ただいま開幕中! 大相撲の業界用語と豆知識をイラストで大解剖

スポーツ・科学

2018/3/14

『大相撲語辞典』(福家聡子:著、木村銀治郎:監修/誠文堂新光社)

 土俵の内外でニュースを賑わせつつ大相撲三月場所が開幕した。今月発売されたばかりの『大相撲語辞典』(福家聡子:著、木村銀治郎:監修/誠文堂新光社)は、テレビ中継やスポーツニュースを通じてよく耳にする相撲界独特の表現や技の名前などの言葉を読み解くもの。図解やイラストが豊富な辞典なので読みやすく、かつおもしろいので、初心者にとっても親子にとってもやさしいことは間違いない。知ったかぶりになってしまっている自信家に読ませるのもオススメである。

 本書は相撲ファン歴20年以上という著者のコミカルで的確なイラストと、現役幕内格行司の監修という最強タッグによる1冊である。相撲に対する愛情が全編ににじみ出ており、旧来の堅苦しい解説本とは違った、ファンならではの切り口である。

■相撲の“知ったか”も素直に頷く丁寧な解説

 本書は辞典といいながらも、文字ばかりでなくイラストが解説の一つ一つに付いているので理解しやすく、気になる用語も見つけやすい。もちろん専門的な解説辞典としての使い勝手も素晴らしい。つい笑みがこぼれてしまうようなコミカルな絵や冗談の効いた解説もあるので、相撲に詳しい人でも長く楽しめる内容だろう。

 ページをめくる楽しさは、本文以外の部分にも広がる。たとえば表紙カバーの見返しや目次の片隅に使われているイラストたちにも目が行ってしまう。特徴を得た絵柄から著者ご贔屓の力士像が想像できてしまうのも、本書の楽しみ方の一つだろう。

 本書の冒頭には、「そもそも相撲ってどうやって始まったの?」という相撲の起源や流れについての歴史的な基礎情報や、「力士っていつどうやってお風呂に入るの?」というような力士の一日の過ごし方、また誰でも一度は目にしたことがある番付表の読み方などが詳しく説明されている。決まり手の82手についてもそれぞれ明快でわかりやすい図解と補足があるので、「押し出し」「寄り倒し」など知ったつもりになっている技の名前について再学習するいい機会にもなるだろう。なんといっても、歴史ある相撲の世界は気になる言葉だらけだ。

・肩透かし(かたすかし) 本書63ページ
決まり手の一つで、相手がでてくるところで身をかわしながら、差した手で相手の腕の付け根を抱え、もう片方の手で肩周辺を叩き落とす技。負けた方からすると、勢い込んで出たものの、うまくかわされて負けてしまう。そのことから、相撲以外の一般的な場でも使われ、期待をかわされることや、拍子抜けするなどの意味を表す慣用句になっている。

・勇み足(いさみあし) 本書43ページ
相手を土俵際まで攻めたが、勢いが良すぎて、相手の足がまだ出ていないうちに自分の足が先に土俵から出てしまうこと。一般的な場面においても、勢い余ってやり過ぎ、失敗した時などの表現に使われる。

・独り相撲(ひとりずもう) 本書166ページ
取組で、意気込んで動き、自滅するような展開で負けたときの表現。一般的には、周囲の状況を見ずに、一人で気負い込むことを表す。愛媛県大三島町にある大山祇(おおやまづみ)神社には、あたかも相手がいるかのように一人で相撲を取る「一人角力(ひとりずもう)」と表される豊作を祈る神事が伝わっており、祭礼の中で奉納されるそうだ。(稲の精霊が相手なのだそう)

 紹介したこれらの言葉は、相撲用語から派生して日常的なものになったそうだ。もとは神事などの風習から派生した相撲の成り立ちを知ると、見慣れた慣用句も一層興味深くなる。

■世界でも他に例のない“ダイナミックな真剣勝負”をとことん楽しもう!

 大相撲は、平均的な成人男性の3~4倍も体重があるような鍛え抜かれた大男たちが、小さな土俵(大きく見えるが直径5m未満しかない!)で直接ぶつかり合うダイナミックな競技だ。そしてこの相撲は、世界でも極めて簡単なルールで行われる競技の一つだという。シンプルなだけに奥が深く、決まりごとを定めなければゲームの正当性が損なわれてしまう。この絵辞典の意義もまさにそういった点にある。

 観戦する私たちが受けとるインパクトが強烈なのも、やはりこのシンプルさに因るところが大きいだろう。ルールや仕組みが簡便だからこそ、感動が見ている人たちにダイレクトに伝わる。そこから、一国の総理大臣をもってしても「感動した!!」というシンプルな感想が衝いて出ることになるのではないだろうか。

 本書でも描かれている通り、相撲に挑む力士たちの勝敗は、日々厳しい稽古の積み重ねの賜物。常に前進する勇気、倒れない強靭さ、不撓不屈の精神……見習いたい部分は数々あるけれど、単純に彼らが一所懸命に物事に打ち込む姿は、私たちに良い影響を与えてくれると思う。
 そんな彼らの毎日を覗き見するように本書のページをめくりながら、改めて相撲観戦をしてみてはどうだろう? きっと新しい知識を通じて、相撲がもっと彩り鮮やかなものに見えてくるだろう。

文=大庭 崇