夢眠ねむが「本の世界」を探検する。~この一冊があなたの手に届くまで~

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公開日:2018/1/7

『本の本―夢眠書店、はじめます―』(夢眠ねむ/新潮社)

 唐突ですが、皆様は「本」が好きですか? 小説が好き、雑誌が好き、学術書が好き、ではなくて、「本」です。上のタイトルに引っ張られてこの記事を読んでくださっている方の多くは、本が好きな方か、夢眠ねむさんのファンの方か、もしくはその両方の方なのではないでしょうか。でんぱ組.incのねむきゅんこと夢眠ねむさんは、言わずと知れた“本大好きアイドル”です。その愛は、いつか「夢眠書店」を開店させたいと語るほど。そんな“本好きアイドル”が本にまつわる様々な世界を探検する対談本『本の本―夢眠書店、はじめます―』(夢眠ねむ/新潮社)を本日はご紹介したいと思います。

■出版業界のプロフェッショナルを夢眠ねむが取材

 夢眠さんが訪問するのは、大型書店の店長、POP王、本の流通センター、小説の編集者、校閲ガールなどなど、全15の本を支える職業のプロたち。目次のページに並ぶ各章のタイトルを眺めているだけで、本にまつわる職業の幅広さが再認識できます。私が今いる8畳の部屋には何百という本が、一部は棚に整然と並べられ、また一部は床から天井に向かって積み上げられ、という具合でぎっしりと詰め込まれているのですが、その1冊1冊が私の手元に辿り着くまでの途方もなく長い旅路が本書では明かされています。

■編集者は「担任の先生」のような存在

 一般的には「先生、原稿どうなってるんですか!?」と作家さんを追いかけているイメージが強い編集者さん。実際はどんなことをしているのでしょうか。芥川賞を受賞した大ベストセラー、又吉直樹さんの『火花』の編集を担当した文藝春秋の浅井茉莉子さんから、夢眠さんが編集者のリアルを引き出していきます。

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 小説の編集者は、ひとりあたり40人ほどの作家さんを担当しているそう。40人の中には当然、執筆に対する姿勢や性格にもグラデーションがあり、編集者はその各々と食事をしたり、電話やメールで相談を受けたり、取材に同行したり。まさに、担任の先生ですね。彼女が担当した又吉さんも最初はなかなか書き出せなかったそうで、1 冊の本を生み出すという行為は「作家と編集者の二人三脚」だということを実感させられます。私自身も職業柄、編集者さんという職業の偉大さを身に染みて感じた経緯があるので、このお話はかなり共感できました。

■ついたくさん買っちゃう本屋さんの秘密

「作家と編集者」という本の源のような部分を上述しましたが、こちらは私たち読者の手と本の世界とを結ぶ末端のお仕事、即ち本屋さんのご紹介です。有隣堂ヨドバシAKIBA店店長の宮尾美貴子さんは、「自分の売りたいと思った本にPOPをつけたり、ディスプレイしてみたりして、それが売れるときがやはり一番楽しい」と語ります。本と読者との懸け橋となる本屋さんのお仕事は、本に関わる、本を愛するすべての人々の人生に対する愛と情熱にあふれているものだと実感できる対談です。

 本書の読後は、是非本屋さんに立ち寄りたくなるはずです。そして、壁一面にびっしりと並ぶ本の背後に、本に関わる大勢の人々の情熱が見えてくることでしょう。

文=K(稲)