『あぁ、だから一人はいやなんだ。』いとうあさこが語る、等身大40代女子の日常

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更新日:2017/10/17

『あぁ、だから一人はいやなんだ。』(いとうあさこ/幻冬舎)

 女芸人のいとうあさこさんって、なんだか不思議な人じゃないですか? 「親戚のおばちゃん」感もあってか、すごく身近に感じるし、バラエティなんか観ていると常識的な一面もあったり。だけど裸(に近い)姿になって笑いをとったり、一方で下ネタを言ってもやっても、どこか「育ちのよさ」を漂わせていたり……。

 なんというか、テンプレ的にイメージする「女芸人」ほど「ぶっとんでいる」わけでもなく、だからと言って、一般的な企業で働いている女性のような「普通さ」(「堅実さ」と言っていいかも)もない。「常識的なのに非常識」みたいな。二律背反的な。それが、いとうあさこさんの魅力でもあるような。

 前置きが長くなりましたが、私、そんないとうあさこさんがけっこう好きなんです。なので『あぁ、だから一人はいやなんだ。』(いとうあさこ/幻冬舎)という、いとうあさこさんの「一生懸命な毎日」が綴られたエッセイが発売されたので、読んでみました。

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 本書は2014年10月から2016年12月にかけて「幻冬舎plus」に連載していた記事を収録したもの。なので、時事ネタもたくさん。「そう言えば、そんなこともあったなぁ」と読者も当時を思い出しながら、あさこさんの「40代女子」の仕事やプライベートを読むことができます。

 感想から言いますと、特別すっご~くドラマチックなこととか、お笑い界やテレビ業界の赤裸々バクロ話とか、そういうことが書かれているわけじゃないんです。本当に「40代女性の日常」でした。

 海外ロケの際のトランジット(飛行機の乗り換え)が苦手だとか、両親の金婚式にお高めのお洋服を購入したとか、大久保さん(オアシズ)のご家族と旅行に行ったとか、ポケモンGOをやってみたとか、とにかく、ホント、日々の生活が中心に綴られているんです。

 もちろんテレビ番組や舞台といったお仕事のお話も書かれているのですが、それも「熱血仕事論」とか「生死をわけた衝撃事件」とかではなく、あくまであさこさんの日常の中にある仕事の様子を書いているだけ。

 なので、読み始めた最初は「うーん、ちょっと失敗だったかな」と思ったほど(すみません)だったのですが、不思議や不思議。噛み続けていると味わいが深くなるさきイカのように、じわじわハマっていきました。しまいには、ものすごく笑いをとろうとしているわけではないだろう箇所にも笑ってしまうほど。文章で声を出して笑っちゃうって、けっこうすごい。

 おかしかったのは、レモングラスの香りのハンドクリームを塗っていたあさこさんが楽屋にいた時、後から入ってきたマネージャーが「この部屋なんか生姜くさくないですか?」と言ってきたので、自分の手の匂いを嗅いでもらうと「はいっ! これです!」。

 海外製のハンドクリームだから、匂いがちょっとキツイのかもと、試しにマネージャーにつけてもらったら、ちゃんと「いい匂い」がしたとか。「私の体から発するモノがレモングラスを生姜にさせているんだ」と気づく。日常でもちゃんと「オチ」があるなんて。さすがあさこさん。期待を裏切りません。

 あと、地味に面白かったのは、ポケモン世代じゃないあさこさんがポケモンGOに出るモンスターを「首が3つの鳥みたいなヤツと、クワガタとゴキブリ合わせた感じのヤツ」と言っていたこと。……たぶんそれ、ドードリオとカイロスです。

 ものすごく劇的な出来事はないけれど、あさこさんの一生懸命で前向きで、ネガティブなことも全部笑いに変えている「日常」。じわ~っと心に元気が染み込んでくる感じでした。あさこさんのファンでなくとも、最近なんとなくマイナス思考から脱け出せない系オトナ女子は、励まされると思います。

文=雨野裾