「すぐやる」タイプは、意外に仕事が遅い!?――仕事が速い人と遅い人の差

ビジネス

2017/12/1


    ■トラブルに慌てる人と的確に行動できる人の違いとは?

     私はIBMに新卒で入社以来15年間、主にシステム開発のプロジェクトにかかわってきました。現在はプロジェクトマネジャーとして500人の部下を束ねています。

     大きなプロジェクトを動かしていると、トラブルは日常茶飯事。

    「木部さん、問題が起こりました。なんとか期限までに間に合わせたいのですが、どうしたらいいでしょう?」

     このように、メンバーが慌てた様子で私のところに相談にやってくることがよくあります。

     ビジネスパーソンの資質が問われるのは、こうしたトラブルのときです。

     トラブルが発生したときパニックになってしまう人と、落ち着いて対応してトラブルを解決に導ける人とでは、いったい何が違うのでしょう?

     生まれ持った頭の良さ?
     それとも、経験の豊富さ?

     もちろん、そういったことが違いになることもあります。しかし一番大切なのは、「複雑な状況を、シンプルにして考えられるか」です。

    シンプルに整理すると、やるべき作業の総量が激減する

     本当に頭のいい人というのは、複雑な問題を複雑なまま解くことができる人ではありません。複雑な問題を、誰でも解けるくらいの簡単なレベルまで分割できる人です。絡み合った物事をシンプルにして問題の本質を見抜くことができれば、おのずとその解決策は見えてきます。

     たとえば、突発的なシステム障害が起こったとします。チームの様子を観察していると、慌ててしまう人と的確に行動できる人の差は明らかです。

     混乱した状況について「複雑なまま考える」人は、目の前のトラブルに慌て、「あれをしなきゃ、これをしなきゃ」と思いつきで動きます。その結果、対応に余計な時間がかかってしまいます。

     一方、「状況をシンプルにして考える」ことができる人は思いつきでは動きません。そういう人は、まず状況を整理することから始めます。

     たとえば、図のようにホワイトボードに全体像、原因、やること、担当者などを冷静に書き出し、状況を整理するのです。

     ちょっとしたことですが、慌てずにこういう行動ができる人は、よりスムーズに、しかも最短の時間でトラブルを解決することができます。

     なぜなら、動き出す前に状況をシンプルに整理できているため、やるべき作業の総量が激減するからです。

    ■「すぐにやる」と「速くやる」は違う!

     問題を複雑なまま捉えている人は、次のように行動してしまいがちです。

    ・思いつきや衝動で動く
    ・目の前のトラブルだけを見て動き出す
    ・とりあえず、やってみる

     こうした行動は、トラブルが起きていないとき、あるいはあまり難易度の高くない単純な仕事であれば成果に結びつくこともあります。

     たとえば、「目標:電話で1件アポイントを取る」という場合。手当たり次第に電話をかけ始めても、1件であればすぐに成果が出るかもしれません。

     しかし、「目標:電話で100件アポイントを取る」という場合はどうでしょう。

     これだと仕事の難易度が高いため、何も考えず、手当たり次第に電話をするだけではなかなか結果につながらないでしょう。

     リストからどういう相手をピックアップするか。どういうひと言から話を切り出すか。相手からNOと言われたときには、どのように話を繋ぐか。こうしたことを考えてから始めないと、「100件アポイントを取る」という成果を出すのは難しいはずです。

     

     若手にこのような話をすると「えっ、即行動の何が悪いんですか?」と言われることがあります。こうした人は、「すぐにやる」と「速くやる」は違うということがわかっていません。

     当然ですが、仕事を先延ばしにしたりぐずぐず遅らせたりすることは絶対に良くありません。「すぐにやる」ことは大事です。

     しかし、作戦も何も考えずにいきなり手を動かすと、結果的に「速くやる」ことができなくなるのです。何も考えずに電話で100件アポイントを取り始めたら、考えてからやり始めるときより何倍も時間がかかることになるでしょう。

     着手するタイミングが早いことと、作業が速いことは、別のことです。
     まず立ち止まって考えて、状況や問題を整理する。それから、始める。
     これが作業の速い、頭のいい人の仕事のやり方です。

    木部 智之(きべ ともゆき)

    日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー。
    横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBM にシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネジャーを経験。その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。英語はもちろん、日本語も含めていくつもの言語を巧みに操り、かつ仕事も優秀な彼らに衝 撃を受け、自分はグローバルに通用する人材なのかと自問自答した。 それ以来、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求してきた。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。日本と大連で500人以上のチームをリードしてきた。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。著書に『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』 (KADOKAWA)がある。