「その会議、本当に必要?」という思考習慣――ドイツ人は「ムダな報・連・相」を嫌う

ビジネス

2017/11/15

『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ』(隅田貫/KADOKAWA)

「仕事の生産性」や「長時間労働」が話題になっている昨今ですが、会社の「ムダな会議」に頭を悩ませている人も多いのでは? そこで、「日本人の1.5倍の生産性」があるドイツで通算20年のビジネス経験を持つ隅田貫氏(著書に『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ』がある)に、「ドイツ人の会議」について紹介してもらいます。

 おそらく、皆さんの多くは、ムダな会議が生産性を上げられない原因になっていることはわかっているはずです。
 ムダな会議をなくせないのは、一番「仕事をしている気」になれるからからもしれません。会議室に集まってみんなで話し合っているだけで、何も結論を出さなくても仕事をしている気にはなれるのです。

■「決められない会議」はしない

 私が勤務していたドイツのメッツラー社では、会議はかなり限定的でした。日本の会社に勤務していた経験からすると、驚くほどでした。
「ちょっと、5分だけいい?」のように、少人数が集まって話すミーティングは、あちこちでしょっちゅう行っています。しかし、改まった会議となると数はぐんと減ります。

 会議の内容も、日本とは全然違います。
 面白いのは、会議の目的がはっきりしているところです。新しいプロジェクトなど「何かを決めなくてはならない会議」と、「情報交換・情報共有のための会議」は別になっています。
 多いのは、情報交換・情報共有のための会議のほうです。この会議は週に2回ぐらい開かれていますが、参加する・しないは自由です。

 まずアナリストが、「マーケットではこんなことが起きています」と説明をします。集まった人は、質問があれば質問をするし、意見のある人は意見を言いますが、そこで議論をするわけではありません。誰かが仕切るわけでもなく、「俺はこう思う」「俺はこんなことを聞いた」と勝手にしゃべって、一通りみんながしゃべり終わって静かになるとミーティングは終わりです。日本の会議に慣れている者からすると、この会議はとても新鮮に感じました。
 参加した人は短時間で必要な情報を交換したり共有したりできるので、ひじょうに効率がいいのです。日本の会社でも、取り入れてみてもいいのではないかと思います。

「何かを決める会議」では、日本と同じく、議題に対して意見を出し合います。
 ただし、重役だけが話して、若手社員は黙って聞いているだけ、ということはあり得ません。会議に出席したからには、全員発言するのが鉄則。何も発言しなかったら、会議の時間をムダに過ごしていることになります。
 このような会議では、プロトコル(書記)がいて、その日のうちに議事録を社内の共有フォルダにアップします。
 日本と大きく違うのは、別の仕事が入って会議に出られなかったとしても、とがめられないという点です。議事録を読めば話し合いの内容も確認できるので、問題ないのです。

 日本だと、大勢で集まって結論を出そうと会議を開いても、結論を出せずに長時間かかるのはよくある話です。
 一方ドイツでは、私の経験からは、30分ぐらいの短いミーティングもあれば、しっかり議論する会議でも2時間を超えることはあまりありませんでした。つまり、1時間ぐらいでたいていの問題は結論を出せるということになるでしょう。
 また、会議の始まりと終わりの時間は明確に決めておくのが普通です。内容によって、どうしても長くなりそうだったら別の機会に話し合うなど、その辺りは柔軟に対応していました。

 いずれにしても、会議に関しては、日本と違ってひじょうにミニマイズされて効率的にやっていましたから、大いに参考にできるところの一つではないかと思います。

■ムダな「報・連・相」をしない

 会議が限定的だとすると、ドイツではどのようにしてコミュニケーションを補うのでしょうか。私がドイツで見かけた独特のコミュニケーション法を1つ紹介しましょう。

 私が働いていたメッツラー社の上司は、出社したらまっすぐ自分の席に向かうのではなく、社内を10分くらいブラブラと歩き回ってから席に着くのが日課でした。部下のデスクの間を大体3パターンくらいのルートで歩くようにしていたようです。

 私の上司だけでなく、ほかの役員もそして当主も、同じように席に着く前に社内をブラブラして「おはよう」「調子はどう?」と社員たちに声をかけたり、「スミタ、今日はどんなお客さんが来るの?」「〇〇さんとはいつ会うの?」などと質問をするのが、恒例の朝の風景でした。
 これは、部下の仕事を細かく管理しているというわけではありません。部下の仕事の進捗状況をほんの数分で把握できるからやっていたのでしょう。わざわざ「報・連・相の場」を設けなくてもいいので、合理的な方法です。

 進行中の仕事についても細部を事細かに聞かれたり、説明したりすることはありませんでした。せいぜい二言、三言話す程度です。上司としては、必要な部分だけのフィードバックをもらっておけば、あとは部下に任せても問題ないし、部下のほうも報告する必要がないことは伝えません。ムダなコミュニケーションをとらずに済むのです。それでも社内の風通しはよく、問題はありませんでした。

 退社するときも、上司は朝と同じように社内をブラブラ歩きます。私の上司は、日々超多忙なスケジュールをこなしていましたが、部下との短いコミュニケーションを欠かすことはありませんでした。それも仕事の一部と考えていたのでしょう。
 この方法なら、全員を集めて会議や朝礼をする必要はありませんし、お互いに短時間で自分に必要な情報を集めることができます。ミニマムでひじょうに効率的なコミュニケーションです。
 もちろん、上司に報告するための資料をつくる必要もありませんから、部下も時間と手間を節約できます。

 日本流のコミュニケーションがすべてダメで、ドイツが正しいと言うつもりはありませんが、仕事の生産性を上げるという目的のために、取り入れられることはどんどん取り入れたほうがいいと思います。
 日本も、外国人の社員と働く場が増えているので、今後ますます以心伝心ではなく、誰にでもわかるような伝え方が不可欠になるでしょう。

※11/24に隅田貫さんに「ドイツ流の働き方・休み方」についてうかがうイベントがあります。
ご興味のある方はこちら:http://hamacho.jp/hamahouse/2017/11/04/1124kinentaidan/