ヴィクトリア女王は愛猫家!? 「最後の晩餐」に参加した猫とは!? 『猫の世界史』

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2018/5/6

『猫の世界史』(キャサリン・M・ロジャーズ:著、渡辺 智:訳/エクスナレッジ)

 猫は神秘的な印象を与え、世界中の人々を魅了し続けている動物だ。そんな猫の歴史が収められているのが『猫の世界史』(キャサリン・M・ロジャーズ:著、渡辺 智:訳/エクスナレッジ)だ。本書には猫の魅力や奥深さが所せましと記されている。人と猫が歩んできた4000年には、さまざまな物語が秘められているのだ。

 その中には、家族としてかわいがられた猫もいれば、魔女狩りで犠牲になった猫やネズミ捕りのためだけに飼われた猫もいる。猫たちは人間と暮らしながら、山あり谷ありのニャン生を歩んできたのだ。

 そんな猫と人間との関係性は、有名な絵画からも垣間見ることができる。例えば、ティントレットは「最後の晩餐」や「エマオのキリスト」などの中に猫を描いている。こうした絵画を見てみると、猫ははるか昔から人々の生活の中に深く入り込み、愛されてきた動物であることが分かる。神秘的な猫は、画家にとって愛すべきモデルでもあったのだ。

■愛犬家のヴィクトリア女王は猫も好んでいた!?

 本書には著名人の猫好きエピソードも多く収録されている。そのひとつが、イギリスのヴィクトリア女王によるメダルのエピソードだ。イギリスでは功績のある者に、英国動物愛護協会から女王メダルが授与されていた。このメダルには、人間にとって身近な動物がデザインされているのだが、当初猫は描かれていなかった。これを変えたのが、ヴィクトリア女王だ。猫が一般的に不当な扱いを受けていると感じたヴィクトリア女王は、人々が猫に抱いている負の感情を取り除くため、メダルの表に猫も彫り込むべきだと主張した。

 ヴィクトリア女王はどちらかといえば、犬好きなイメージを持たれており、実際にコリーやポメラニアン、テリア、ダックスフンドなどといった犬を飼っていたといわれている。そんな愛犬家なヴィクトリア女王だが猫に対しても優しくなってしまう。これにはもしかしたら、猫が生まれながらにして持っている「愛され素質」が関係しているのかもしれない。

■猫を正しく理解することの大切さ

 4000年の歴史の中にはヴィクトリア女王のようにほっこりとするストーリーもあれば、猫は邪悪な動物だと思われていたエピソードもある。フランスの外科医アンブロワーズ・パレは猫アレルギーの症状を過大に問題視し、猫を危険な動物であると結論付けた。さらに、イギリスの牧師であり作家でもあったエドワード・トプセルはパレの説を『四足獣、蛇、昆虫の歴史』の中で詳しく解説している。彼らは「猫の肉は有害である」や「歯には毒があるので、噛まれると死ぬ」などといった理由を並べ、人々に猫と関わりを持たせないようにした。こうした誤解を受けていた頃、猫はさぞ生きづらい想いをしていたことだろう。

 しかし、これは近年のデジタル化社会でも起こり得ることのように思う。たくさんの情報が溢れている現代は正しい情報を選ぶことが難しい。そのため、誤った情報を鵜呑みにして、猫を誤解してしまうこともあるのではないだろうか。猫ブームな今だからこそ、悲しい歴史を繰り返さないためにも、猫に関しての正しい知識や情報を取捨選択していくことが大切なのだ。

 外で飼われることが当たり前だった猫は、室内で飼われるようになり、人間との距離をますます縮めている。日々、多くの発見や笑顔を与えてくれる猫はもはや、ペットというよりも家族の一員だ。そんな猫たちが今後、どんな歴史を歩んでいくのかも楽しみになってしまう。

文=古川諭香