青学陸上部の寮母に学ぶ、 部下や子どものポテンシャルを引き出す、3つのポイント

暮らし

2018/3/7

『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(原美穂/アスコム)

 夫が突然会社を辞めて、大学の陸上競技部の監督に就任。フツーの主婦が、アスリート男子たちの生活を支える寮母さんに!?

 漫画のような展開だが、これは『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(原美穂/アスコム)の著者の身の上に、実際に起こった出来事だ。青山学院大学陸上競技部といえば、2017年、史上初の箱根駅伝3連覇・大学駅伝3冠を同時達成した強豪校だが、著者の夫が監督に就任するまでは、箱根駅伝に出場すらできない状態が続いていた。

 夫の監督としてのミッションは、学生たちを3年以内に箱根駅伝に連れていくこと。できなければ4年目はないかもしれない。もちろん著者は反対したが、全力で反対するほどに、夫の決意は固くなっていく。ついに著者は押し切られ、陸上競技の知識ゼロ、寮が新設されたために仕事の範囲さえ明確に定まっていないという状態で、寮母として学生たちとの共同生活に飛び込むことになったのだ。

 と、ここまで見てきた中でもすでに、夢やミッションを持つ人を応援し、支えるためのポイントがいくつもある。

■「『無知』は『強さ』に変えられる。怖いもの知らずだからこそ挑戦できるのです」

 著者は、自分の夫が監督になるまで、箱根駅伝とはなにか、出場がどれほど大変か、まったく理解していなかったという。もしも箱根駅伝に関する知識が少しでもあれば、最後まで監督になることを反対していたかもしれない。知らなかったからこそ、それがどんな難題かということもわからず、結果的に大きな挑戦をすることができたのだ。目標を持つ誰かを支えようというとき、自分がその目標についての知識を持っていなくても、サポートをはじめることはじゅうぶん可能だ。

■「自分が何をすればいいかわからないときは、『どうすればその場がよくなっていくか?』を考えると答えは出ます」

 赴任したばかりのころ、著者が大学側から任された仕事は宅配便の受け取りくらい。だが、学生たちが食事をしているのを見るうちに、気になることが出てきた。学生たちの食事の時間は決まっていないし、好きなものしか食べていない。体づくりのためにも、食事はきちんと取ったほうがいいのでは? そんな気づきをもとに、著者は責任者と話し合いをし、学生たちの食事は、決まった時間に、揃って食ベるスタイルに変化していったそう。陸上の知識がなく、どうサポートすればいいか見当もつかない状態から、少しでも学生や監督のサポートができるのであればと手を差し伸べるうちに、自分の役割が見えてきたのだ。

■「まず自分から話しかける。『あいさつをする』がコミュニケーションの第一歩です」

 男子学生との共同生活という環境に戸惑っていたのは、決して著者ばかりではない。学生たちだって、大人の著者にどう接していいかわからずに困っているかもしれない。それなら、人生の先輩である自分のほうから歩み寄るべきだと著者がはじめたのがあいさつだ。あいさつをするうちに、同じように見えていた学生たちにも、それぞれ個性があることがわかってきた。性格や学年(会社であれば役職だろう)によって、ほめるか叱るか、どのタイミングでどんな言葉をかけるか、あるいはかけないか。相手のことを日ごろからよく観察できているかという、サポートする側の力量も試される。

 自分が望んだわけではなくても、誰かの夢やミッションを支えることを仕事としている人、支えることそのものに喜びを感じる人は、少なくないのではないだろうか。本書で紹介されているのは、相手のパフォーマンスを最大限に引き出す、“支える力”のエッセンスだ。素直でわかりやすい39の言葉は、陸上競技部の寮の中だけでなく、会社での部下指導、家庭での子育てなどにもすぐに応用できるはず。誰かを支えたいと考えている人にとっては、おおいに参考になるだろう。

文=三田ゆき