「恋人が欲しいけど恋って面倒…」恋愛できないのは脳内ホルモンが原因だった

恋愛・結婚

公開日:2018/9/30

『すごい恋愛ホルモン 誰もが持っている脳内物質を100%使いこなす』(大嶋信頼/青春出版社)

 厚生労働省が行った最新の出生動向基本調査によれば、異性の交際相手をもたない未婚者は男性で7割、女性で6割となり、その割合は年々上昇しているという。かくいう筆者(アラフォー・女性)も、この4年ほど特定のパートナーがいない。その理由として、「出会いがない」という外的な要因ばかりではなく、「恋愛に対して意欲がわかない」という自分自身の内的な要因がとても大きいことには薄々気づいていた。

 しかし、「面倒くさいし、もう恋愛なんてしなくてもいいや」と投げているわりに、「恋人が欲しい…かもしれない」という焦りに似た衝動や寂しさにもふと襲われることがある。この矛盾した状況にヒントを与えてくれそうな一書が『すごい恋愛ホルモン 誰もが持っている脳内物質を100%使いこなす』(大嶋信頼/青春出版社)だ。

 本書によると、人体ではたらく数あるホルモンのうち、「恋のホルモン」を活発に分泌させることができれば、素敵な恋愛を引き寄せることができるのだという。また、いつもダメ男に引っかかってしまい、そのせいでなかなか新しい恋に踏み出せないなどの悩みへの答えも、ホルモンの作用によって解き明かされている。

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 本書で恋愛に関係があるとされているホルモンは次の5つである。

・エンドルフィン
苦痛を感じたときにその苦痛を麻痺させる脳内麻薬の一種。たとえば、オラオラ系の男性に惹かれたり、ケンカばかりのひどい男性の元に戻ってしまうのは、このエンドルフィンの麻薬効果のせい。

・ドーパミン
快楽や多幸感、意欲、学習に関わるホルモン。想像力の源であり、たとえば芸能人など実際にはよく知らない相手に「胸キュン」するときに分泌される。

・オキシトシン
女性が妊娠・出産時に分泌される愛情や信頼に関わるホルモン。「この人のために何かしてあげたい」「母性本能をくすぐられる」状態のときに分泌される。

・テストステロン
男性らしさを司ると同時に、嫉妬心を引き起こすホルモンで、発作的に攻撃的な人格を作ることも。あまり興味がない男性に対してもこのホルモンがはたらいて嫉妬心が起こると「自分に振り向かせたい」と思ってしまう。

・フェニルエチルアミン
恋のホルモン。自分と遺伝子がマッチする相手に出会ったと感じると分泌される。抗うつ薬にも使われている成分で、ときめきを感じたり、肌がきれいになる作用も。

 これらの中で、「恋のホルモン」と命名されているフェニルエチルアミンは、誰かを「素敵」「かっこいい!」と思うだけで分泌されるもので、このホルモンを出し続けることで美しく輝くことができ、その姿を見て、魅力的な相手がやって来るのだという。最初から一発本命狙いではなく、自分にふさわしい相手を引き寄せるための準備として、気楽に次々と恋をしてこのホルモンの分泌を促していこうというのが本書の大きな趣旨のひとつである。

 また、本書の特徴として、恋愛ハウツーやテクニック集ではなく、あくまで自分自身と向き合うための恋愛本であるというところが挙げられる。気になる相手に恋のホルモンを分泌させるメールテクニックの項では、実際はその過程を「ゲーム」ととらえることによって、自分自身の意識をそらすことが目的になっている。

 自分の脳内に恋のホルモンが分泌されているときは、ホルモンのおかげで幸せを強く感じることが多くなる。しかし、人間の心には恒常性を保つはたらきがあり、幸せな気分を中和させるために「孤独を感じるホルモン」を分泌する。気になる相手とメッセージのやりとりをしている間にふとネガティブな気持ちに襲われ、おかしな追撃メッセージを送ってしまったり、LINEの既読無視を気に病んでしまったりするのはそうした「孤独の発作」のせいで破壊的な人格になってしまっている状態なのだ。相手のホルモンをわざわざ分泌させるよりも、まず自分が孤独の発作にとらわれて破壊的にならなければ、自然と相手との関係もうまくいくというのである。

 著者の大嶋信頼氏は、トラウマや依存症の治療に長年携わってきた心理カウンセラーだ。本書は、大嶋氏の経験談もまじえて軽妙な語り口で進んでいく。その中で、恋愛に踏み出せない人の心理状態を解きほぐし、前に進ませるためのカウンセリングテクニックが随所に詰め込まれていると感じた。恋に臆病になっている人にとって、恋愛についてのマインドセットを変えるための一視点をもたらしてくれるだろう。

文=本宮丈子