが近づいてくると、ナズナはコウと離れて生きていくと口にした。コウは……何も言えなかった。二人は暗い砂浜に今までのように一緒に過ごした。やがて来る朝まで。別れのときまで。

 ナズナが姿を消してから、コウは普通に中学校へ通う。進学することとナズナの過去を知る探偵・餡子の助手になると決める。その理由は?

 物語は、夜ふかしを楽しんだつまらなそうだった少年と、さみしそうだった吸血鬼の二人にふさわしい終わりを迎える。私はラストシーンを読んだとき、あの曲が聞こえてくるようだった。Creepy Nuts の曲から着想を得て生まれたという本作は、2022年にTVアニメ化され、彼らがオープニングとエンディングテーマを担当した。そんなTVアニメの第2期が「夜はまだ終わらない」というナズナのセリフとともに発表された。うれしいことに、楽しい夜ふかしの時間はまだ続くのだ。

 原作好きな私からしても再現度も完成度も高かったアニメは楽しみだ。ただ、もしアニメしか見ていなかった方は、首を長くして待ちつつ、原作を予習してみてはいかがだろうか。

文=古林恭

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