「あそこ、昔一家心中があった幽霊屋敷だろ?」サスペンス色入り混じるダークラブコメ『恋と心臓』

アニメ・マンガ

2018/10/22

『恋と心臓』(海道ちとせ/白泉社)

 母の指令でイケメンに成長した幼なじみと二人暮らしすることに!? ……というのは同居ラブコメの定番だけど、マンガPark上位常連の『恋と心臓』(海道ちとせ/白泉社)はちょっと様子が違う。このイケメンがいろいろあやしすぎるのだ。というかなんか、怖い。

 実家の一軒家に住むひとり暮らしの女子大生・羊(よう)が彼氏の浮気発覚で修羅場ったある日、道で偶然イケメンとぶつかってしまう。その後、鍵をなくしたことに気づき途方に暮れていると、家のなかから現れたのはくだんのイケメン・春馬。なんと彼、羊は覚えていないが隣に住んでいた幼なじみ(アメリカ国籍)で、アメリカで働く羊の母にすすめられ、日本へ留学するにあたって同居してはどうかと提案されたという。

 話がうますぎるが、ラブコメとしてはまあ、なくはない展開だ。ただし「あそこ、昔一家心中があった幽霊屋敷だろ?」という羊の親友・冬弥による情報がなければ、の話。

 考えてみればおかしいことだらけなのである。1年付き合った彼氏の二股が、いきなり見知らぬ女からのメッセージで発覚したその日に、春馬は現れた。とたんにストーカーの気配を感じるようになり、SNS上のいやがらせもスタート。さらにこのストーカーをけしかけた謎の存在も浮上する。平穏な日常はすべて、春馬がやってきてから壊れはじめているのだ。

 困っていれば助けてくれるし、いつだって優しく笑顔で「昔から大好き」とまで言う。完璧すぎる春馬に胸きゅんするのは読者も羊も同じだが、笑顔が整いすぎているゆえにどこかうさんくささも感じられる。母親との連絡はつかないし、本当に春馬は羊の幼なじみなのか? 日本にやってきた目的は? そして時折フラッシュバックする、羊のおそろしげな記憶の正体とは――? サスペンスまじりの展開にぞわぞわしながら、ページを繰る手が止められない。

 女子は愛するより愛されるほうがいい、なんて言葉はあるが、度が過ぎた愛情はときどき人を追い詰める。自分だけのものにしたいと願うあまり自分以外の他者を排除したり、裏切りと感じられるような行動があれば徹底して許さなかったり。「(羊と、恋人なんて)そんな軽い関係じゃ満足できない」というやや偏執的な一面を見せはじめる春馬は、果たしてこの先どんな行動に出るのか。自身の恋心に気づかないまま、春馬に疑いのまなざしを向ける冬弥に春馬の魔の手がのびないか非常に心配になりつつ、2巻の発売を待ちたい。

文=立花もも