銀閣を築いた足利義政はポンコツだった!? 知られざる偉人のしくじりを集めた歴史人物事典

エンタメ

2018/5/15

『しくじり歴史人物事典』(大石学:監修/学研プラス)

 学校で習った歴史の偉人たち。彼らが成した偉業は卒業して何年経った今でも覚えている。しかしどんな偉人だって、ひとりの人間だ。その大きな陰に隠された「ポンコツなエピソード」をひっそりと抱えていることもある。そんな彼らの失敗をかき集めて1冊の雑学本にまとめたのが『しくじり歴史人物事典』(大石学:監修/学研プラス)だ。

■室町幕府の力を弱めた足利義政

 室町幕府の第8代将軍・足利義政。彼が偉人であることは誰もが知っている。しかし本書によると、義政は私たちのイメージとかけ離れたポンコツだったようだ。

 本書では、なんとなくその偉人の生涯を理解できる「人生すごろく」が載せられている。そして義政の人生すごろくは……ポンコツな香りがほのかに漂っているように見える。

 なんだ、この能天気な顔は……。偉人の風格が皆無じゃないか。……もう答えを言ってしまおう。足利義政は「口出しする人が多すぎて、将軍としてのやる気を失ってしまった」のだ!

 13歳から将軍だった義政は、まわりの側近たちが次々に政治に介入してくる様に嫌気がさし、思い通りにならないものと諦めてしまった。さらには、自身が跡継ぎを決められないことがきっかけで起きてしまった「応仁の乱」も、どこか他人事。次のページをめくると、子どものように「ぷぅ~」とむくれる義政の姿が描かれており、「東山文化」を築いた偉大なイメージがボロボロと崩れていく……。

 

 一方で本書では、芸術的な庭を造り上げた身分の低い庭師・善阿弥をほめ、ていねいに接するエピソードも紹介している。将軍らしからぬ、好感度の上がる話だ。文化人として生きる道があるならば、義政には違う人生があったのかもしれない。しかし歴史はそれを許さなかった。

 義政は側近たちに嫌気がさした結果、将軍としての責務を放棄し、唯一興味のあった文化人としての趣味に走ってしまう。それが「銀閣」だ。その代償として京都は応仁の乱で焼け野原になり、室町幕府の力が衰えてしまった。なにより悲劇なのは、銀閣が完成する前に病で亡くなってしまったこと。ポンコツでありながら、どこか同情もしてしまう生涯だ。

■島流しの人気スポット

 このように本書は、誰もが知る偉人に隠されたポンコツエピソードをユーモラスかつ分かりやすく紹介している。この他、「カリスマすぎてしくじった」武田信玄、「おごれるものも久しからず」平清盛、「秀吉様以外に嫌われた」石田三成など、歴史が苦手な人でも興味を持って楽しく読める内容になっていて嬉しい。

 さらにこれだけではない。本書では遊び心満載の工夫がいたるところになされている。たとえば「島流しの人気スポット」だ。

 「人気スポット」と聞くとどうしても観光地を思い浮かべるが、ここではそんなお気楽な場所を紹介していない。何かしらで迫害を受けたり罪を背負ったりした人々が流される「定番の島」を紹介しているのだ!

 本書によると、国内有数の温泉地・伊豆(これに加えて伊豆七島)、絶景とパワースポットの隠岐島など、現代では定番の観光地もかつては島流しの定番だったらしい。なんとも言葉が出ない。

 同じく島流しの定番、佐渡島には天皇や僧、文化人が流され、硫黄島には俊寛や平康頼、藤原成経など、平家を打ち滅ぼそうとした人々が流されたそうだ。奄美大島には西郷隆盛が流されており、なんとそこで生涯の伴侶を見つけ、子どもまでもうけたらしい。……さすが西郷さん。図太い。

 この他、「残念な2代目」をテーマに勝手に歴史の偉人でランキングを組んだり(ちなみに第1位は源頼家)、思わず気の抜けてしまう合戦中に起きたエピソードを紹介したり、「偉人たちの“らしからぬエピソード”」をテーマに好き放題書いている本書。子どもに読ませる教本としても、大人が読む雑学本としても、実にぴったりだ。

 本書を読んでいると、なんだか「仕事で失敗してもいいや」「ちょっと嫌なことがあっても気にしないでおこう」という気になってくる。あの偉人でさえ色々な苦労やポンコツぶりを背負いこんでいたのだから、一般人である私たちが日常にヒーヒー言うのは当然だ。「私ってポンコツだな~」と思ってしまったときはぜひ読んでほしい。きっと「偉人のしくじり」があなたの気持ちを楽にしてくれる。

文=いのうえゆきひろ