縁切りは心のデトックス!? 今年こそ、不要な縁を切ってスタートしよう!
更新日:2018/12/7
人との縁は大切にしなければならない。しかし私は以前に、20年来の友人との縁を切ったことがある。彼は行動力があり、一緒に数々のイベントを手がけ遊びに出かけるのも楽しかった一方で、予定通りにいかずアクシデントがあると彼は不機嫌になって、フォローした内容が彼の意に添わなければ激昂することが多かった。やがて私は彼と行動をともにしていると猛烈な眠気に襲われ、彼との約束を書き留めたメモの内容を忘れがちになった。彼からは脳の検査を受けたほうが良いのではないかと言われる始末で、だがそれは嫌味などではなく本気で心配してくれてのこと。そして病院で検査を受けた私の身体に異常は見つからなかったもののストレス性の記憶障害、解離性健忘の疑いを医師から指摘された。人間は、事件や事故などで強いストレスを受けると脳が心を守るためにブレーカーを落とす機能があるらしい。
そんな訳で、この『パラパラめくるだけでズバッと縁切りできる本』(シャラン/ヴォイス)の内容はスッと腑に落ちた。著者は「だれよりも大切な自分を差し置いてまで、他のことを第一に考える必要なんてないんです」と述べており、この言葉だけで救われる人もいるのではなかろうか。特に学校や職場といった特定のコミュニティーのみならず、家族という毎日の生活にかかわる空間にあっては、「よその家の匂いはわかるけど、自分の家の匂いはわからない」というように、だんだんと感覚が麻痺してしまい「うっかり逃げそびれてしまわないように注意が必要なんです」と警告している。
本書では縁切りを人間関係だけでなく、仕事やお金、常識に固定観念、自身の感情なども「しがらみ」と考え、それらの縁切りを「心のデトックス」として勧めている。例えばお金を得るために仕事をしていたとして、「健康と引き換えにお金を手に入れて、ためたお金で病気を治療する」なんてことになったら不毛でしかない。だからといって、お金よりも大切な物があると考え「お金を受け取るべきところでも受け取らない」というのもまた、「お金に対して冷静ではいられない」という点においては共通しており、著者はお金に対する感情を見直す「円切り」の必要性を説いている。それこそブラック企業で過剰労働やパワハラの果てに自殺してしまうケースでは、転職によるリスクなどを考えて我慢しているうちに思考力が低下し退職する選択が抜け落ちてしまうそうだから、仕事を辞めるか迷ったときには、その迷いと縁切りしたほうが良いだろう。
とはいうものの、この自分の感情、すなわち「自分自身との縁切り」こそが一番難しい。他のケースで一気に縁切りが難しい場合には、少し距離をとったり別の場所に移動したりすることで一歩を踏み出してみるようアドバイスしている本書でも、「残念ながら自分自身の場合は、その方法は使えない」としている。ではどうするかといえば、縁を結び直すと考える。ちょっとしたことでは、「手にしたことのない本を読んでみたり」「いつものじゃないメニューを頼んでみたり」して、リスクの少ない挑戦でまず変化を楽しんでみる。あるいは、トラブルに見舞われて怒りや悲しみなどの強い感情が生まれたら、感情を保つのではなく縁切りして自分の本音を考えたうえで「感情を再度選び直す」というようにだ。
つまり縁を切るというのは良い縁を得るための前段階であり、「縁は今以上に良好な関係で、より強固に結び直されるんです」というのが本書の要なのだ。先の友人と縁を切ってから3年ほど経った頃、あの東日本大震災が起こり、彼から安否を確認するメールが届いたのだが、彼はそういう人であった。新年に交わす年賀状やメールなどは、疎遠になっていた人と連絡を取るチャンスでもあろう。いずれまた、彼と縁を結び直す日があるかもしれない。
文=清水銀嶺
この記事で紹介した書籍ほか

パラパラめくるだけでズバッと縁切りできる本
- 著:
- シャラン
- 出版社:
- ヴォイス
- 発売日:
- 2017/12/13
- ISBN:
- 9784899764724
レビューカテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2021年2月号 美少女戦士セーラームーン/島本理生特集
特集1 わたしたちのセーラームーンが劇場に帰ってきた! 「美少女戦士セーラームーン」/特集2 作家生活20周年 島本理生の祈り 他...
2021年1月6日発売 定価 700円
出版社・ストアのオススメ
双葉社
人生は“太巻き”みたい!?『生徒諸君!』と並ぶヒット作が約30年ぶりに帰ってきた!『Let’s豪徳寺! SECOND』 庄司陽子先生インタビュー
文藝春秋
のんが挿画を担当! 不思議な能力を持った少女が、アイドルを目指す。しかし、待ち受けていたのは凄惨なラストだった
白泉社
特装版はニャンコ先生のかわいいフィギュア付き!『夏目友人帳』26巻に「最高に癒されます」と反響続出
主婦の友社
ペットが生きているうちにこそ読みたい! 看取り、葬儀、供養…飼い主だからこそしてあげられる「ペットの終活」
ポプラ社
予想もつかない衝撃のラストが待ち受ける! 大人気「冬」シリーズの第3弾『その冬、君を許すために』に期待の声
楽天Kobo
楽天Kobo年間総合ランキングが発表! 1位は社会現象にもなっているアノ作品
ブックラブ
「ようやく本が出たんだなという実感を持つことができました」森見登美彦氏が登場! ブックラブ読書会レポート
新着記事
-
連載
「まるで忍者だよ…」いつも音もなく近づいてくる猫のキュルガ。もしかしてアノ技使ってる?/夜は猫といっしょ③
-
ニュース
「次の出血までに己を鍛えなおしておけ!」一見怖そうに見える“巨核球”だがじつは…/アニメ「はたらく細胞!!」第1話
-
レビュー
指原莉乃、バイキング小峠、さまぁ~ず大竹…彼らの言葉が心に刺さる理由を作詞家・いしわたり淳治が解剖!
-
レビュー
異世界転生モノの新ジャンルに「古代エジプト」はいかが!? 神秘と謎に満ちた古代エジプトの秘密を徹底解剖する1冊
-
ニュース
「奈良親子の“ダブルめんどくせー”は永久保存版」アニメ「BORUTO」第181話、うずまき親子の“忍組手”がおこなわれている一方で…