「読んでも忘れてしまう」「そのうち読書がつらくなる」…読書あるあるを解決する読書法

生活実用

2018/7/10

『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術(星海社新書)』(印南敦史/講談社)

 学生の頃、ふと背伸びして哲学書を読みたくなった。とりあえずデカルトの『方法序説』を買ってきて毎晩読むようにしたが、内容も文章も難解で、眠気と闘いながら1日に読み進められるのは2ページ程度。こんなにも読書の才能がないのか、と自分に落胆したものである。

 案外多くの人が「読書はしたいけれど、自分は向いていない」と感じているのではないだろうか。活字を読んでいると眠たくなる、頭に内容が入ってこない、一字一字きちんと拾っていくのが苦痛になってくる…。

 世には読書家を豪語する人がいる。書評家の中には1日に数冊を読む人は少なくない。読書量は才能によるものなのか。はたまた、実はコツやワザがあるのか。

『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術(星海社新書)』(印南敦史/講談社)を開いてみた。さっそく冒頭に、読書家になるためのヒントが書いてあった。本をじっくり読んでも忘れてしまう人は、「忘れて当然」だと開き直ってしまえばいい、とある。本書によると、本を読む大多数の人はたいてい真面目で、「記憶しなければならない」「忘れてはいけない」という“不必要な”義務感や使命感をもってしまいがち。しかし、人はもともと忘れやすい生き物である。そして、読書は本来「趣味」であって「修行」ではないはずだ。

 本は1冊の内容の99%は忘れてもいい。「どこに書いてあったか忘れたけれど、あの一言、一文が刺さった」「内容よりも雰囲気が良かった」など、自分にとって重要な1%を拾うことのほうが、機械的に100%を記憶するよりも意義がある、という。

 読書の楽しみを取り戻すためには、自分は「忘れてしまう」または「読むのが遅い」人間であることを、まず受け入れる。そして、1%を拾えばいいという前提で、肩の力を抜いて読み進めるのがよさそうだ。

 読書の考え方、心構えはわかった。では、読書スピードを高めるコツやワザはないのだろうか。本書には、いくつかのヒントが書かれている。

 例えば、本を積極的に破る、書き込むなど、ダイナミックに使いたおす方法。読む中で印象的な部分に線を引く、関連した思いを書き込む、メモを貼り付ける、折り目をつける、ページを破ってノートに貼るなどして、本をアイテム化するということだ。確かに、このようなアクティブな方法だと、本の中の情報が立体化されたり、自分の頭の中に必要な情報がインプットされたりしやすいかもしれない。しかし、本を読む真面目な人は「本を汚すなんて!」と実践しにくいだろう。「本は高尚なものである」という捉え方から「消耗品である」という大胆な価値観の転換が求められそうだ。

「本を汚す」(本書はこの行為を「本への最高の愛情表現」としている)ことがためらわれる人は、「シチュエーション記憶法」を用いるとよいかもしれない。読書と周囲の刺激を結びつけるというものだ。例えば、山手線に乗りながら本を読んでいるとする。本の中に「自分にフィットした」「共感できた」「興奮できた」など覚えておきたい部分を見つけたなら、すぐ周囲の状況に気を払い、「あ、いま○○駅だ」「窓の外に○○があった」「向かいの二人が○○○の話をしていた」などの情報も同時に記憶する。こういった付属情報がフックとなり、本の中で覚えておきたい内容が記憶しやすくなるそうだ。

 一日に数冊読む書評家でもある著者が用いている方法も、きっと効果的だ。まず、「序文」と「目次」を読む。序文には著者の思いが凝縮されており、目次を読めば本の構成がわかる。あとは、自分に必要なページのみ、あるいはそこを中心に読んでいくことで、読書の時間短縮が図れる、という。

 ちなみに、このブックレビューもまず「序文」と「目次」、そしてまとめ的な記述が多い「おわりに」を読み、本の構成を立体的に把握してから本文を読んだ。折り目、赤線、書き込みだらけだ。本書に共感する部分が多い。今後は「シチュエーション記憶法」などのワザも用いながら、さらなる効率化を目指したいと思う次第だ。

文=ルートつつみ