読めばおなかがすいて、ベトナム旅行したくなる! 美麗な絵と異国情緒あふれるマンガ『リトル・ロータス』

マンガ

公開日:2018/10/7

『リトル・ロータス』(西浦キオ/LINE Digital Frontier)

 とにかく絵がきれいでごはんがおいしそう、と話題のLINEマンガのオリジナル作品『リトル・ロータス』(西浦キオ/LINE Digital Frontier)。祖父から突如知らされた隠し子、ならぬ隠し孫に会うためベトナムに渡った大学生の桜井俊介。なりゆきと勢いで、就職内定を蹴ってベトナムでセンとともに料理店を開業することになるという、異国情緒あふれるグルメマンガだ。

(C)Kio Nishiura / LINE

 祖父の願いは、両親を事故で亡くした孫娘を日本で引き取りたいというもの。最初は、卒業旅行の代金を肩代わりしてもらえるなら、と足を骨折した祖父にかわり、気軽な気持ちでベトナムに渡った俊介。だが、スリに財布もパスポートも奪われ途方にくれていたところを、助けてくれたのが当の孫娘・セン(美少女!)だった。一度も会いに来たことのない祖父に「捨てられた」とわだかまりを抱いているセンは来日を拒否。そんな彼女の“本当の家族”になるため、ベトナムに残ることを決めた俊介は、心優しいがなかなかに無鉄砲である。

 だが、損得勘定抜きに動く彼のまっすぐさがセンの孤独を癒してくれたのは事実だし、人生をおもしろく転がしてくれるのはこういう直感と決断なのだよなあ、と俊介の姿にわくわくさせられもする。

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 とはいえ、俊介にだってなんの目算もないわけではない。センの亡き両親が残したベトナム料理店を再開させたいと思ったのは、俊介自身、料理が得意で、食品開発の仕事に就くはずだったからだ。食への好奇心、優れた味覚と分析能力。ベトナムでベトナム料理店を営むというハードルの高さを超えられるのは、俊介の技能あってこそ。屋台のフォーやおかゆ、フルーツのチェー(伝統的な甘味飲料)など、センとともにさまざまな料理を味わいながら、開店準備を進めていく。

(C)Kio Nishiura / LINE

(C)Kio Nishiura / LINE

(C)Kio Nishiura / LINE

 とはいえ一朝一夕にいくはずもなく。ハノイとホーチミンでは同じフォーでも味付けがちがうことも知らなかった俊介の料理が、ホーチミン市民の舌を満足させるのは簡単ではない。考えてみれば、日本でだって地域によって味噌汁をはじめ、料理の味付けはまるで違う。気候や風土にも影響される食は、暮らしの基本であるとともに、土地の歴史と文化にも絡む。センと家族になるということは、ベトナム(ホーチミン)を知ることにもつながっていく。

 日本でも、とくに女性に人気のベトナム料理。だが、これまでその文化を特化して描く作品は多くなかった。読めばおなかがすいて、ベトナムを旅してみたくなる本作。家族というにはまだ少し距離のある、俊介とセンの関係にも注目しつつ、すみずみまで味わってみてほしい。

文=立花もも