素朴なギモン、「副業」って個人と会社にとって何かメリットある?

ビジネス

2018/9/14

『マルチプル・ワーカー 「複業」の時代 働き方の新たな選択肢』(山田英夫/三笠書房)

 企業の“副業解禁”が相次いでいる。ロート製薬やソフトバンクなどの先進的な考え方を持つ企業を皮切りに、伝統的な大企業でも解禁が始まっている。だが、まだまだ就業規則に「副業禁止」の文字が残っている企業や、明確に禁止されていなくとも「本業がおろそかになってしまうのでは?」と批判的な目で見られる企業はたくさんあるだろう。

 では、副業を解禁すると、実際にはどのような変化が起こるのだろうか。本書『マルチプル・ワーカー 「複業」の時代 働き方の新たな選択肢』(山田英夫/三笠書房)は、すでに副業を解禁している企業の事例を分析しながら、それが個人と企業にどのようなメリットを与えるのか、それを踏まえてどのように行動すべきかを提言している。

■「副業」ではなく“複”業の時代

 本書は、現在に一般的に使われている「副業」ではなく、タイトルにもある「複業」という概念を重視している。「副業」という言葉には、「本業」との明確な主従関係がある。だが、著者のいう「複業」は、本業との主従関係がなく、収入源を増やすことで高い収入を得ることができ、自身のケイパビリティも高められる仕事を指している。ケイパビリティとは、「何かを遂行することができる能力」のことで、著者はそれを「スキル(=自分自身の能力)」と「ネットワーク(=自分が動員できる外部リソース)」に大別している。複業でスキルやネットワークが得られれば、それを本業にも生かすことができるだろう。

■“複業”は個人でコントロールできる

 複業のメリットとしてよく挙げられるのは、単純に収入がアップすることや、収入源を分散させることで将来のリスクを減らせることだ。それに加えて、本書では業務量がコントロールできることのメリットを語っている。複業は、本業や起業に比べると、圧倒的に自分主体の采配で業務量を決めることができる要素が大きい。すなわち、育児や介護で忙しいときには業務を減らしたり、一時的に辞めたりできる上に、定年などによって強制的に辞めさせられることもないのだ。

■個人のメリットが企業に還元される

 著者によれば、企業が副業を解禁するメリットは、製造業よりもサービス業、サービス業の中でもIT、ソフト、サービス関係の業種のほうが大きいという。なぜなら、そうした業種では、副業によって生み出された事業が本業とつながりやすいからだ。例えば、リクルートは、社員が起こした企業とリクルートとの間に受託・委託関係を結び、シナジー効果を得ている。また、先ほども述べたように、複業をしている社員は、新たなスキルやネットワークを獲得しているから、それを社内の仕事に還元してくれる。こうした人材やネットワークは、新たな分野に参入する際などに、とても頼りになるはずだ。

 これからも多くの企業が“解禁”に踏み出すだろう。だが、著者が懸念しているのは、「解禁してから考えては、成功しない」ということ。個人は“複業をすること”自体を目的にするのではなく、「(本業以外で)何がやりたいのか?」をいつも考え、そのための準備をしておくことが大切だ。人事や経営者の側も、ただ「副業を認める」だけでは不十分で、それを会社のシステムとしてうまく循環させていくために社風や制度を整えなくてはならない。本書は、このように個人と企業、双方の視点から「副業」に対する考え方を明快に整理してくれる。今「副業」を意識している人には、必読の書であろう。

文=中川 凌