お金とテクノロジーはどうつながるか? お金から解放される生き方をするための「お金2.0」の世界

暮らし

2018/1/10

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽/幻冬舎)

 80年代以降に生まれた世代とそれ以前の世代とでは、お金に対する考え方が違うといわれています。70年代の高度成長期までは、物質的に豊かになるという分かりやすい目標がありました。しかし、それ以降に生まれた世代にとって衣食住などの基本的なものはすでに当たり前のようにそこにありました。中には厳しい家庭環境で育ったという人もいますが、世の中全体の流れとしてはそのように括ることができるでしょう。

『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(佐藤航陽/幻冬舎)の著者は86年生まれ。著者の実家の経済環境は決して楽ではなかったため、お金に対しては「お金持ちの子どもはいろいろな選択肢があるが、貧乏な家の子どもは選択肢が少ない」というイメージを小さな頃から持っていたといいます。しかし、大学在学中に会社を設立しさまざまな経済活動を行ううちに、お金はパソコンや紙やペンと同じように単なる「道具でしかない」ことに気がつくようになります。お金から自由になるためには、「お金と感情を切り離す必要がある」ということを実感するまでに至ります。

 本書では、お金とは何かという抽象的な話や、AIやクラウドコンピューティング、フィンテックなどの現代を象徴する専門用語の説明と、そうしたテクノロジーが変えるお金のあり方や、価値の変化について述べられています。金融用語の解説集でもなく自己啓発本でもありません。

 テクノロジーとお金がどう結びつくのか? それは「テクノロジーによって経済は読み解く対象から作る対象」へと変わったことと関係があります。それらで何ができるかだけでなく、どんな課題を解決するために作られたものなのか、原理を理解することの大切さを説いているのです。経済とは欲望のネットワークであるとする著者は次のように述べています。

社会の多くの非効率や不幸を最少にするには物事をうまく回すための普遍的な構造を理解し、何かを新しく創る人たちが使いこなせるようになることが近道です。

 現代は、個人も信用や価値を積み上げることで経済を創ることができる時代となりました。SNSなどを通じた他者からの注目が人脈やお金、情報などの別の価値に転換できるようになったからです。既存の国家の枠組みでは試せなかった新しい経済のあり方を模索することが可能となったといえるでしょう。しかし個人が企業と比べて足りないもの、それは資産です。テクノロジーの発達で「個人が収入を得る手段は増えたが、個人が資産を得る手段がない限り、個人は経済の主役になることはできない」と考えた著者は、「タイムバンク」という時間を資産に変える仕組みを作りました。

 タイムバイクは“Time is money”という金言を言葉通り実現するシステムだと思います。タイムバンクでは残りの時間が少ない人に、先にお金を投じるインセンティブを与えるので、貯め込みがなくなります。「若者は時間はあるが、お金はない。老人はお金はあるが時間はない」という社会の問題をうまく利用した仕組みです。個人が資産を作るためには、公益性や持続可能性をテーマにして、人の興味や関心を引く「価値」を生み出すことは欠かせません。こうして経済と政治の境界線はあいまいになっていくのです。

 どんどん出てくる新しいテクノロジーに対して、アレルギー反応を覚える人もいるかもしれません。しかし、新しい経済のルールを理解し運用するためには常にテクノロジーと共存し、使いこなす意欲や姿勢が大切です。それこそが、お金の問題から自由になるための解決策の一つだといえるからです。

文=いづつえり