幸せは「インスタ映え」じゃない! 世界一幸福な国の“ヒュッゲ”が教えてくれること

暮らし

2017/10/14

『HYGGE 365日 シンプルな幸せの作り方』(マイク・ヴァイキング:著、アーヴィン香苗:訳/三笠書房)

 日本は、物質的にも環境的にも多くの点で恵まれている。しかし何不自由ない国で暮らしながらも、私たち日本人は幸福だろうか。

 おそらく、幸せですか、と聞かれて、ハイと即答できる日本人は少ないだろう。実際、世界幸福度調査において、日本は先進国でありながら51位という低い評価が下されている(2017年)。評価のポイントは社会福祉や寿命、人生選択の自由度など様々だが、いずれにせよ国民が幸福を感じにくい社会であることは間違いない。

 豊かで恵まれた私たちに足りないものとは何だろう。がむしゃらに仕事や家事をこなす日々を繰り返し、自分にとっての“幸せ”がわからなくなってきた…。そんな毎日に少し疲れてしまった人にこそ、ぜひ『HYGGE 365日 シンプルな幸せの作り方』(マイク・ヴァイキング:著、アーヴィン香苗:訳/三笠書房)をおすすめしたい。本書には「世界一幸福な国」といわれ、世界幸福度調査で何度も1位を獲得しているデンマークの「幸せ」の秘密が詰まっている。

(c)pixta

“インスタ映え”ばかりを気にしているのは、ヒュッゲではない

 “ヒュッゲ”。本書のタイトルにもなっている、この聞き慣れないフレーズは、その意味を知らない人がほとんどだろう。ヒュッゲとは、デンマークの人たちにとって、幸福な時間であり、幸福な生き方であり、幸福そのものだ。

 ヒュッゲは豪華なブランド品でもなければ、高級な食品でもない。ヒュッゲに相当するものを並べてみると、以下のようになる。

・大好きな人と一緒にいること
・キャンドルの明かりのそばでココアを飲むこと
・家に帰ってきたときのホッとする感じ
・港を訪れ、夕食をすませるといつもデッキに座って、日が沈む様子を眺め、他の船のマストや装具の間を吹き抜ける風の音に耳をすませながら、食後のアイリッシュコーヒーを楽しむこと

 これが“ヒュッゲ”。どこか懐かしい香り、安らぎを感じる音、気のおけない友人との時間、シンプルでありながら暖かい時間、そういったものは全て「ヒュッゲ」と呼ばれる。

 デンマーク人たちは、ブランケットにくるまりながら、窓際の自分だけの狭くて小さなスペースで、温かい飲み物と共に、お気に入りの本を味わう。そして、このひとときこそ「なんてヒュッゲなの!」と感じる。ヒュッゲは動詞でもあり、形容詞でもあるのだ。ヒュッゲなことをして、ヒュッゲな時間を過ごし、ヒュッゲな光景を目に焼き付ける。それが世界一幸福なデンマーク人の「幸せ」の秘密だった。

 ヒュッゲは無理して作り出すものではなく、何か特別なバカンスやイベントをさすわけでもない。日常に転がっている何でもないことのなかにヒュッゲがある。インスタ映えばかりを気にしてスマホに気をとられ、目の前の自然、風の音や海の匂いの心地よさに気づけないのは、ヒュッゲではないのだ。

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人や社会との繋がり=1200万円の年収増に相当する?

 本書には、シンプルな幸せを作るための“ヒュッゲ”のルールやそれを構成する10か条など、デンマーク人たちの幸せな生き方について記載されているが、内容は全てシンプルなことばかり。今この瞬間に心を傾け、その場の雰囲気を大事にして、リラックスして過ごす。

 何よりヒュッゲの鍵となるのは「人や社会との繋がりを大切にすること」だ。2008年にイギリスで行われた調査では「人との関わりが増えることで高まる生活満足度は、約1200万円の年収増に相当する」との試算も出ている。人や社会との繋がりは、お金と同等か、それ以上に幸福をもたらしてくれる、ということをデンマーク人は自然と知っているのかもしれない。

 美しい装丁とたくさんの写真が盛り込まれた本書は、読むだけでどこかホッとできるし、自分もヒュッゲに触れた気分になる。そして読み終わる頃には、今の自分の生活に何が足りないのかが見えてくるだろう。

 本書は、政治家ベンジャミン・フランクリンのこんな言葉で締めくくられている。

幸福とはめったに起きない大きな幸運が生み出すものではなく、日々の暮らしの中でちょっと助けられたことや、小さな喜びが積み重なって生まれるものだ

 あなたの“ヒュッゲ”はなんだろうか。私たちを本当の幸福に導いてくれるヒュッゲについて、この本を片手に考えてみるのもいいかもしれない。

文=藤野ゆり