サザエさんがお酒を飲んだら酒乱に!? 古き良き時代を生きる磯野家の危機を徹底解説!

社会

2018/5/30

『磯野家の危機』(東京サザエさん学会/宝島社)

 天皇陛下の退位が来年2019年4月30日に正式決定した。この日を境に平成から新しい年号へと変わり、新しい時代が訪れる。大きな変化の気配を感じるが、この数十年を振り返るだけでも、私たちを取り巻く環境は劇的に変わった。例えば、電話といえば固定電話か公衆電話だったが、いまやスマホなどの携帯電話を持つ人が大半だ。テレビはアナログからデジタルへと変化し、オフィスワークなら1人に1台以上のパソコンが貸与されるのが当たり前。家でも外出先でも、インターネットで世界中とつながることができる時代となった。

 一方で、変わらないものもある。そのひとつが、磯野家。1946年に新聞で連載が開始された漫画『サザエさん』に登場する家族だ。1969年にはアニメ「サザエさん」が放送開始となり、国民的アニメとなった。子どもの頃から「サザエさん」を観て育った人も多いと思うが、連載・放送開始当時から現在まで、磯野家の生活はあまり変わっていない。「古き良き日本の家族」といえば聞こえはいいが、悪くいえば時代の変化に取り残されている。そんな磯野家の現状を危惧して、現代とのギャップを52の項目で分析したのが『磯野家の危機』(東京サザエさん学会/宝島社)だ。

■波平は出川哲朗、フネは石田ゆり子と同い年!?

 著者によれば、漫画から磯野家の人々の年齢を算出すると、波平は54歳、フネは48歳(推定)だそう。アニメでは少しずれて、フネは50代ということになっているようだ。タレントの出川哲朗は1964年生まれで現在54歳、女優の石田ゆり子は1969年生まれで48歳。2人が芸能人であることを差し引いても、波平とフネはあまりにも老けている。

 本書ではこの理由を、「中年」の定義の変化を例に挙げて解説。1972年には中年が「40歳代」だったのに対し、現在は「50代の半ばから60代の前期にかけて」と定義が変化したそうだ。つまり、数十年前に中年と呼ばれた年齢の人も、いまは格段に若々しいということ。連載開始当時の定年が55歳だったので、波平は定年間近。平均寿命も今より短かったことを考えれば、波平とフネの見た目も不自然ではないのかもしれない。

■サザエがお酒を飲むようになったら酒乱になる!?

 磯野家では、波平とマスオが酔っ払って帰宅したり、自宅で晩酌をしたりすることがある。が、フネとサザエがお酒を飲んで酔っ払うことはない。本書によれば、2017年に実施された飲酒に関する調査では、この30年で「飲む・飲める」と答えた女性の割合は52パーセントから72パーセントに上がったそう。

 もしサザエが現代の女性のようにお酒を飲むようになったら…女友達と飲みつぶれることもあるかもしれないと著者は推測。確かに、豪快にお酒を飲みながら、カツオのイタズラを愚痴ったり、自身の失敗談をおもしろおかしく話したりする様子が目に浮かぶ。しかし、酒は飲んでも飲まれるな。サザエが酒乱にならないことを祈るばかりだ。

■磯野家から黒電話がなくなる日は来るのか?

 アニメでは、磯野家の廊下にダイヤル式の黒電話が置いてある。それ以外に電話は見当たらないし、携帯電話も登場することはない。しかし、いまの時代に黒電話を使っている家庭は少ない。それどころか、本書によれば、携帯電話などのモバイル端末の世帯保有率は、固定電話を抜いているそう。この状況で、波平やマスオは携帯電話を持たず、仕事に支障はないのだろうか?

 著者は、磯野家の人がスマホを持たない理由を、波平の厳しさゆえではないかと指摘。波平とフネが亡くなった後には、磯野家の固定電話がなくなるかもしれないと考察する。

 本書では、他にもさまざまな視点で磯野家の生活と現代とのギャップを分析。「そういえばそうだったな」と懐かしい気持ちになったり、「そんなに変わったのか」と驚いたりしながら、時代の変化を体感できる1冊だ。

 都心であっても地域の人とのつながりが密接で、3世代が一緒に住むことも珍しくなかった古き良き時代の日本。磯野家は、いまもその時代を生きている。時代の変化に取り残された磯野家は、これからどうなっていくのだろうか?

文=松澤友子