ねこと家族になりたいあなたにオススメ! ほっこりホロリ『猫ニャッ記』

マンガ

更新日:2021/1/8

『猫ニャッ記』(佐久間薫/文藝春秋)

 犬も歩けば猫本に当たる――ほどに、書店の棚は猫に関する本やコミックでギッシリ。そんなギチギチの本棚の猫コーナーに、書店で働くマンガ家・佐久間薫さんが自らの体験をつづったコミックエッセイ『猫ニャッ記』(文藝春秋)が仲間入りしました。

 佐久間さん(さくさん)は、同じく書店員の夫・大作さんと、2匹の保護猫・推定13歳の黒丸と推定12歳半の白丸(ともにオス)と暮らす、2人2匹のベテラン猫家族。そんな一家に新たな仔猫・茶丸(当時生後1ヶ月ほど)が加わるところからニャッ記は始まります。

 「ウチの猫カワイイコミック」は世に多けれど、『猫ニャッ記』が他と大きく違うのは、「すでに猫と暮らしている人が、新たに猫を迎え入れるときのあれこれ」がじっくり描かれていること。

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 茶丸は生まれたての赤ちゃん。さくさんたちにとっても、そんなに小さな仔猫の世話は初めてで、新たな発見とビックリがたくさん。

 おしっこやウンチすら自分でできない赤ちゃん猫の「そこ」を刺激してあげて排泄させてあげたり、ミルクを昼夜問わずこまめにあげる必要があったり。トイレのしつけも当然だし、先輩猫たちとの初対面の前には、ワクチン接種も必要と、本当に目が離せないのです。

 そんな茶丸と黒丸&白丸とのファースト・コンタクトをさくさん夫婦が実況する第3話「ご対面!」は、スリリング&とってもほっこり。

 ようやく茶丸が家族に馴染み始めた頃、さらに2匹の保護猫・熊吉(オス)と一美(メス)も預かることになります。

 カワイイし、猫にしあわせになってほしいと思うから預かってしまうけれども、さまざまな問題も発生します。もともと猫アレルギー気味だったのを騙し騙しやってきた大作さんは、猫の頭数が増えたことで、本格的に猫アレルギーが再発。末っ子の熊吉は、突然の病が発症……。

 カワイイだけでは乗り越えられない、お金や家族間の関係性などがさくさん一家の前に立ちはだかるのです。

 それでも、周囲の人たちの協力を得て問題をクリアし、さくさんたちは家族として互いに信頼しあえる関係を築いていくのですが……ことの詳細は本書で読んでみてください。

 また、本書は「保護猫」についても考えさせられます。野良猫が産み落とした仔猫、病気や虐待……様々な理由で人間に捨てられた成猫、飼い主と死別した老猫……保護猫という存在をい生み出すのは人間であり、私たちが問われているのは、生命との向き合い方です。

 猫に迎え入れるということは、ひとつの命の生涯に責任を持つということ。家族として愛情を注ぎ、信頼関係を築けるからこそ、猫たちは「信じられないほどかわいい姿」を見せてくれるのではないでしょうか?

 猫を家族にしたいと考えている方も、今、猫と暮らしている方にも、『猫ニャッ記』はオススメです。さくさんの家族が教えてくれます。「猫との暮らし」にある笑顔も不安も涙も、みんなひっくるめて「しあわせ」ニャんだと。

文=水陶マコト

『猫ニャッ記』【連載】はこちら>>第1回「甥っ子、子猫発見!」