縁切りは心のデトックス!? 今年こそ、不要な縁を切ってスタートしよう!

暮らし

2018/1/5

『パラパラめくるだけでズバッと縁切りできる本』(シャラン/ヴォイス)

 人との縁は大切にしなければならない。しかし私は以前に、20年来の友人との縁を切ったことがある。彼は行動力があり、一緒に数々のイベントを手がけ遊びに出かけるのも楽しかった一方で、予定通りにいかずアクシデントがあると彼は不機嫌になって、フォローした内容が彼の意に添わなければ激昂することが多かった。やがて私は彼と行動をともにしていると猛烈な眠気に襲われ、彼との約束を書き留めたメモの内容を忘れがちになった。彼からは脳の検査を受けたほうが良いのではないかと言われる始末で、だがそれは嫌味などではなく本気で心配してくれてのこと。そして病院で検査を受けた私の身体に異常は見つからなかったもののストレス性の記憶障害、解離性健忘の疑いを医師から指摘された。人間は、事件や事故などで強いストレスを受けると脳が心を守るためにブレーカーを落とす機能があるらしい。

 そんな訳で、この『パラパラめくるだけでズバッと縁切りできる本』(シャラン/ヴォイス)の内容はスッと腑に落ちた。著者は「だれよりも大切な自分を差し置いてまで、他のことを第一に考える必要なんてないんです」と述べており、この言葉だけで救われる人もいるのではなかろうか。特に学校や職場といった特定のコミュニティーのみならず、家族という毎日の生活にかかわる空間にあっては、「よその家の匂いはわかるけど、自分の家の匂いはわからない」というように、だんだんと感覚が麻痺してしまい「うっかり逃げそびれてしまわないように注意が必要なんです」と警告している。

 本書では縁切りを人間関係だけでなく、仕事やお金、常識に固定観念、自身の感情なども「しがらみ」と考え、それらの縁切りを「心のデトックス」として勧めている。例えばお金を得るために仕事をしていたとして、「健康と引き換えにお金を手に入れて、ためたお金で病気を治療する」なんてことになったら不毛でしかない。だからといって、お金よりも大切な物があると考え「お金を受け取るべきところでも受け取らない」というのもまた、「お金に対して冷静ではいられない」という点においては共通しており、著者はお金に対する感情を見直す「円切り」の必要性を説いている。それこそブラック企業で過剰労働やパワハラの果てに自殺してしまうケースでは、転職によるリスクなどを考えて我慢しているうちに思考力が低下し退職する選択が抜け落ちてしまうそうだから、仕事を辞めるか迷ったときには、その迷いと縁切りしたほうが良いだろう。

 とはいうものの、この自分の感情、すなわち「自分自身との縁切り」こそが一番難しい。他のケースで一気に縁切りが難しい場合には、少し距離をとったり別の場所に移動したりすることで一歩を踏み出してみるようアドバイスしている本書でも、「残念ながら自分自身の場合は、その方法は使えない」としている。ではどうするかといえば、縁を結び直すと考える。ちょっとしたことでは、「手にしたことのない本を読んでみたり」「いつものじゃないメニューを頼んでみたり」して、リスクの少ない挑戦でまず変化を楽しんでみる。あるいは、トラブルに見舞われて怒りや悲しみなどの強い感情が生まれたら、感情を保つのではなく縁切りして自分の本音を考えたうえで「感情を再度選び直す」というようにだ。

 つまり縁を切るというのは良い縁を得るための前段階であり、「縁は今以上に良好な関係で、より強固に結び直されるんです」というのが本書の要なのだ。先の友人と縁を切ってから3年ほど経った頃、あの東日本大震災が起こり、彼から安否を確認するメールが届いたのだが、彼はそういう人であった。新年に交わす年賀状やメールなどは、疎遠になっていた人と連絡を取るチャンスでもあろう。いずれまた、彼と縁を結び直す日があるかもしれない。

文=清水銀嶺