ジャニーズの元看板アイドルのその後…

エンタメ

2018/9/26

『田原俊彦論』(岡野誠/青弓社)

 田原俊彦。80年代を席巻したジャニーズ事務所の元看板アイドルを今、どれだけの人が知っているだろうか。今でこそ天下のジャニーズと言われるが、80年代はまだそこまで力がなかった。その礎を作ったひとりが、田原俊彦であったのは間違いない。その田原俊彦を、二十数年間追い続け、評伝にまとめたのが岡野誠著『田原俊彦論』(青弓社)だ。

 しかし、ただの評伝ではない。田原はジャニーズ事務所から独立した90年代に、「ビッグ発言」と呼ばれる問題を起こし、マスコミから総スカンを食らい、いわゆる干される状態に陥る。なぜ、あんなに人気だった田原が、まったくメディアに出ないほど干されることになったのか。岡野は疑問を持つ。そして、ひとつの結論にいたる。それは、「様々な誤解が田原がいまだに干されている原因となっている」ということだ。

 そこで、岡野は、動き出す。田原再生のために。まず、ライターである自分という立場を最大限利用することにしたのだ。そして田原にインタビューする機会を2度も得る。その場で、全ての疑問を田原にぶつけ、再起を促す。そして、言われた田原のほうは、その情熱にほだされて、自ら動き出していくのだ。

 この本を読んで、僕はひとつのノンフィクションの傑作を思い浮かべていた。そう、沢木耕太郎の『一瞬の夏』である。沢木は、ボクサー・カシアス内藤に深く入り込み、再起を促し、復活へと導いていく。その様は、まるで岡野誠と田原俊彦の関係そのものだ。

 沢木とカシアス内藤の話は完結しているが、岡野と田原の関係はこれからも続く。そしてそれを僕らは直接、見届けることができる。現実の世界で。こんなスリリングなことがあるだろうか。この本を読んだら最後、すでに僕らも巻き込まれているのである。

文=神田桂一