人気のダイエット法は間違いだらけ? 名門大所属の科学者がダイエット界の常識をぶった斬り!

健康・美容

公開日:2017/6/18

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『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』(ティム・スペクター:著、熊谷玲美:訳/白揚社)

 カロリー制限に糖質制限、グルテンフリー、グリーンスムージー…。世の中にはさまざまなダイエット法が溢れている。雑誌やテレビで「痩せる食べ物」やら「お手軽な運動法」が紹介されるたびに私たちはそれに飛びつき、そして挫折する。

「痩せる」という触れ込みの食事をしているはずなのにまったく痩せない。痩せたと思ったらすぐにリバウンド。もしそんな(ありがちな)経験をしたことがある人は、本書『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』(ティム・スペクター:著、熊谷玲美:訳/白揚社)を読んでみるべきかもしれない。

 著者はイギリスの名門大学・ロンドン大学の遺伝疫学教授。双子研究の世界的な権威であり、最近は腸内細菌に代表されるマイクロバイオーム(生き物の腸や口の中などにある微生物たちのコミュニティ)の研究に力を入れている。いわば遺伝や腸内環境のプロである。

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 自身が体調を崩したことをきっかけに、食生活改善に乗り出した教授はある事実に気づく。それは、世間に出回っているほとんどのダイエット法や食事法には科学的な根拠がないということ。不完全なデータに基づいた主張がダイエットや健康法の世界では公然とまかり通っていたのである。

 かくして科学者は世の「間違った」常識を狩るハンターとなった。たとえばスーパーフードに触れた部分で教授はこう述べている。

スーパーフードというのは面白い考えに思えるかもしれないが、詐欺同然のマーケティングとも言える。新鮮な野菜や果物は、ほぼ何でもスーパーフードだからだ。

 ちなみに、日本でも人気のあのスーパーフードについても辛辣なコメントが。

また、アサイーやゴジベリー(クコの実)が、抗酸化性が期待できるというとして盛んにもてはやされているが、そうした派手な宣伝にもかかわらず、ほかのベリー類との違いはまだ見つかっていない。

 教授のツッコミはまだまだ続く。グルテンフリーダイエットやジュースによるデトックス、低炭水化物ダイエット、低脂質ダイエット、ローフード、パレオダイエット。そしてダイエットの基本中の基本ともいえるカロリー神話まで。多くの人が信奉する「健康的でダイエットにもよい食事」とやらを科学者の視点から斬って斬って斬りまくるのだった(ほぼ唯一の例外は定期的な断食)。

 どうしてこのような展開になってしまったのだろうか。教授によれば、それは20世紀の栄養学が犯した「単純化」というミスにあるらしい。身体に入った食べ物がどのように代謝されるのかについては個人差がある。そのことは同じものを食べても太る人と太らない人がいることでも明らかだ。栄養素の消化吸収に関わる腸内細菌の構成、代謝に関わる遺伝子。こういったものが私たちの体質に個性をもたらしている。カロリーや三大栄養素、ビタミンやミネラルといった画一的な指標で物事を語ろうとするのがそもそも無謀なのだ。

 もし本当に自分にとって効果的な食事法を見つけたいのであれば、自分の腸内環境や持って生まれた遺伝子についてよく考える必要がある。たとえば腸内環境が乱れて代謝機能に異常が出ているようなら、まずは腸内細菌のバランスを本来あるべき状態に戻してやる必要があるといえるだろう。

 現代の食事療法のほとんどは、ある食材を徹底して避けたり、この栄養成分や化学成分が身体によい・悪いと判定したりすることで成り立っている。確かに「加工食品やファストフードを避ける」といった誰にとっても役立つアドバイスはあるし、人体や腸内環境に悪影響を及ぼすことがほとんど確実なトランス脂肪酸のような物質もある。ただ最低限の基本を押さえたら、あとは自分次第といえる。何をどう食べるべきなのか。腸内細菌をはじめとする身体の声を聞きながら、粘り強く自分に問いかけていく必要があるだろう。

文=遠野莉子