巨大IT企業は個人情報で荒稼ぎしている!? プライバシー保護の未来はどうなる?

ビジネス

2018/7/23

『さよなら、インターネット――GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(武邑光裕/ダイヤモンド社)

 あなたは、新しくウェブサービスのアカウントを作るとき、個人情報に関する規約をきちんと確認しているだろうか。こうしたサービスの規約は、小さい字でびっしりと書かれていて、はなから読ませる気がないものが多い。こちらもはやくサービスを利用したいから、ろくに読まずにチェックマークを入れる。そして、その後わざわざ見返すこともない…というのが実情ではないか。

 私たちは、こうして無料のウェブサービスを利用する代わりに、そのサービスを運営するIT企業に対して、自らの個人情報を無償で提供している。例えば、フェイスブックは、ユーザーの年齢、居住地、交友関係、趣味趣向などのさまざまな個人情報を集め、誰が何を必要としているのかを分析している。それをもとに、広告主から高い広告料をもらい、彼らが求めるターゲットに対してピンポイントに広告を出している。このように、巨大IT企業は、集められた膨大な個人データをまさに“錬金術”のようにお金に換えている。フェイスブックの2017年度の広告収入は、400億ドル(約4.2兆円)にものぼる。

 日本人は、こうしたビジネスのカラクリをなんとなく知りながらも、「個人情報を不当に利用されている!」という意識はあまり持っていない。「自分にはよくわからない」とあまり気にかけていなかったり、「まあ、そういうものだろう」と受け止めている人が多いように思う。先日発覚したフェイスブックによる個人情報流出問題も、ネットを中心に各メディアで報道されながら、国民的な議論にまでは発展しなかった。だが、今年5月にGDPR(一般データ保護規則)を施行したEUは、こうした“データ錬金術”がEU市民の基本的人権を脅かしていると主張し、グーグル、フェイスブック、アップルなどを相手に訴訟を起こしている。プライバシーとビッグデータの間に、今どんな問題が起こっているのだろうか?

 本書『さよなら、インターネット――GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(武邑光裕/ダイヤモンド社)は、ベルリン在住の“メディア美学者”である著者の目線から、GDPRと個人データを取り巻く現状を解説し、これからインターネットに起こる変化を予測している。ここでカギになるのが、GDPRに含まれている「データ・ポータビリティの権利」というものだ。これは、個人が企業などに提供した個人データを自由に取り戻し、それをほかのサービスに乗り換えることができる権利のこと。著者によれば、こうした権利によって、現在巨大IT企業に集約されている個人データは、将来的には個人が主体的に管理していくようになると予想している。すなわち、自分の個人データのうち「どういった情報を、どのサービスに提供するか」ということを、個人が自由に選択できるようになるのだ。それゆえに、これからの企業は、顧客にデータ使用の方法や価値を説明し、それの選択を完全に顧客に委ねながら、与えられた情報に見合うサービスを提供することを目指すようになるという。

 とはいえ、インターネットの未来を正確に予見することはむずかしい。今のように一部のIT企業が個人データを独占したままなのか、個人がスムーズにそれを管理するようになるのか。はたまた、すべてが国有化される…という可能性だってないわけではない。日本でも、そう遠くない未来に、個人データをめぐる大きな選択を迫られる日がくる。そこでどんな意見をもつにしろ、自分の個人データがどう利用されているかは知っておいたほうがいい。まずは、あなたがいちばんよく利用している(いちばん個人情報を提供している)SNSのプライバシーポリシーに目を通してみたらどうだろうか?

文=中川 凌