無月経では強くなれない!「女性アスリート」にまつわる3つの誤解

スポーツ・科学

2018/8/23

『女性アスリートの教科書』
(須永美歌子/主婦の友社)

「生理が止まって1人前」「やせれば強くなれる」の落とし穴

 女性アスリートは、男性アスリートのミニチュア版ではなく、女性の身体的特性に基づいたトレーニングや心身のケアが欠かせない。しかし、アスリートの指導法は男性中心で構築されてきたため、女性アスリートに関しては間違った知識や誤解が世に多くはびこっているのが実情だ。

 科学的根拠にもとづいた女性アスリートの指導法を提唱している、日本体育大学児童スポーツ教育学部教授・須永美歌子先生による『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)から、女性アスリートに対するありがちな3つの「誤解」について、具体的にみてみよう。

誤解1「生理が止まって一人前」
 日本産科婦人科学会と国立スポーツ科学センターの調査によると、無月経の割合は一般の大学生で1.8%だが、日本代表選手レベルでは6.6%、地方大会レベルでも6.1%と非常に高い。女性アスリートは利用可能エネルギー不足、それに伴う体脂肪の減少、トレーニングのしすぎ、心身のストレスなどで女性ホルモンが分泌されにくくなり、月経が止まってしまう「視床下部性無月経」になりやすい傾向がある。

 その割合が多い競技は、体操・新体操、フィギュアスケート、バレエなどの「審美系」が突出していて、選手の16%が無月経。次いで、陸上の中長距離などの「持久系」競技が11.6%。低体重であることが有利に働きがちな競技であるため、選手自身が摂取エネルギーを控えてしまうことが原因と考えられている。

「女性アスリートは月経が止まったほうが強い」と誤解する人もいるが、無月経の選手はトレーニング効果が出にくいことが研究により明らかになっている。その背景には、慢性的なエネルギー不足による低代謝があるため、長時間トレーニングしても必要な筋肉や持久力がつきにくいのではないかと考えられている。

「競技をやめたら再開する」と思われがちだが、実際には復活するまで長い時間がかかる。疲労骨折の頻度も高くなり、なかには卵巣機能が回復せず、妊孕性(妊娠しやすさ)に問題が出てしまうケースもある。

 多くの場合、突然無月経になるのではなく、利用可能エネルギーが減るにつれてまず無排卵となり、それから月経不順になり、最終的に無月経になる。「月経の頻度や量が減っている」段階で改善することが重要。女性だけにあるサインを見逃さないようにしてほしい。

誤解2「体重が1kg増えたら、水も飲まない」
 体重がふえたら「絶食する」「水も飲まない」という女性アスリートは多い。
しかし、成長期であれば体の発達によって体重増加が起こるのは当然のこと。また、同じ体積なら脂肪より筋肉のほうが重いので、トレーニングで筋肉がふえれば体重は増加する。

 さらに女性は月経周期で体重が変動しやすい特性がある。ホルモンの影響で体内の水分量が変化し、体重が2kgくらい増加しても、月経が終われば元に戻る可能性があることを知っておきたい。

誤解3「やせれば速くなる、強くなる、美しくなる」
 女性アスリートは「競技力向上のためには減量が欠かせない」と考えがちだが、そんな神話にしばられた結果、運動量が多いにもかかわらず十分な食事をとらない、もしくは食べているけれども運動がハードすぎてエネルギー不足になってしまうことがある。

 この状態が続くと、身体の健全な発達や機能、精神面への悪影響をもたらし、スポーツパフォーマンスを低下させる。

 成人であればBMIで18.5未満、未成年であれば標準体重の85%未満であれば要注意と考えたい。

※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
※標準体重=身長(m)×身長(m)×22

 女性アスリートが強くなる、能力を十分に発揮するためには「女性として健康の体」であることが欠かせない。

 オリンピック選手やプロ選手だけではなく、部活を始めてがんばろうとしている小中学生だって立派な女性アスリート。特に体が未発達な成長期には、専門的な知識を持った指導者や、子どもの変化に気づくことができる保護者の存在が重要といえるだろう。

部活女子からトップ選手まで
指導者・保護者が知っておきたい40のこと

 女性アスリートのスポーツのしすぎによる「無月経」「貧血」「摂食障害」「エネルギー不足」「将来の骨粗しょう症」などの身体的トラブルを防ぎ、運動パフォーマンスを揚げるためのトレーニング方法や栄養、月経コントロールなどの知識を、図解でわかりやすく解説している。もっと力を伸ばしたい10代のスポーツ選手や部活に励む女子中学生・高校生、その指導者や保護者は必読の一冊。