小学生が読める漫画『弟の夫』ドラマ化。ゲイ役・把瑠都に期待! あなたはどう受け止める?

アニメ・マンガ

2018/3/4

『月刊アクション』に連載され、平成27年度の「第19回文化庁メディア芸術祭」マンガ部門で優秀賞を受賞するなど各方面から高い評価を受けた『弟の夫』が、3月4日からNHK BSプレミアムでドラマ化されることとなった。世界的に知られる漫画家/ゲイ・エロティックアーティストの田亀源五郎さんが一般誌で連載を開始する際には驚きをもって迎えられたが、原作の世界観そのままのドラマのキャスティングが話題となるなど、期待が高まっている。

 この作品は、主人公の弟が同性婚をした相手が来日し、3週間ひとつ屋根の下で一緒に暮らすことになる家族の物語だ。

 主人公・折口弥一は高校時代に両親を交通事故で亡くし、現在は両親が遺したアパートの大家として働きながら、男手ひとつで小学生の娘・夏菜を育てている。そこへ10年前にカナダへ行ったきりで音信不通だった双子の弟・涼二の死が伝えられる。その「弟の夫」であるカナダ人マイク・フラガナンが「涼二との約束を守るため」日本へとやって来る。弥一はどう接していいか戸惑うが、夏菜は突然現れた大きな体の外国人の叔父さんとすぐに仲良しとなる。その後マイクの存在は折口家だけでなく、近所の人や学校など外へと波紋を広げ、周りの人たちや弥一の心にも徐々に変化が起きていく。

『弟の夫』について「日本初の『ノンケ(※ヘテロセクシャルのこと)向けゲイマンガ』だと考えている」と『美術手帖』2014年12月号「ボーイズラブ」特集で答えていた田亀さんは、今回のドラマ化を受け、NHKでのインタビューで以下のような話をされている。

私は「小学生が読める漫画」として、『弟の夫』を描きました。日本ではセクシャルマイノリティをカミングアウトしている人はとても少ないです。けれど、それをネガティブにも、ことさらポジティブにも描きたくなくて…。遠くの話ではなく、すぐ身近な話、普通の話として描きたかったというのがあります。

 本作が全4巻で完結した際、筆者のゲイの友人が「途中で登場した、自分がゲイであることに悩む中学生のエピソードに涙した」と話していた。そこに描かれていたのは、誰にも相談できず、ひとり心の中へ気持ちを押し込め、必死に自己受容しようともがいていたあの時の自分の姿――それは誰もいない惑星に、たった一人で置き去りにされたような感覚だったそうだ。

©田亀源五郎/双葉社

 中学生がマイクを訪ね、ゲイである自分の気持ちを初めて他人に話した後、弥一は両親の死後に涼二からカミングアウトされた時のことを思い出す。涼二のことを「受け入れた」と思っていた弥一が「変わったのは俺の方だ」と気づく場面は、第1巻から読み進めてきた読者の心へ強烈に突き刺さる。

『弟の夫』に出てくる登場人物は、基本的には普通の世界に生きている善良な人たちだ。しかし誰かに対するちょっとした違和感や、自分の心に刺さったほんの小さな棘が、猜疑心を生み、警戒心を抱かせ、無関心を装わせることになる。これらはすべて個々が持っている価値観から生まれた、自分の日常を守るための行動だが、そこから生まれた小さな齟齬は、誰かの自尊心を傷つける新たな棘となってしまうものだ。本作は悩む弥一の心の声や、近所の人の心無い反応、善かれと思って取った行動など、どんな人の心にも潜む感情をすくい上げ、他人を理解するとはどういうことなのかを丁寧に描いている。

 ドラマは原作に沿いながらも、オリジナルの展開をするという。どんな話になるのかとても楽しみだ。また『月刊アクション』4月号では、ドラマ化を記念して『弟の夫』特別編の新しいエピソードが掲載されている。こちらもお見逃しなきよう!

文=成田全(ナリタタモツ)