たった20人の会社の新卒採用に12,000人が応募!? 中小企業で働く魅力の伝え方

ビジネス

2018/9/4

『日本一学生が集まる中小企業の秘密』(近藤悦康/徳間書店)

 2018年現在、就職、特に新卒採用においては空前の売り手市場だ。2019年3月卒業予定の大学生に対する求人倍率は1.88倍と、2012年の1.23倍に比較して、0.65ポイントも高い。その中でも従業員300人未満の中小企業に限れば求人倍率は9.91倍、ひとりの学生に対し10社が内定を出すというモテぶりだ。

 学生側にはよい時代だが、中小企業側は人集めに苦労している。そんな中、『日本一学生が集まる中小企業の秘密』(近藤悦康/徳間書店)の著者が経営する会社は、創業5年目で社員が20名という規模にもかかわらず、2018年卒の新卒採用活動では年間で1万2000人の応募があった(うち5名採用)。中小企業はどのような採用活動を行うべきだろうか。

 まず、中小企業の経営者は応募してきた学生に「大手企業に入るよりもわが社に入ったほうがいい」と胸を張って言えているだろうか。自信をもってそう言えない原因は、現在の規模や労働環境で大手と比較しているためだ。

 小さな企業が学生たちと接する際は、将来こうありたいと思っている未来の自社の姿を訴えるべきと著者は提案している。「今は小さな会社だが、将来はこんな企業に成長させたいので、一緒に目指さないか。わくわくするぞ」というような未来志向の説得を行うこと。わくわくは伝染する。そのためには、自社の将来イメージをしっかりと持つことが大切で、それは人材採用だけに限らず、会社を経営するうえでもとても大切なことである。

 学生を集めるにはどうしたらよいだろうか。学生たちの企業を探す方法は多様化しており、就職サイトの効果は下がってきている。また、就職サイトの求人広告だけでなく、合同説明会やイベント、人材紹介、スカウトなど、いずれのアプローチにおいても費用はかかる。

 そこで著者が強く勧めるのが「口コミ」というアプローチだ。口コミは自社にマッチした人材を集めやすい。そして、口コミをきっかけにしてエントリーした学生は、他のきっかけによる学生よりも会社説明会への着席率が高いという特徴がある。

 この口コミ効果を狙うためにも、インターンシップや会社説明会を行うときには、参加した学生が「来てよかった」「楽しかった」「勉強になった」などと、なにかしら好印象を持ち帰ってもらえるだけの企画を立てなければならない。

 この企画を立てるところが頑張りどころだが、口コミはいったん拡散を始めれば、無料で、しかも年次を超えて、学生たちに拡散していく。結果、広告費は削減しているのにエントリーが増えるという現象が起こるのだ。

 会社説明会は、社長や社員の一方的なプレゼンでは学生たちの印象に残らない。なぜなら、学生たちが「受動的な脳」の状態で参加しているためだ。これを「能動的な脳」で参加してもらうために、学生たちが自ら考えて行動しなければならない状況を用意する、つまり参加型のワークショップを行うこともおすすめだ。

 例えば、学生に、6人前後のグループ単位で自分たちの会社の強みや魅力についてまとめさせ、プレゼンしてもらう。このような状況を用意することで、学生たちは頭をフル回転させて会社を理解しようとする。グループでディスカッションしながらプレゼンの準備を行うという体験は、思いのほか楽しいもの。結果、学生たちは会社をより深く理解し、しかも「楽しかった」「充実した」「ユニークな説明会だった」などと口コミにつながるのである。

 以上、ほんの一例であるが、採用テクニックを紹介した。人材採用で人を集めるには、その企業が魅力的であることが重要であり、その魅力が伝われば中小でも関係なく人は集まる、そのための施策が本書の神髄である。企業の魅力は通りいっぺんではない。そして、何を魅力と思うかは人ぞれぞれである。

実は新卒採用プロジェクトというのは、単に優秀な新卒学生を採用することだけを目的としているわけではありません。新卒採用活動を通して、会社組織全体をイノベートすることを目的としているのです。

 著者が自社で行っている取り組みは、会社の経営はこうあってほしいという理想形のひとつだろう。だから、経営や人事にかかわっていなくても「会社」や「はたらくこと」にもやもやしたり、逆に会社組織をもっとよくしたいと奮闘していたり、あるいは転職を考えている人にもヒントになりそうな1冊である。

文=高橋輝実