仕事をやめたいと思っている人へ。新人時代を乗り切るコツは、世界のエリートに学べ

ビジネス

公開日:2018/5/9

『コミック版 世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(戸塚隆将:著、青木健生:シナリオ、サノマリナ:作画/朝日新聞出版)

 厚生労働省によると、平成26年3月に卒業した、新規高卒就職者の40%以上、新規大卒就職者の30%以上が、就職後3年以内に離職しているという。学生から社会人という環境の激変に加え、わからないことだらけで失敗ばかり…。しかし悩み多い新人時代を乗り越えれば、未来は明るいかもしれない。楽しく読みながら世界のエリートが大切にする仕事の基本が身につく1冊が、『コミック版 世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』(戸塚隆将:著、青木健生:シナリオ、サノマリナ:作画/朝日新聞出版)である。

 著者である戸塚隆将氏が、ゴールドマン・サックス 、マッキンゼー、ハーバードビジネススクールで学んだ「仕事のコツ」を紹介した本書の、同名の原作は、世界中で広く読まれたベストセラーである。

 主人公は、世界に打って出るという目標を抱いて、中堅家電メーカーに入社した瀬名みらい。経営不振に陥るみらいの会社に、世界最強のコンサルティング会社から超エリートの経営コンサルタント・三条英人が派遣されてきた。「基本を大事にすれば私たちも会社も成長し続けられる」と述べる三条から、みらいが「世界のエリートが実践する、グローバルで通用する仕事の基本」を学び、ひとつずつ実践していくというストーリーである。48の仕事の基本が6章にわたりコミックで紹介されているので読みやすい。

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第1章 つながりに投資する
第2章 内面と外見を磨く
第3章 「時間」を支配する
第4章 決定的なコミュニケーション
第5章 資料は「商品」、会議はチャンス
第6章 「世界」に打って出る

 みらいが学んだ基本のいくつかを見ていこう。すでに実践していることもあると思うが、もう一度見直してみることも大切だ。

 日本人は「ありがとう」を「すみません」で済ましてしまいがちだが、エリートは、サンキューの使用が9割 で、エクスキューズミーは1割だそう。みらいも、すみませんの口ぐせをありがとうにリセット。明確にするため謝罪は「申し訳ありません」、感謝は「ありがとうございます」に使い分けるとよいそうだ。

 またエリートが自然に行う、「アフターユー」(相手に先を譲る)が、人間関係を好循環にしているという。競争意識の激しい米国社会だからこそ競争に一定のルールがあり、さまざまな人種、言語の国際社会においては暗黙の了解、常識がないため明白なルールが必要なのだという。

 また、みらいは、「正解のない問題」を考える訓練を実践する。正解のない現実問題に対して、論理力に支えられた自分なりの意見を持つことを、世界のエリートには求められるのだ。自分でできる訓練方法は、新聞や本を読み、読んだ時間の3 倍考えること(大前研一氏の言葉)だそう。

 ビジネスマンとしての外見・内面を磨き続け、少しずつ変化していくみらいの様子はとても心地よい。三条に学んだとおり、会議においてもきちんと発言するのだ。「会議の参加者には発言の義務が課せられている。発言しないのは欠席と同じだ」。会議での発言があなたの「バリュー」の第一歩なのである。

 そのほか、忙しくても週1回は社外の人と会う。先輩・上司との飲み会を避けない。オンからオフの切り替えを意識する。20代の週末は丸一日を自己投資にあてる 。仕事を引き受ける際は、その場で指示者と仕事の完成イメージを共有する。資料づくりには紙と鉛筆を使う。など全48のコツが紹介されている。

 みらいは、こうした基本をひとつひとつ徹底していくことで、「共に仕事をするに値する相手」としての信頼を手にしていく。するとだんだんと仕事を任されるようになり、成果を生みだすことで自信がつき、目標に向かってどんどん成長していく。エリートの仕事の仕方というと特別なスキルなどを想定しがちだが、実はシンプルで、しかも難しいものではなく「基本に徹する」ことなのだ。基本を大事にすることで生まれる好循環を、ぜひ自分のものにして、新人時代を乗り切ってほしい。

文=泉ゆりこ