シャーロック・ホームズのあの宿敵が主人公!『憂国のモリアーティ』麗しき犯罪コンサルタントの闇とは?

マンガ

更新日:2018/7/9

『憂国のモリアーティ』(著:三好輝、編集:竹内良輔、原案:コナン・ドイル/集英社)

 ミステリー作家、コナン・ドイルの代表作といえば、『シャーロック・ホームズシリーズ』が有名ですよね。

 では、主人公であるシャーロック・ホームズの宿敵の名前はご存知でしょうか。原作を読んだことはなくとも、名前だけ知っているという人もいるかもしれません。そう、モリアーティ教授です。ロンドンの未解決事件はすべてこのモリアーティが関わっているといわれ、ホームズをして『犯罪のナポレオン』と言わしめるほど。

 この魅力的な悪役・モリアーティ教授を主人公にした漫画『憂国のモリアーティ』が、現在ジャンプスクエアにて連載中。最新刊第6巻が、7月4日に発売されました。

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 原作のモリアーティは、細身の老人という設定ですが、こちらのモリアーティは、美しい青年として描かれています。なぜモリアーティが数々の犯罪に手を染め、自らを「犯罪相談役(クライムコンサルタント)」と名乗るようになったのか……その原因を、幼少時代から遡って描いた作品です。

 親を亡くし、孤児院に引き取られたモリアーティ少年は、当時から圧倒的な知識量を誇り、周囲の大人たちからも頼りにされる存在でした。その一方で、不平等な生き方を強いられるこの世界を憎悪しており、特に、平民たちを虐げる貴族を心底憎んでいました。

 そんな少年の野心に目をつけたのは、モリアーティ家の長男アルバート。彼の家に迎え入れられたモリアーティは、そこから偽りの人生をスタートさせていく、というわけです。

 こうした過去の事情から、あくどい貴族にはとことん冷酷なモリアーティ。相手の感情を揺さぶった挙げ句、残忍な方法で殺害します。その一方で仲間や平民たちにはとことん優しい。この二面性がまた、彼の魅力の一つなのです。

 そして、忘れてはならない、原作の主人公シャーロック・ホームズも、もちろん登場します。本作のホームズは、ワイルドな無法者として描かれており、モリアーティを見つけるやいなや、瞬時に彼に興味を持ち、何かにつけ絡んでいきます。5巻の時点では、まだまだモリアーティのほうが上手で、ホームズはその手中で踊らされている状態なのですが、やがてこの関係性も逆転していくと思うのですが、それもまだ謎です。

 5巻は、このホームズが大活躍の巻でした。原作でもおなじみのアイリーン・アドラーが登場し、ホームズを翻弄します。そしてちょうど同じ頃、王室からアイリーンの抹殺を依頼されたモリアーティもまた、彼女に接触を図ろうとするのです。最新刊6巻では、3人が出会い、激突する展開が予想されます。

 ところでこの物語は、ライヘンバッハの滝のシーンからスタートします。原作では、モリアーティはここでホームズとともに滝壺に落ち、転落死を遂げます。つまり、この物語は、「モリアーティがクライムコンサルタントになり、ライヘンバッハの滝に落ちるまで」が描かれているのです。悲劇的な結末が待ち受けているとわかっている分、その過程に何が起きたのか? それが気になります。

 果たして、こちらのモリアーティの運命はどうなるのでしょうか。また、モリアーティには兄と弟がおり、“3人揃ってモリアーティ”という面も持ち合わせています。この3兄弟の絆が、犯罪にどう影響するのかも、要注目です。

文=中村未来(清談社)