アラサー女性のバイブル! 風俗嬢『ちひろ』が放った、珠玉の名言

マンガ

更新日:2018/9/3

『ちひろさん』(安田弘之/秋田書店)

 Eleganceイブで連載中の漫画『ちひろさん』が、7月26日発売の9月号で第一部完結を迎えました。最終ページには「しばらくの間、お休みをいただきます」とあり、第二部スタートの発表が早くも待ち遠しい限りです。

あらすじ
【海辺のお弁当屋で働くちひろは、元風俗嬢で、町の有名人。7月発売の最新刊8巻では「こんなふうに生きたい」とちひろが憧れている女性が、行方不明に。やがてちひろは、衝撃の事実を知ることになります。そのほか、おなじみのメンバーが登場する、賑やかな一冊。】

 ご存じの方も多いと思いますが、じつはこの作品、『ちひろ』(安田弘之/秋田書店)という漫画の続編です。前作は、風俗嬢時代のちひろが主人公です。“ちひろさん”とは違い、刺々しさや寂しさが入り混じった、若かりし頃のちひろが描かれています。

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【ちひろは、ヘルスで働く風俗嬢。美人で愛嬌たっぷりの彼女は、もちろん人気No.1。彼女に会うため、いろんな客が訪れます。しかし、客前で見せる笑顔は彼女のほんの一面に過ぎません。愛情深いようで冷たく、優しいように見えて、怒ると容赦なく暴力を振るうちひろ。予測不能な彼女に、周囲の人々はなぜか魅せられていき……。】

『ちひろ』は今から20年近く前の作品ですが、そこに描かれているのは、普遍的な女性の強さや脆さ。ちひろが発する言葉が、アラサーの自分に妙にしっくりきて、まるで憧れの女性の日常をこっそり覗いているような気さえするのです。

 そこで前作『ちひろ』より、心に響く名言集をご紹介したいと思います。

“「博愛」「誠意」「優しさ」「真面目」「健気」「移り気」「無責任」「八方美人」「優柔不断」 本当の自分はどこにいるのかなんて考えるのはやめた 私の心はきっとどこにもいないから ものすごいウソつきだから”

「あなたは、◯◯タイプだよね」なんて言われると、自分をわかってもらえたようで、つい安心してしまう女性は多いはず。しかしちひろは、自分がどういう人間なのか分析しません。健気であり、無責任でもあり、八方美人でもあり、そのどれでもないのが自分。そのときどきによって、変わっていく自分の感情を認めてあげるのが、ちひろの強さなのです。

“そうだよ 私はつながない だってあたしもつながれるの嫌いだもん”
“つなごうとする女の魔力が強いほど それに疲れる男がこっそり逃げる”
“そうやって逃げてくる男達を 両手に持てるだけ かき集めてるんだから”

 新人にお客を持っていかれ、指名率が下がったちひろですが、焦ることはありません。あえて繋ぎ止めないことで、そのうち必ず自分のもとに戻ってくることを理解しているからです。事実、一度は離れた客たちも、しばらくすると、こっそり、ちひろのもとに戻ってきます。魔性の女は、余裕がないとなれません。

“あたしだってこう見えても やるからには一流の 射精職人を目指してるんだから”

 やりたい放題に見えるちひろですが、仕事に対するプロ意識は人一倍高かったりします。No.1ヘルス嬢として、仕事に手を抜くことはありません。ただ綺麗で面白いだけでなく、プロとしてのプライドを持つちひろだからこそ、みんなが夢中になるのです。

“幸せな時に限って 思いつく困った悪戯(いたずら)”
“止められないな だって裏切りたいんだもん ドキドキしちゃってるもん”
“大切なものを失くす痛みで 私の心は息を吹き返す”

 幸せを感じた瞬間が、ちひろがすべてを捨てることを決意する瞬間。居心地のいい環境を、あっさり手放し、別の場所へと旅立っていくのです。人や仕事を大切にする一方で、執着することはありません。その潔さに憧れます。

 ちひろのように、自由にのびのびと人との関わりを楽しんだり、孤独を味わったりすることができたら、素敵だなぁと思うのです。

 と、ここまで魅力的で強い面ばかりを紹介しましたが、店で出会った客と恋愛関係になった挙げ句、殴られて捨てられたり、知人にお金を持ち逃げされたりと、しばしば痛い目にも遭います。そこがまた読者の共感を生むポイントなんですよね。

『ちひろ』を読んだ後に続編『ちひろさん』を読むと、さらに成長した彼女を見ることができるのでオススメです。もちろん、逆から読むのもアリ。

 心に不安を抱くアラサー女性は必読。きっと、生きるためのヒントをもらえるはずです。

文=島野美穂(清談社)