「読書って人生の役に立つんですか?」大学生の疑問に賛否両論!……その答えを、ビジネス界の重鎮が語る

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更新日:2017/9/19

『死ぬほど読書』(丹羽宇一郎/幻冬舎)

 婚活をしている友人がいて、その子はネットの意識高い系一般女性の「モテる女は○○する」みたいなブログを参考にしていたので、「ブログもいいけど、本気で婚活してるなら、参考になりそうな本を買ってみたら?」と提案したことがある。

 その子は、本当に不思議そうに「何で?」と聞いてきたので、そのことに、私はとても驚いた記憶がある。――ネットの情報より本の方が信頼性高いし、内容の密度も濃いじゃん!?……というのは、私の中で「当たり前」だったけれど、年に一回本屋に行くか行かないかというその子にとっては、「本の良さ」は、ちゃんと説明しないと分からないのか……! と。

 もちろん、ネットの情報がダメなわけではない。けれどやはり、本を読むことでしか得られない「効用」があるのは確かだ。前置きが長くなったが、『死ぬほど読書』(丹羽宇一郎/幻冬舎)は、「本を読むと、どんないいことがあるの?」という、非本好きの方の素朴な質問を、様々な視点から分かりやすく答えてくれている一冊である。

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 著者はかつて伊藤忠商事の社長であり、現在は日本中国友好協会の会長でビジネス界きっての読書家である丹羽宇一郎氏。「本を読まない日はない」という丹羽氏は、読書は「真に自由な世界へと導いてくれるもの」だと語る。

 本を読むことは「自分で考える力」を培ってくれる。それは自分の軸を持つことであり、この軸がなければ、つねに与えられた物の中で空気を読みながら、人に流されて暮らすしかない。そんな「精神的な不自由」から、読書は人を自由にしてくれるものだという。

 こういった「精神論」としての「答え」がまず大前提にあり、では、どういった本をどのように読めばいいのか。実際に丹羽氏はどんな風に本を読み、どんな効用を感じているのかといった具体的な話が展開されている。

 「教養を磨ける」というのも、読書の効用の一つだ。丹羽氏の考える「教養」は知識の量ではなく、「自分が知らないことを知っている」ことと、「相手の立場に立ってものごとを考えられる」ことの2つが条件だという。

 高学歴の母親が「この子はバカでどうしようもない」と、自分の子供の目の前で言っているのを見たことがあるという丹羽氏は「この母親は無教養です。その言葉が子どもの心にグサリと刺さることを想像できない」と語る。この母親、頭はいいかもしれないが、「教養はない」のだ。

 読書だけではなく、「仕事」と「人」。その3つが相互に繋がって、教養は磨かれていくという。

 「どんな本を読めばいいのか?」と悩んでいる方に、丹羽氏は「いい本を見抜く方法」として「私が本を買う決め手とするのは、目次です」と述べる。タイトルに釣られて買ってしまうと、実際に読んでみて「大したことない」と思うことも多く、また、とにかく売ろうとして「あざとい」ものも増えているかも、とのこと。

目次を見れば、どういう内容なのか、どういう構成で展開しようとしているのかがほぼわかる。作者がどういう意図をもって、何を読者に伝えたいのか、作者の論理的思考がだいたい見える。そうやって大枠を押さえておくと、理解も早く、読むスピードも上がります。

 というわけで、丹羽氏は目次を購入の大きな決め手にしているそうだ。

 また、読書の効能として「感情の不足を補う」というものもあるとか。

本は感情を豊かにするだけでなく、ふだんあまり自分が出さない種類の感情も学ばせてくれる。読書は感情をも磨いてくれるのです。

 「最近笑ってないな」と感じたら、笑える本を。「なんだか泣きたいな」と思っても、泣き切れないなら、号泣できる本を読むとスッキリするかもしれない。

 その他、「ハウツー本は読まない」「ベストセラーは読む価値があるのか」「小説で『考える力』を養う」「仕事の姿勢を読書がただす」などなど、丹羽氏流の「読み方」や、本が私たちの人生にもたらすものを、抜かりなく教えてくれている。

 ……ちなみに、私が「本っていいな」と思うのは、生きてきた時代、立場や地位も異なり、「私の人生にまったく関わりがなかった人」と、本を通してつながれることだ。他人が一生をかけて培ってきた「知識」や「経験」を、活字によって読めることは、とても面白いし、「お得な気分」になるのは私だけだろうか。なんにせよ、もっとたくさんの人に本を読んでほしいし、タイトル通り「死ぬほど」読書をしてほしいと思う。

文=雨野裾