分かっているのにやめられない… ゲームに依存し、苦しむ息子。依存症に立ち向かう家族の物語

マンガ

公開日:2024/6/18

母のお酒をやめさせたい

 やめたいのにやめられない。そのせいでいつの間にか借金を抱えたり、家族関係がボロボロになったり、また手を出してしまう……。負のスパイラルに陥ってしまうのが、依存症の怖さだ。『母のお酒をやめさせたい』(三森みさ、今成 知美・ 松本 俊彦:監修/KADOKAWA)は、そんな依存症の恐ろしさと、解決策を模索しながら前進していく家族を描いている。


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 本書は、ギャンブル依存症、ゲーム障害、薬物依存症、アルコール依存症の4つの依存症について取り上げている。「依存症」という病気がきっかけで家庭崩壊を引き起こす様子をストーリー仕立てでリアルに描いているのだ。

 ギャンブル依存症の話では、普段はやさしい父親が借金を抱えてまでパチンコをしている事実が発覚する。借金がきっかけで両親がケンカをしているのを見たくないと明るく振る舞う息子が健気で不憫だ。このように依存症はお金が絡むこともあり、一瞬で家庭をめちゃくちゃにしてしまう可能性を持っている。

母のお酒をやめさせたい

 ゲーム障害の話では、ゲームにのめり込んでしまい学校生活に支障が出る少年が主人公だ。視力が落ちて宿題も手がつかず、親子関係にも亀裂ができてしまう。ゲームにのめり込んだ経験はきっと多くの人があるだろう。他人事とは思えない、身近な恐怖を感じる。

母のお酒をやめさせたい

 ただ、本書は「依存症はこわいものだ」で終わらせるのではなく、精神保健福祉センターで相談するなど具体的な対処法を紹介している。いくつかのポイントに分けて解説しているため、まったく知識がなくても分かりやすい。漫画というスタイルをとっているのも、子どもにも読みやすいという良さがある。

母のお酒をやめさせたい

 依存症は子どもにとってよく分からない未知の病気だろう。大人でも理解しきれていない人が多いため、当然なのかもしれない。そもそも依存症を自覚するのが難しいという特徴がある。ゆえに、本書のような手に取りやすく内容がすっと入ってくる漫画は貴重だ。勉強になるため、自分は依存症とは無関係だと思っている人にも読んでみてほしい。

 依存症になったとき、やめられない自分や家族を責めたくなるかもしれない。しかし、自分の意志ではやめられず、つらいときにかかりやすいのが依存症だ。病気についての知識を持っておらず、精神的に追い詰められるケースは少なくないだろう。万が一のとき、本書が力になってくれるはずだ。

母のお酒をやめさせたい

 本書で描かれる依存症を抱えた人々は、ゲームやお酒といった異なるものに依存している。1種類だけでなくさまざまなパターンを紹介することで、いろんな人が「もしかして……」と思えるような作りになっている。だからこそ、依存症を身近な病気として捉えて自分事に考えられるのだ。

 さらに、物語の中で名言と呼べるような心に響くセリフが出てくる。読み手の胸にときにグサリと刺さり、ときにジーンと染みるシーンがここぞというタイミングで登場するのだ。

母のお酒をやめさせたい

 依存症を克服しようとしている人にとって、本書は精神的なお守りの役割を果たしてくれるだろう。また、依存症から目を背けていても、本書が向き合うきっかけになるかもしれない。

文=ネゴト/ まわる まがり

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