丸メガネで小柄なコンビニ店員が強すぎる! 国をも動かすその強さの秘密とは? 異色の格闘バトル漫画『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』

マンガ

PR公開日:2024/6/18

TSUYOSHI
TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』(丸山恭右:著、Zoo:原案協力/小学館)

 弱そうなキャラクターが実は強い。

 よくある物語の王道設定だ。こんなキャラに個人的には強く憧れてしまう。子どもの頃から、そして大人になった今もなお「自分がこうだったら」と想像して胸をアツくしてしまう。

 史上最強のコンビニ店員現る!

 そんなキャッチコピーの人気格闘マンガ『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』(丸山恭右:著、Zoo:原案協力/小学館)の主人公・TSUYOSHIこと川端強(かわばたつよし)は、フリーターのコンビニ店員だ。小柄で非力そうで、メガネをかけたモブキャラのような青年である。そんな見た目とは裏腹に、彼は無敵の強さを持つ主人公で、舐めてくる奴はもちろん、腕に覚えのある格闘家たちを圧倒的な力で片っ端から倒していく。連載先のサイコミでは2024年5月に第1章が終了しており、現在は新章「世界革命編」が連載中だ。そんな熱い注目を集めている本作の序盤のあらすじと魅力を紹介する。

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超大国が目をつけるコンビニ店員とは?

 物語は空手家・星崎愛之助(ほしざきあいのすけ)が大会で優勝したところから始まる。星崎はライバルとして切磋琢磨していた夢丘照(ゆめおかてる)が、大会に出なかったことに納得がいかず、直接夢丘に会いに行くと、彼はすでに空手を辞め、そして自分たちが比較にならないバケモノのような強い男がいることを知る。その男――TSUYOSHIのもとへ向かった星崎は威勢よく立ち合いを申し込むが、攻撃を一発も当てられず、腕の骨を砕かれ敗北する。

 TSUYOSHIは、喧嘩は売らないが売られた喧嘩は全て買っていた。彼に勝負を挑む人間たちは、星崎のほかにもひっきりなしにやってくるが、全員手も足も出ずに返り討ちにされていく。

 なぜそんなに強いのか、理由はほとんど分からない。彼の格闘術は太極拳のようだがそれもはっきりしない。ただ分かっているのは、フリーターのコンビニ店員で、絵画が好きで自分でも描いている、ということだけ。

 ある日、TSUYOSHIの前に中国武術省からの刺客という中国拳法の達人4名が現れる。規格外の強さは世界からも注目されていたのだ。拳法家たちは彼に勝ち自国へ連れて行こうとしていた。しかも彼を狙っているのは中国だけではないらしい。TSUYOSHIはコンビニの近所でのストリートバトルを経て、やがて国家間の代理戦争のような戦いに巻き込まれていく――。

 TSUYOSHIのでたらめな強さの謎を中心に複数の国家が彼を狙う理由と、その陰謀の全容が徐々に描かれるが、同時並行で描かれる星崎や夢丘たちの思いや生き様にも注目してほしい。

強すぎるゆえに招く、望まない運命との戦い

 書くまでもないが本作の魅力のひとつはやはり格闘シーンだ。画力の高さはもちろん、構成、テンポ、迫力に引き込まれる。大ゴマとド迫力の見開きは、大きなモニターか単行本で読むことをおすすめしたい。

 そして、もうひとつの魅力はTSUYOSHIというキャラクターである。見た目に似合わない最強の力が招く、災いのような運命に翻弄される主人公。そんな彼に感情移入してしまう理由は、人間臭さであろう。

 彼は格闘家であるつもりはない。ただ、喧嘩を売ってくる相手には容赦はしない。力を誇示するためかと思ったがそうではなく、そこには怒りがあるからだ。

 彼はずっと怒っている。

 戦いを挑まれ、自分の大好きな絵を描くこともできなくなるTSUYOSHIは、人生の時間を奪われている。人には誰でも自分の大切なものを守る権利がある。もし奪われたなら取り戻さなければならない。そのためには戦うしかない。そんなTSUYOSHIは私たちと同じだ。戦う理由は世界を救うなどの大げさなものではなく、自分のために怒り、戦うのだ。

 怒ったTSUYOSHIはそんな理不尽と立ち向かい、勝つ。ネタバレではない。タイトルの通り「誰もアイツには勝てない」のだ。そしてさらに言うなら、読んでいてスカッとして読後感は非常に爽やかというカタルシスがあるのも魅力だろう。

 最初にTSUYOSHIのようになりたいと書いたが撤回する。本作を読み返して、最強だったからこんな面倒に巻き込まれて苦労すると分かったからだ。いくら強くても想像以上にしんどそうだ。やはり見守るくらいがちょうどいい。一緒に最強のコンビニ店員の痛快な勝利を見て、胸をアツくさせてほしい。

文=古林恭


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