カップを満たせば、魔法は起こる!スターバックスの「人」をつくりあげ、世界一の企業へと成長させた元社長が綴るビジネスファンタジー

ビジネス

2018/1/5

『カップは満たされてる?』(ハワード・ビーハー:著、川添節子:訳/東洋館出版社)

 1971年にシアトルで誕生し、今や世界中で展開されているスターバックス。日本でも身近な存在となっている。世界規模の企業に成長させた過程には、ビジネスの中心に「人」を据える方針を浸透させ、スターバックスの組織をつくりあげた人物がいた。

 それが、『カップは満たされてる?』(ハワード・ビーハー:著、川添節子:訳/東洋館出版社)の著者、ハワード・ビーハー氏だ。スターバックスの成長期に20年もの長きに渡って在籍し、取締役など要職を歴任。スターバックスと言えば会長のハワード・シュルツ氏が有名だが、スターバックスの成功は「人」を大切にしたビーハー氏抜きには語れないという。

 本書は「ビジネスファンタジー」という聞きなれない言葉で紹介されているが、その内容は「会社を舞台にした冒険物語」。つまり、著者がスターバックスで行ってきた成功実話を挙げている直接的なビジネス書ではなく、フィクションである。ただし、巻頭の著者からのメッセージには、こう書かれている。

 このなかで起こることはつくりごとだが、伝えたいことは本物だ。わたしが身をもって体験したことだから。

 物語は、主人公のステッドファストが、歴史あるガラス瓶メーカー、ヴェリティ・グラスワークス社のCEOとして初出社するところから始まる。街でもひときわ目立つ、ヴェリティ社のタワーに意気揚々と出社した初日、彼を待っていたのは、建物の前で動揺している従業員たち。そして、そこに流れたのは「緊急事態発生!」のアナウンスだった。

 リーダーとして真相を確かめるべく、ステッドファストは立ち入りが禁止された建物内にひとりで向かう。真相を究明し、会社の危機を救おうと決意した彼の前には次々と奇想天外な難問が立ちはだかるが、進む先々に現れる個性豊かなキャラクターたちとともに突破していく。それは、「究極の宝物」を探す旅だった。

 物語の鍵となるのは「魔法のカップ」と、ステッドファストが決断する度にカップに刻まれる「責任」や「寛容」、「絆」といった11の言葉。そして、その行動が正しいか正しくないかで増減する黄金色の液体。それぞれの場面でどう考え、どう行動するか。ひとりで立ち向かうのではなく、一緒に困難を乗り越えていくチームをどのようにつくり、どう信頼関係を築いて、ともに成長していくか。物語を通して、ビーハー氏の経験に基づいた、正しい価値観、美徳が伝えられている。ステッドファストの気持ち、登場人物たちのセリフに、著者の深いメッセージが込められているのだ。

 著者はあとがきにこう綴っている。

 大切なのは、正しい価値観のもとに仕事をしてカップを満たしてきたか。それとも、正しいとはいえない行いでカップの中身を減らしてきたか、ということだ。

 ファンタジーというだけあって、まるで映画を観ているような感覚で、最初から最後まで飽きずに読み進められる1冊。あなたのカップは今、満たされているだろうか。本書を読んで、改めて、自分の価値観を見つめ直してみては?

文=三井結木