初のベストアルバムが、ウィークリー1位&2位を独占! やっぱりLiSAのライブが最強な理由

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更新日:2020/10/13

 5月9日、LiSA初のベストアルバム『LiSA BEST -Day-』『LiSA BEST -Way-』がリリースされた。この2枚のベストアルバムは、発売前日のいわゆる「フラゲ日」から熱狂的に受け入れられ、一時はトレンド入りまで果たし、初日のオリコンデイリーランキングでは『LiSA BEST -Day-』が2位、『LiSA BEST -Way-』が3位を記録。そして、5月15日に発表されたオリコンウィークリーランキングでは、『LiSA BEST -Day-』が1位、『LiSA BEST -Way-』が2位を獲得した。2枚のベストアルバムで1、2位を独占するのは、まさに快挙。LiSAにとっても、ウィークリーランキングで1位を獲得するのは初めてのことだ。これは今、彼女の歌が、音楽が、その存在が、どれだけ強く求められているのかを示す象徴的なトピックである。2011年4月に自身の名義で活動をスタートし、7年間歩み続けてきたLiSAのひとつの集大成を、多くのユーザーが心待ちにしていた事実が、力強く証明されたのだ。

 歌い続ける覚悟を刻んだ2枚のベストアルバムについて、LiSA自身がたっぷり語ってくれたインタビューは、「特集:LiSA’s BSET of BEST」に掲載しているので、そちらをご覧いただきたいのだが、ここでは、LiSAの最大の武器であり、たくさんのオーディエンスを惹きつけてやまない彼女のライブについて触れてみたい。アコースティック編成で行ったステージでも、やっぱりLiSAのライブは「最強」だった。

All Photo by 上飯坂一

セットリスト
1. No More Time Machine
2. アコガレ望遠鏡
3. Catch the Moment
4. Little Braver
5. シルシ
6. ハローグッデイ
7. DOCTOR (ゲスト:カヨコ)
8. 罪人
9. Thrill, Risk, Heartless
10. ASH (ゲスト:マオ from シド)
11. oath sign (ゲスト:May’n)
12. say my nameの片想い
13. そしてパレードは続く
14. Rally Go Round
15. TODAY

(アンコール)
16. ONLY≠LONELY (ゲスト:小南泰葉)
17. best day, best way

 4月7日、TOYOSU PIT。東名阪の3都市で行われたライブハウスツアー「LiVE is Smile Always~FUN & FANFARE~」に先駆けて、LiSAとしては初のアコースティック編成で行われた「LiVE is Smile Always~FUN&FANFARE~[Acoustic Time]」は、幸運にもその場に集まることができた観客にとって、期待していた以上のプレゼントを受け取ったかのような、特別なひとときになった。

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 CDのリリースイベント等ではアコースティックギター1本と歌というスタイルはおなじみだが、ライブハウスで行われるLiSAの公演において、「椅子がある」こと自体が極めてレアな状況。開演を待つフロアにも、ある種の緊張感と期待感が相まった空気が流れていたのが印象的だった。

 白のロングドレスで登場したLiSAは、“TODAY”の1コーラスを歌ったのち、1曲目の“No More Time Machine”を歌唱。衣装や演出も含めておごそかな雰囲気が漂う中、いつもとは違うアレンジで聴かせてくる歌が、空間全体に沁みわたっていく。ベストアルバムのインタビューで本人も「LiSAの曲は全部いい曲なんです。だって、いい曲しか出してないもん(笑)」と誇らしげに語っていたが、アコースティングアレンジの楽曲を数曲聴いて感じたのは、原曲が持つポップソングとしての圧倒的な強度だった。LiSAのライブは、熱くて激しくて、楽しい。そして同時に、どの楽曲も等しく突き刺さってくるのは、楽曲に普遍性が宿っているからなのだと、改めて感じる。

「この日のためだけに」特別な装いをまとった楽曲たちが、新たな表情を見せながら、伸びやかなLiSAのボーカルとともに届いてくる。この日集まった大半のオーディエンスは、LiSAのライブがいつだって楽しいことをとっくに知っている。しかし知っているからこそ、ちょっとよそ行き風のLiSAが披露する歌によって、会場内の空気はグッと親密さを増していく。よそ行きのふりして、要所要所でいつものキャラがにじみ出てしまう親しみやすいMCもあり、ステージと客席の空気はほぐれていった。

 4曲目の“Little Braver”では、流れてきたイントロによって客席がざわめいた。“リトブレ”といえば、2015年1月に行われたLiSA二度目の日本武道館公演、アンコールの超重要なポジションで、しかもアコースティックアレンジで披露されたことを、強く記憶している方も多いだろう。その記憶が強烈だからこそ起こったざわめきなのだろうが、その様子を見て、ひとつ思い出したことがある。

 2012年4月の日比谷野外音楽堂公演を収めたDVDを、ものすごい回数繰り返し観たことがある。観ながら感じたのは、LiSAのライブは熱くて激しくて楽しいけど、それ以上に「優しい」ということだった。受け取る相手のことを考えに考えて、楽しんでもらうことだけを目的として、観客ひとりひとりとコミュニケーションするライブ。いつだってLiSAのライブはそういう姿をしていたが、アコースティック編成のステージは、その「優しさ」を一層際立たせる。もともと近かったステージと客席の精神的な距離がさらに早く縮まり、会場がひとつになっていく。それこそが、LiSAのライブが最強である理由なのだな、と、TOYOSU PITのステージを観て、改めて感じた。

 そして、もうひとつ。LiSAはよく、自身を称して「楽しませる天才」だと言う。実際、この日のためだけに、17曲もの楽曲に通常とは異なったアレンジを施して準備をすることは、決して簡単なことではない。いつもと違うアコースティックライブは、LiSAひとりの力で作れるものではないだろうし、周囲のいろいろな協力がなければ成立しない。相手を信頼して、任せること。ステージ上のミュージシャンをはじめ、周囲との関係性、そしてライブをともに楽しい空間へと高めていこうとする客席との関係性。それらすべてが、LiSAのライブを形成していく。他の誰も持ち合わせていない「愛され力」が、LiSAにはある。5月12日に行われたフリーライブで、観客全員からのサプライズがあった、というニュースを目にしたけど、それもやはりLiSAの「愛され力」が呼んだエピソードなのだろう。

 7曲目“DOCTOR”の作曲者・カヨコ以降、次々にゲストがステージに登場する。“ASH”の作詞を手掛けたマオ(シド)、翌日から自身のツアーが始まるにもかかわらずこの日のライブに参加し、“oath sign”で圧巻の歌唱を見せつけた「親友」のMay’n。 音楽活動を休止していながらもこのステージのために駆けつけた“ONLY≠LONELY”の作曲者、小南泰葉。LiSAの「愛され力」が、ゲストたちの最高のパフォーマンスを引き出していく。

 本編終盤、“say my nameの片想い”“そしてパレードは続く”では、アコースティックセットとはいえ身体を動かしたくてうずうずしていた観客のカタルシスを解放し、“TODAY”が本編のラストを飾る。アンコールのMCで、LiSAは言った。「やりたいことを、今のうちにやったほうがいい」。歌手になる、という夢を携えて上京し、いつしかたくさんの仲間に囲まれることになったLiSAだが、この特別な一夜もまた、彼女が「みんなを楽しませる」ことだけを考え、その想いを原動力に駆け抜けてきたからこそ得られた、ひとつの「ギフト」だった。

 ライブは、アーティスト・LiSAが進むべき道を示した“best day, best way”で大団円を迎えた。LiSAにとって初めてのアコースティックライブは、原曲が持っていた輝きにふくよかな広がりが加わり、楽曲が持つ力を新たに認識できる特別なステージであり、これまでの足跡をたどり、未来へと歩みを進める2枚のベストアルバムとともに、長く記憶される宝物のような時間だった。LiSAでいること、歌い続けていく覚悟を持って、LiSAは走り続けていく。その先に見せてくれる景色を、楽しみに待とう。

文=清水大輔