片付けの圧力に物申す! NY発の散らかしメソッドとは!?

暮らし

2018/5/15

『もうモノは片づけない!』(ジェニファー・マッカートニー:著、杉田七重:訳/潮出版社)

 おそらく、片付けが得意な人より苦手な人の方がお読みになる方が多いだろうからあえて聞いてみたい。「皆さん、片付け、好きですか?」、と。

 筆者はあまり好きではないし、正直なところかなり苦手だ。以前は人を招くときはそれでも必死に部屋中を片づけたものだが、最近では1スペースにすべて押し込み、客人を「ここから先に踏み入れることを禁じる」と脅すことでなんとかしている。

 片付けは、我々が生きているかぎり切っても切り離せない作業といえる。片付けても片付けてもモノは増え、そして散らかる。散らからない部屋にするには、俗世との交流を絶ち、仙人のような生活をするしかないのでは、と半ば本気で思っている。無論そんなことは不可能だから、今日も雑然と机に積まれた本をなだれさせている。

『もうモノは片づけない!』(ジェニファー・マッカートニー:著、杉田七重:訳/潮出版社)は、そんな破格に片づけができない人間にエールを送ってくれる1冊だ。著者のジェニファー・マッカートニー氏はニューヨークの作家・編集者。本書は「ニューヨークタイムズ」で話題になった『the joy of leaving your sh*t all over the place』が日本に上陸したものだ。

「いまこそ整理整頓の呪縛を断ち切り、万人に片づけを強いて、判で押したようにつまらない生活を送らせようとする社会の圧力をはねのけましょう」、と著者は語る。

 書店を見ればさまざまな収納関連の書籍が平積みされている。すっきりと整った部屋は、「シンプルだけどゆとりのある生活」の象徴のようで憧れる人も多いだろう。しかし、それらの大量の本は「片づけられない人を責めて楽しむ悪い風潮」だと言う。

「あなたに片づけて欲しいと思っているのはだれだかおわかりですか? コンテナ・ストアの店員、クレイト&バレルの社長。収納システムを提供する会社の会計担当者。片づけは大きなビジネスチャンスだからです。ここで儲けようという人々は、だらしない消費者に羞恥心を持ってもらいたい」、とかなり手厳しいことを記している。さらに著者は、「家じゅうをガラクタだらけにしておく」「キッチンが汚れるのは当たり前」など、従来の片づけ本を真っ向から否定する。

 整った部屋はたしかに美しい。どこに何があるかすぐにわかるし、慌てて掃除をしなくてもすぐに人を招ける。しかし、モノがごちゃごちゃしていると集中できない人がいるように、何もない環境では落ち着かない人もいるだろう。片づけをすることでやりがいを感じる人もいるだろうが、それはあくまでその人が片づけが好きなだけで、そうでない人が責められる言われはない。

「問題は、不安や罪悪感を持ち続けること」。完璧に部屋を片づけようとはりきりすぎて、できない自分に落ち込むことはない。掃除ができなくても死ぬことはないが、掃除ができない自分を責めることはその人を苦しめる。本書は多くの片づけメソッドを皮肉りながら、部屋を綺麗に片づけなくてはという固定観念から読者を自由にしてくれる。

 もしあなたが、多すぎる「片づけのコツ」や「持たない生活」みたいなキーワードにちょっと疲れてきたときは、服も買ったものも思い出の品も出しっぱなしにして、この本を読んでみるのもいいかもしれない。

文=音田アユム