出世する人は基本「悪いヤツ」? 困ったリーダーから身を守るメソッド

ビジネス

2018/4/11

『悪いヤツほど出世する』(ジェフリー・フェファー:著、村井章子:訳/日本経済新聞出版社)

「うちのボスときたら……」と日々嘆いている人が薄々感じていそうなことを、現実として浮き彫りにするのは、『悪いヤツほど出世する』(ジェフリー・フェファー:著、村井章子:訳/日本経済新聞出版社)だ。

 本書は豊富な研究データや実例をもとに、従来のリーダーシップ教育の幻想を粉々に打ち砕く、超現実的かつ実践的なリーダー論である。
 組織行動学と経営学の研究者である著者は、リーダーに謙虚さや誠実さを求めると痛い目に遭うだろうと主張する。

■産業化したリーダーシップ教育には、落とし穴がある

 著者は本書の冒頭で、既存のリーダーシップ教育は失敗であるとして、真っ向から否定している。

 数値の詳細な紹介はここでは省くが、本書で根拠として提示されるデータによると、リーダーシップ教育を受けた人の満足度や自己評価が高いことに対して、彼らの離職率や職場環境に対する満足度は依然低いままであることが明らかになっている。その原因として、企業などが施すリーダーシップ教育が、定型化・産業化してしまったことを著者は危惧している。受講者個人はその受講と自身のキャリアアップに満足していても、そこで学んだ知識や経験を所属する企業経営にフィードバックできなくては、有意義とはいえないだろう。

●リーダーの本質その1:自己中心的である

 著者は心理学や組織行動学の知見から、会社組織とリーダー個人の利害が必ずしも一致していないことを導き出し、「自己中心」がリーダーの実像だと述べている。
 本書では、リーダーとして知られる人物たちの実名を挙げその行動を分析しながら、リーダーの理想的資質として過去に語られてきたものを、粉々に打ち砕いていく。

 嘘をつき、仲間を裏切り、それでいてもなお堂々とリーダーの座に就いている人々の実例をみれば、謙虚さ、誠実さ、思いやりなどは、リーダーの資質としてはまったく関係ない、むしろ幻想でしかないという説にも納得いくだろう。

●リーダーの本質その2:ナルシスト

 マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズなど、偉大なリーダーたちの共通点は、「ナルシスト傾向」だと著者は述べている。アメリカを代表する大企業のCEOの発言や行動を性格分析したところ、彼らが共通して強いナルシスト傾向を持つことが明らかになったのだという。経営者だけでなく、歴代の大統領たちもその例に漏れないらしい。
 著者は、ナルシスト型リーダーの行動は、周囲との軋轢を生む恐れがあることも認めているが、過剰な自己評価は強い自信となって、時には嘘でさえ信じ込ませてしまうような大きな説得力を生み、結果的に信頼を勝ち取るらしい。著者はこれを、欠点を補って余りあるリーダーシップの発揮だと評価する。

 既存のリーダーシップ論の理想を徹底的に覆してきた著者が、組織の中で生き抜く術として、最後の1章を割いて読者のために記したアドバイスは、「自分の身は自分で守れ」ということ。この一点に尽きる。

 そしてよきリーダーとなるためのアドバイスとしては、次のように述べている。

まずその地位に就くために、次に地位を維持するために、自分の置かれた環境で必要な能力や行動を示さなければならない。

 事実から導き出されたリーダー論の現実には夢も希望もないようにみえる。
 だが、本書には同時に組織の中でリーダーに対峙する具体的な対応策が提示されている。会社やグループの中でリーダーの言動に頭を悩ませているという人には、ぜひ手に取ってもらいたい一冊だ。

文=鋼 みね