1巻発売前から重版決定のセンチメンタルラブ。中学時代の忘れられない初恋に翻弄される少女漫画

マンガ

PR更新日:2024/5/31

君を忘れる恋がしたい"
君を忘れる恋がしたい』(結木悠/集英社)

 『君を忘れる恋がしたい』(結木悠/集英社)が絶好調だ。「大好きだった彼との忘れられない初恋」に翻弄される主人公を描く本作は、なんと1巻の発売前にはすでに重版が決定していたという人気ぶり。発売後には瞬く間に店頭在庫が完売し、SNSには「買えなかった!」というファンの悲鳴がこだましたという。

 そんな人気爆発のスタートダッシュから約3ヶ月、5月には待望の2巻が発売となった。本記事では、圧倒的人気で2024年の少女マンガシーンを牽引する『君を忘れる恋がしたい』の魅力をひもといていく。

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 主人公の志乃は中学3年生のある日、空き教室でギターを弾く学年の人気者・瀬名に遭遇する。その日を境に心を通わせあった2人は、やがて恋人同士に。志乃は瀬名の真摯な優しさに、瀬名は志乃のまっすぐな姿に惹かれ幸せな時間を過ごすが、瀬名の転校をきっかけに2人は別れの道を選んでしまう。

 それから4年、志乃は進学先の大学で瀬名と再会するも、女遊びにかまける人タラシな彼の一面を知り愕然とする。瀬名のことが忘れられなかった志乃は、誰との恋愛も考えられなかったからだ。しかし同じバンドサークルで活動するうちに、瀬名との距離は再び急接近していき…。

 初恋の思い出に関係なく今の2人の形を受け入れようする志乃だったが、ふとした瞬間にあの頃に引き戻されてしまう姿がもどかしく愛おしい。

「変わってしまった彼の中に あたしが好きだった瀬名が残ってる」

 自分の知っている瀬名じゃないのに、目の前にいるのは紛れもない彼なのだ。その事実が、志乃を新たな恋へと導いていく。

 志乃のように忘れられない初恋を抱え続けている人というのは少なからずいる、いや、実はとても多いのではないだろうか。不可抗力で離れてしまったのならなおのこと、その思い出に強く支配されてしまう。だからこそ志乃は瀬名の変化に再会した喜び以上のショックを受けたし、何を考えているのか分からない瀬名を前にうつむいてしまった。本作はそんな志乃の乱高下する心情の描写がとても素直だ。複雑な思いがひしひしと伝わるモノローグの数々に、胸がきゅっとしめつけられる。

「あの頃のきらめきが 胸の奥で騒いでる」
「瀬名を好きになった あの時から 時が止まったまま あたしは 今でもずっと 瀬名が好きだ」

 少女マンガの魅力はモノローグにある、と言っても過言ではない。本作のモノローグはまるでラブソングのような切なさを堪能できるので、ぜひじっくりと味わっていただきたい。

 さらに、キャラクターたちのビジュアルにも注目だ。ページをめくるたび、まるでスポットライトを反射させたかのようなまばゆい筆致に目を奪われてしまう。とくに瀬名の美しさは、かなりすごい。瞳から指先、髪の1本に至るまでカッコいいが全身にほとばしっている。

 1巻では2人の過去と現在地が丁寧に掘り下げられた。新たな物語が始まる2巻では、瀬名と志乃の関係が思わぬ形で進展。同級生たちとのバンド活動も、2人の青春に華を添える。「忘れられない初恋」の続きを歩き出した瀬名と志乃を、ぜひ見守っていただきたい。

文=ネゴト/ あまみん


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