椅子はあなた一人のために用意された建築 名作椅子があなたの「場」をつくる

暮らし

2018/2/18

『ストーリーのある50の名作椅子案内』(萩原健太郎/スペースシャワーネットワーク)

 デスクチェアーに関して、次のような意見がある。

「新たに仕事を始める時には、ローンを組んででも機能的に優れた椅子を買え。必ず元が取れるから」

 しかし、椅子の値段は実にピンキリだ。また椅子は、考えれば考えるほど、不思議なくらいに我々人類の仕事や生活と密接に結びついているものだ。だからこそ、良い椅子を持つことには、多様な側面で効果があるのだろう。

 本日紹介する『ストーリーのある50の名作椅子案内』(萩原健太郎/スペースシャワーネットワーク)は、京都造形芸術大学の非常勤講師を務めるデザインジャーナリストである著者が、50人のデザイナーによる50脚の椅子を厳選して案内するガイドブックである。

■あなたの選んだ椅子が「あなただけの空間」をつくってくれる

 椅子が我々に与える効果を計る基準として、機能性は大前提として、そのデザインも疎かにしてはなるまい。ここで言うデザインには、その椅子が生まれるに至ったストーリー性も含まれている。

 例えば、「自宅に書斎を持ちたいけど部屋が足りない」と悩んでいる人には、私ならば、“椅子”の購入を強く勧めたい。想像してみてほしい。自分が心からそのルックスやストーリー性に惚れ込んで、頑張ってお金をためて購入したあなた専用の椅子がリビングの隅に置いてある。するとどうだろう。その椅子は勿論のこと、椅子の周りのスペースはもう「あなたの場所」になるのではないだろうか。

「この椅子のデザインと歴史は自分のためのものだ」という所有感と気持ちのハリはきっとあなたの仕事と暮らしを前向きなものに変えてくれるはずだ。

 本書では、名作と呼ばれる椅子の写真解説をはじめとして、そのデザイナーの出自や交友関係、その椅子が生まれた時代背景にまでしっかりとページを割いている。デザイナーの想いから生まれた名作椅子には、さまざまなストーリーがある。その椅子が持つ“全て”を吸収することによって、あなたにとって「これだ」という椅子がきっと見つかることだろう。

■椅子の生まれた背景を知ることで、家具選びの“目”を養う

 20世紀デンマークの家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナー作の「Y-CHAIR」(ブランド:カール・ハンセン&サン/1950年)は、日本でもっとも人気が高い北欧の椅子と言っても差し支えないだろう。この椅子は建築家の安藤忠雄が自身の事務所や、設計した建築でしばしば採用したことでも有名だからだ。

 また次のページには、コペンハーゲンにあるカール・ハンセン&サン社のショールームや、「デザインミュージアム・デンマーク」の様子などの写真も収録されている。

 ブランドの特色や他の家具との組み合わせなど、実際の雰囲気をイメージしやすいというのも本書の特徴だ。

 近年定番となりつつある「北欧デザイン」だが、そのルーツに触れることによって、我々の「椅子を選ぶ目」ももっと研ぎ澄まされることだろう。パラパラとめくるだけでも目が養われ、読後にはきっと「自分のお気に入りの椅子」が見つかる本書。
 デザイン好きの方は勿論のこと、現在の働き方や暮らし方を見つめ直そうと考えている人にもおすすめの一冊だ。

文=K(稲)

今回紹介した書籍の「関連イベント」が開催されます
【開催概要】
●ストーリーのある名作椅子案内
・会期:2018年3月8日(木)~3月27日(火)
・会場:リビングデザインセンターOZONE(東京都新宿区西新宿3-7-1新宿パークタワー7階)
・詳細は【こちら】

●会期中3月10日(土)には同会場で著者・萩原健太郎さんの連動セミナーも開催されます