オムライスだって変わった! 昭和の日に読みたい「昭和と平成の違い」とは?

社会

公開日:2018/4/29

『くらべる時代 昭和と平成』(おかべたかし:文、山出高士:写真/東京書籍)

 時代の移り変わりとともに、身の回りのものも変化を遂げていく。それをしみじみと感じさせてくれるのが、『くらべる時代 昭和と平成』(おかべたかし:文、山出高士:写真/東京書籍)だ。本書には、昭和と平成の変化が全34個収められている。

 2007年から名称が変更された“昭和の日”。この日は、激動の時代に思いを馳せる人も多いだろう。しかし、平成生まれの筆者には昭和という時代がイマイチピンとこない。だからこそ、本書から昭和の魅力に触れてみることにした。

 初めに驚いたのが、オムライスひとつとってみても、昭和と平成では違いが見られるということ。

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 昭和のオムライスはチキンライスが卵の中に包みこまれているが、平成はパカっと卵を切ることでチキンライスを覆い隠す形が主流になっている。そう言われてみればたしかに、幼い頃に食べていた記憶の中のオムライスと現在お店で目にするオムライスは違う。こうした違いは指摘されると気が付くが、いつから変わったのかは不思議なほど思い出せない。

 しかし、自身で料理を作り始めた頃に漠然と「オムライスってチキンライスを包まなくても作れるんだ」という思いを抱いた記憶がある。チキンライスを卵で包むのは見るからに上級者の技だと思っていたから安堵した覚えがある。オムライスの形が変わっていった背景にはもしかしたら、筆者のように料理が苦手な人でも簡単に作れるよう配慮された結果だったのかもしれない。そう考えると、変化に奥深さも感じた。

 今現在当たり前だと思って食べている料理の形も、近い未来には変わる可能性がある。だからこそ、その日が来る前に、料理の見た目も思いっきり味わいつくしていきたい。

■タコすべり台を平成の公園に

 公園が子どもたちの遊び場になっていた時代は去りつつある。回転遊具の事故が注目を浴びてからというもの、田舎でも公園で遊ぶ子どもは減っている。それに伴って、公園の形も少しずつ変化してきている。

 現代の公園には安全面とコスト面に配慮された健康器具が置かれていることを、本書で初めて知った。

 平成生まれの筆者でも子どもの頃は巨大なジャングルジムや箱型ブランコで友達と遊んだ覚えがある。それだけに、現代の公園の味気なさを知り、少し残念な気持ちになった。しかし、こうした気持ちになる大人が多かったのか、近年では子どもの目にもっと魅力的に映る公園を作ろうという声も上がっているようだ。実際に著者であるおかべ氏も、本書内で昭和時代に作られた「タコすべり台」を平成の公園にと提案している。

 インスタ映えがトレンドになっている現代だからこそ、手作り感とインパクトが満載な遊具は多くの人の興味を惹くかもしれない。

 現代の子どもたちは家の中で遊ぶことが多くなってきている。スマホゲームはたしかにおもしろく、親の手もかからないので楽でもある。しかし、公園で思いっきり遊ぶという経験は、子ども時代にしかできないものだ。子どもには思いっきり子どもらしい遊びをしてほしい。そう大人が思うのは、昭和も平成も同じだ。時代の流れによって見直されていくものは多いが、逆に時代の流れに逆らって再導入していくものがあってもよいのではないだろうか。

■平成の花束は小ぶりでプレゼントしやすい

 女性へのプレゼントとしてマストなのが、ロマンチックな花束だ。女性側からしてみても、花束を貰えると大切にされているような気がして心が温かくなる。近年では学生カップルの間で、彼女の卒業式に100本の花束を渡すことがトレンドにもなっている。こうした背景もあってか、花束の見た目も昭和と平成では違いが見られる。

 平成の花束は、昭和よりも小ぶりだ。おかべ氏によれば、こうした変化は男性がプレゼントをしやすいように配慮したことで起きたものなのだそう。しかし、その一方で今でも昭和の花束のようなボリューム感を求める方も多いのだという。時代やモノの見た目が変わっていくが、「大切な人を喜ばせたい」という想いは色あせないようだ。

“国の内外、天地とも平和が達成される”という意味を込められてつけられた平成も、あと少し。「平成生まれって若いね」と言われ続けた身からしてみると、ひとつの時代が終わることに寂しさを感じてしまう。しかし、いつの日か平成と新しい時代とを比べてみたときに「平成もなかなかよかった」と言えたら素敵だと思う。平成生まれのひとりとして、残りわずかな時間を味わいつくしていきたい。

文=古川諭香