「ファミコン芸人」はいかにして生まれたか? 小学校入学前に母親が死んだ。“ファミコンに育てられた” フジタの生き様

エンタメ

2018/7/19

『ファミコンに育てられた男』(フジタ/双葉社)

 2018年のFIFAワールドカップロシア大会で日本代表は決勝トーナメントに進出したが、ベスト16で敗退したのは非常に残念だった。連日テレビなどで情報が放送され、目に付いたのはこの機とばかりに出演してくる「サッカー芸人」たちである。サッカー芸人とは簡単にいえば、「サッカーに詳しいお笑い芸人」ということ。もちろんこのような芸人は、サッカーに限らず「野球」「相撲」といったスポーツから「ガンダム」のようなジャンルにまで存在する。『ファミコンに育てられた男』(フジタ/双葉社)の著者・フジタ氏も、そのひとり。そう、彼は「ファミコン芸人」なのである。

 ファミコンとは、任天堂のゲーム機「ファミリーコンピュータ」の略。「ファミコン芸人」と聞けば、単に「ファミコンのゲームに詳しい芸人」だと思ってしまうが、フジタ氏の場合はそうではない。タイトル通り、まさに「ファミコンに育てられた」ともいうべき過去を持っているのである。

 彼が小学校に入学する数日前、母親が亡くなった。その後はお手伝いさんが家に来ていたというが、それも氏が小学2年生頃には来なくなった。それと同時に、父親も家に寄り付かなくなる。理由は恋人ができたからだ。以降、フジタ氏はほとんど毎日をひとりで過ごすこととなった。毎週末、父親が置いていく生活費「3万円」で彼はファミコンのゲームソフトを購入。夜遅くまで、ゲームに没頭していたという。こういう環境であったため、ゲームの腕は当然上達する。誰もいない家で黙々とゲームをこなし、多くのことをゲームから教わったというフジタ氏。これが彼の「ファミコンに育てられた」ゆえんである。

 とはいえ、本書は別に辛い過去ばかりが語られているわけではない。氏の記憶に残るゲームを、彼の思い出話とリンクして紹介していくことがその本意である。その中で、ちょっと面白かったエピソードを紹介したい。

【悪魔城ドラキュラ】

 ファミコンのディスクシステムで発売され、多くのハードに移植された人気作。コレクターでもあるフジタ氏は移植作もすべて集めていたが、苦戦したのがX68000というパソコンのバージョン。ある日、ネットオークションで出品されているのを知った氏は、それを競り落とした。「ゆうパック」での送品を依頼して代金を振り込んだが、送られてきたのは普通郵便。クレームのメールを売主に送ったところ、数日後の夜に謎の訪問者が。フジタ氏がドアを開けると、巨漢の外国人が部屋に侵入してきたのである! 身の危険を感じ騒ぐ氏に対し、小銭を投げつけて去っていく侵入者。後で確認してみると、投げつけられた小銭「300円」は、ゆうパック分の差額であった……。

 このように、氏の面白体験と共にゲームの内容が語られていく。自らの「生き様」を晒して笑いを取るのが芸人であるならば、本書は「ファミコンに育てられた」フジタ氏の人生を晒した、まさに「生き様」そのものなのかもしれない。

文=木谷誠