木村拓哉&長澤まさみ初共演映画『マスカレード・ホテル』に期待!「刑事」と「ホテルウーマン」の名コンビが事件解決に挑むお仕事潜入ミステリー

文芸・カルチャー

2017/11/26

『マスカレード・ホテル』(集英社)

 「プロフェッショナル」である人間は、美しい。ホテルのフロントクラークとして最高の“おもてなし”を提供するプロと、刑事として犯人を徹底的に追い詰め、捕まえるプロ。全く異なる分野の「プロフェッショナル」の心の交流を描いた東野圭吾氏の「マスカレード」シリーズは、仕事をするすべての人に読んでほしいミステリーシリーズだ。仕事に対して誠心誠意を尽くす男女をこれほどまでにカッコ良く描き出した小説が他にあるだろうか。シリーズ累計265万部突破。特にシリーズ第一弾『マスカレード・ホテル』(集英社)は、実写映画化をのぞむ声が強く、2019年に木村拓哉長澤まさみ初共演により映画化されることになった。

 物語の中心となるのは、都内で起きた不可解な3件の連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明だが、現場に残された暗号から、次の犯行場所は一流ホテル・コルテシア東京になることが発覚した。第4の事件を未然に防ぎ、犯人を逮捕するため、警察はフロントスタッフやベルボーイに扮して潜入捜査をすることになる。捜査一課の刑事・新田浩介は、帰国子女であることからフロントスタッフに扮する。そして、コルテシア東京の優秀なフロントクラーク・山岸尚美がその教育兼補佐役となるのだった。

 そもそも、「マスカレード」とは英語で「仮装」や「仮面舞踏会」を意味する言葉だ。刑事である新田の仕事は潜入捜査をしながら、何食わぬ顔でホテルに現れる犯人の仮面をひっ剥がすこと。しかし、ホテルマンとしての仕事はそれとは正反対だ。

「ホテルマンはお客様の素顔を想像しつつも、その仮面を尊重しなければなりません。決して、剥がそうと思ってはなりません。ある意味お客様は、仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのですから」

 尚美のホテルウーマンとしての仕事ぶりには目をみはる。ホテルでは客がルールであり、そのルールに従うのがスタッフの役目。感謝の心をもって客と接するホテルウーマンとしての心得を体現する尚美。客を第一に思う尚美と、すべての人に疑いの眼差しを向ける新田が対立するのは当然のことだ。

「お客様は神様ばかりではありません。悪魔も混じっています。それを見極めるのも私たちの仕事なんです。」

 当初は対立していた新田と尚美だったが、ホテルスタッフとしての流儀、刑事としての流儀を互いに知るにつれて、信頼を寄せていく。分野は違うが、「プロフェッショナル」であることを誇る彼らは互いに共感し合い、事件解決のため、奮闘する。刑事としての成長、ホテルウーマンとしての成長。互いが互いを高め合い、真相に近づいていくさまはなんだか微笑ましい。

「怪しい人物」を疑えども、ただの訳あり客だったということも多々。ホテルを訪れる客はこんなにも多彩で、ホテルスタッフはこんなにも客のことを思っているのか。そのそれぞれのエピソードも面白く、ホテルウーマンの仕事ぶりには感動させられる。

 東野圭吾ミステリーならではの疾走感で進んでいくこの物語はクライマックスまで目が離せない。シリーズ最新作『マスカレード・ナイト』も発売されたから、この本と合わせて読んでほしい。

 頭の切れる刑事と敏腕ホテルウーマンのコンビが駆け抜ける爽快感たっぷりのこのミステリーシリーズは今後ますます話題を呼びそうだ。プロとしての仕事を真摯にこなす彼らの姿に、仕事に悩みを抱える人々もなんだか勇気づけられる気がする。

文=アサトーミナミ

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