1000年を生きるエルフに転生!? 持て余す程の寿命で最強の魔術を手に入れた少年と人間との絆を描いた感動作!

マンガ

PR公開日:2024/4/2

魔術を極めて旅に出た転生エルフ、持て余した寿命で生ける伝説となる
魔術を極めて旅に出た転生エルフ、持て余した寿命で生ける伝説となる』(kanco作画、榊原モンショー原作/スターツ出版)

 エルフに転生してすべての魔術を極めた少年が、異世界を旅し多くの人々と出会いと別れを繰り返し、生きた証を世界に残す異世界転生ファンタジーが『魔術を極めて旅に出た転生エルフ、持て余した寿命で生ける伝説となる』(kanco作画、榊原モンショー原作/スターツ出版)である。電子書籍サイトで先行発売した電子版が人気ランキングの上位入り、Webでの大反響を受けて、紙コミックが発売された。

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本作品を試し読み

 現代で平凡な人生を交通事故で終え、異世界で1000年の寿命を持つエルフに転生した主人公のリース。前世では恋人も友人もなく、熱中するものもなく、ただ惰性で生きて何も残せなかった後悔から、「今度こそ本気の人生を生きて、自分の生きた証をこの世界に残したい」と願う。

1話p2

百年をかけた努力の末に到達した魔術の極み

 リースが生まれたエルフの里は、古代樹ユグドラシルを中心に森が広がり、外からの侵入を拒む結界で覆われ、争いや災いもなく、食料も豊富な隠れ里。ほとんどのエルフは森の外へ出ることなく寿命を全うする。そんな生活を10年間続けていたリースは、平凡な日常に飽きて外の世界への興味が湧いてくる。

 前世の記憶があるリースは、ほかのエルフよりも早熟で聡明だ。しかし大人のエルフたちにとっては、リースは生き急いでいるようで危なっかしい存在。1000年の寿命を持つエルフの感覚では、百歳でもまだまだ子供。ようやくひとりで森に木の実を採りに行けるという年齢だ。つけ加えて、いままでにヒト族への興味を抱いて森を出たエルフたちは、ことごとく悲惨な結末を迎えていた。周囲が心配するのも当然だった。

1話p8

 それでも森の外へ出たいリースにエルフの長老は試練を与える。それは「百歳までにエルフの真髄である回復魔法を極めること」。

 異世界で暮らすさまざまな種族は、それぞれに得意な魔法がある。エルフが得意とするのが回復魔法だ。しかし極められたエルフは、これまでに数えられるほど。

 最初からリースを諦めさせるための無理難題だったが、リースは20歳で最高峰の回復魔法を習得して長老を驚かせる。それだけでなく、ほかの魔法も使えるのでは?と考えたリースは、百歳までに回復魔法だけでなく、すべての属性魔法を極め、最強の魔術師になってしまうのだ。

1話p15

1話p16

 百年間、日夜欠かさず魔導書を読み、魔力を鍛え、魔術を磨き上げる努力の積み重ねは、転生者や才能という言葉だけでは説明できないだろう。「この人生では本気になる」という彼の覚悟の強さがうかがえる。

人間の友の老いを知る、そして幼き少女との出会いと成長

 エルフの森から出られないリースだったが、外の世界にも人間の友人がいた。修行のための魔導書を取引する近隣の領主グリレット・ガルランダだ。彼と会うことを楽しみにしていたリースだが、あるときから高齢を理由に息子に代替わりしてしまう。

 いつの間にか老いてしまっていた友人を思い、リースはエルフと人間の寿命の差を思い知らされる。

 外の世界に出たらグリレットに会いにいこう。新しい目標を得たリースは、さらに魔術の修行に励む。

 百歳まで残り7年に迫った頃、リースは森の縁で魔物に襲われていた奴隷の少女を助ける。「つよくなりたい、つれていって」と願う少女だったが、修行中の身であるリースは少女を連れて帰るわけにはいかない。7年後までその覚悟を変わらずに持っていられたならばまた会おうと約束を交わし、リースはその場を立ち去った。

2話p27

 7年後、百歳となったリースは長老が課した試練を達成し、ついに外の世界へと旅立つ。里を出たリースを待っていたのは、冒険者として成長した奴隷の少女ミノリだった。頼れる旅の仲間を得たリースは、旧友グリレットに会いに人間の街を訪れるも、寝たきりの彼と対面し――⁉

 エルフにとってほんの僅かな時間で人間は老いてしまう、しかし瞬く間に人間は強く成長する。それが人間の命の儚さであり、逞しさだ。

 老いて己の使命が果たせなくなったとしても、その子や孫が後を継ぎ、思いと約束を脈々と受け継いでいく。大切な人たちから受け継ぎ守り続けることこそが、リースの目指す旅の目的、「自分の生きた証をこの世界に残す」ということではないだろうか。

 普段、私たちは友達や家族、大切な人との関係が当たり前に続くと思っている。けれど人の命は永遠ではない。いつ何時、事故や病気、自然災害が起きてその絆が失われてしまうかもしれない、あるいは災難に遭遇するのは自分自身かもしれない。その時になって後悔をしないために、今のこの一瞬一瞬を本気で生きることの大切さをこの作品は描いているように思う。

 いよいよ外の世界に飛び出したリース、これから語られる生きる伝説のはじまりを是非見守ってほしい。

文=愛咲優詩