元アシスタントが語る、漫画家「冨樫義博」

アニメ・マンガ

2017/10/31

『先生白書』(味野くにお/イースト・プレス)

 漫画週刊誌を定期購読したことのある人ならば、一度ならず「目当ての漫画が載ってなかった」という経験をしているだろう。いわゆる「休載」である。作者が急病だったり、不定期連載であったりと理由はさまざまだが、やはり好きな漫画が読めないということは悲しい話だ。そしてその「休載」という件において誰を真っ先に思い浮かべるかと問われれば、私の場合は「冨樫義博」という漫画家になるだろう。

 冨樫義博氏は『幽☆遊☆白書』や『HUNTER×HUNTER』などを世に送り出した人気漫画家。しかしその一方で「休載の多い漫画家」としても知られる。現在も連載中の『HUNTER×HUNTER』は32巻から33巻が出るまでに3年以上を要し、連載も2017年10月現在、『週刊少年ジャンプ』2017年40号を最後に途絶えている。このような理由から、巷ではさまざまな憶測が飛び交うのだが、果たして冨樫義博氏とはどういう人物なのか。彼を最も身近な場所から見続けた「アシスタント」による『先生白書』(味野くにお/イースト・プレス)に、その一端が描かれている。

 著者の味野くにお氏は『幽☆遊☆白書』から『レベルE』までを担当していたそうで、休載が常態となる『HUNTER×HUNTER』の時期ではない。しかし本書を読んでいると、現在の状況へ至るきっかけのようなものは垣間見える。例えば休載の理由とされる「腰痛」だが、これは『幽☆遊☆白書』の頃から発症していたらしく、症状が出たとき冨樫氏は寝そべった状態で原稿を描いていたという。

 そのほかのエピソードで注目したのは、やはり「ゲーム」の部分。著者がアシスタントに入った当初、冨樫氏の仕事場は自宅兼用だったが、『幽☆遊☆白書』連載中に専用の仕事場へ引っ越すことに。スペースに余裕ができたことでさまざまな物が置かれるようになり、テレビも設置される。後にこのテレビで、ゲームをプレイするようになるのだ。本書にはゲームにまつわるさまざまなエピソードが出てくるが、やはり相当にやり込むタイプのようで、著者の置いていったゲームがいつの間にか最終ステージまでクリアされていたり、とあるアクションゲームを短時間でクリアしていたりする様子などが描かれていた。もちろん仕事の息抜きなのだが、プレイ中に担当編集がやってきて睨まれたこともあったようである。

 本書では冨樫氏の苦悩についても触れられている。やはり週刊連載は相当な激務であり、氏の作画がかなり荒れてきた時期もあったという。それでもアシスタントには優しい先生だったようで、八つ当たりしたり愚痴ったりすることは一切なかったとか。しかし冨樫氏の肉体は限界に達し、氏の意向により『幽☆遊☆白書』は連載終了となるのである。ちなみに現在でこそ休載が常態化している氏であるが、『幽☆遊☆白書』は著者がアシスタントに入ってから休載したのは1回のみだったという。

 こういった事実から考えると、冨樫氏は『幽☆遊☆白書』の時期に相当な無理をしたことが窺える。そして「漫画連載とうまく付き合う方法」を考えた結果、現在の形態になったのだろうと思われる。最近では休載を挟んで連載される作品も多く、読者の「掲載されるのが当たり前」という感覚は以前ほどではない。不満を持つ向きもあるだろうが、作家が無理をして体を壊したり、最悪亡くなったりでもしたら、続きすら読めなくなるのだ。「好きな作品が読める幸せ」は、描く作家が健在であってこそ。我々「読む側」も、連載漫画との付き合いかたを模索する時期なのかもしれない。

文=木谷誠