お宅の猫は何タイプ? 猫の行動専門家が伝えたい“猫を幸せにする飼い方”

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更新日:2021/1/8

『ジャクソン・ギャラクシーの猫を幸せにする飼い方』(ジャクソン・ギャラクシー、ミケル・デルガード:著/プレシ南日子:訳/エクスナレッジ)

 犬にはドッグトレーナーがいるが、猫をしつけるキャットトレーナーはいない。それは、猫という動物は気ままであり、しつけることが難しいと思われているからだ。しかし、アメリカには飼い主と猫の関係をより良いものにしていくために、猫の行動専門家がいる。そのひとりが、ジャクソン・ギャラクシー氏だ。

 ジャクソンは動物専門チャンネル「アニマルプラネット」の人気番組「猫ヘルパー~猫のしつけ教えます〜」で、粗相や噛みつきといった猫の問題行動を解決したり、猫が喜ぶ遊び方を伝授したりしている。実際に飼い主宅へ出向き、動物保護施設での経験を活かしながら猫との関わり方や向き合い方を教える彼の着眼点はいつも斬新だ。

 そんな彼が著した『ジャクソン・ギャラクシーの猫を幸せにする飼い方』(ジャクソン・ギャラクシー、ミケル・デルガード:著/プレシ南日子:訳/エクスナレッジ)は、そういった経験と知識の集大成ともいえる作品。猫のルーツや知識、ジャクソン氏流の猫を幸せにする飼い方が収録されており、愛猫家必読の1冊だ。

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 猫は犬のようにしつけることは難しい。しかし、飼い主が猫の気持ちを汲み取りながら、適切な配慮を行っていけば、共に楽しく暮らしていくことはできるのだ。

■心を理解するには“猫の暗号”を読み解こう

「飼う予定はないけれど、猫が好き」そんな想いを抱えている猫好きさんはぜひ、猫の暗号を理解できるようになってみよう。

 猫は声だけでなく、耳や目、しっぽ、ひげ、姿勢をフルに活用して、人間に自分の気持ちを訴えかけてくれている。こうした猫の感情表現を知ることは絆を深め、信頼関係を育むことに繋がっていく。

 例えば、猫が嫌がっているサインを知っておけば、近所の野良猫や猫カフェの子たちにも嫌われてしまう心配がなくなる。猫は何の前触れもなく突然、攻撃してくると思われがちだが、大半は攻撃をする前に警告を出している。歩き去る、背を向ける、しっぽを鞭のように振る、背中をビクっとさせる…これらの行動は実は全て、猫が嫌がっているサイン。「これ以上構うなら、攻撃するよ」という気持ちが隠されているので、猫の感情を尊重していく必要がある。

 猫は感情表現が分かりにくいといわれることもあるが、本当は全身を使って、ストレートに気持ちを伝えてくれている。猫と仲良くなれるかどうかは、猫が発する暗号をいかに読み解くことができるかにかかっているのだ。

■猫を飼うなら知っておきたい“猫の3タイプ”とは?

 猫人気が高まっている近年は、家に猫を迎えたいと考えている方も多いだろう。しかし、猫を迎える前に、快適な生活環境を与えられるかどうか考えてみてほしい。

 怪我や事故、病気などを防ぐため、近年は猫の室内飼いが主流になっている。そこで重要なのは、猫が自信を持てる場所を家の中に設けてあげることだ。

 猫は縄張りを重視する動物で、空間を立体的にとらえている。床から天井までを眺め、遊びたいときやひとりになりたいときはどこへ行けばよいのかを考え、自分らしくいられる場所で自信を得る。家の中で、こうした揺るぎない自信が持てれば、粗相などの問題行動も起こりにくくなる。そのため、飼い主は迎える猫に自信を持たせられるような環境作りをしていく必要があるのだ。

 ジャクソン氏によれば、猫のタイプは主に3つに分かれるという。

ブッシュ猫…ローテーブルの下や植物の影にいて、4つの足を全てしっかり地面につけていることを好む
ツリー猫…床よりも高いところを好み、下の様子を窺うことで自信を持つ
ビーチ猫…地面に4つの足をつけていることを好むが、ブッシュ猫とは違い、堂々と部屋の中心にいる

 猫のタイプを見分けるときは、猫が好んでその場所にいるのか、それとも隠れざるを得ない状況に陥っているのかを見極める必要もある。そのために、猫の各パーツを見ながら暗号を読み解いてみよう。

 猫も人間と同じで、自信が持てないと強いストレスを感じてしまう。家に迎えるということは家族の一員になることであるからこそ、飼い主は安心して暮らせる縄張りを提供していこう。

■「うちの猫は遊ばない」は誤解!

 猫は狩りをする動物であるため、普段の生活の中でおもちゃを使って狩猟本能を満たしてあげることが大切だ。だが、猫を飼っている方の中には「うちの猫はじゃれないから、おもちゃはいらない」と考えている人もいる。これは、実は大きな間違いだそう。なぜなら、猫にとっての遊びは必ずしも、活発に動き回ることだけではないからである。

 猫は動き続けていなくても、エネルギーを消費している。例えば、天井に止まった虫をじっと見ていたり、獲物に忍び寄ったりして心身を集中させるのも遊びの一環だ。こうした行動は猫とって、獲物に飛びかかって仕留めるのと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なことなのだ。

 そこで飼い主は、こうした事実を踏まえ、飼い猫の好奇心を惹くことができるおもちゃを選ぶ必要がある。猫のおもちゃは主に「一緒に遊ぶ双方的おもちゃ」「離れて遊ぶおもちゃ」「自動で動くおもちゃ」「レーザーポインター」の4タイプに分けられるため、飼い猫がどんなものでどうエネルギーを消費して遊ぶことを好むのかチェックしていこう。

 完全室内飼いの猫は安全でいられる反面、刺激が不足していることも多い。遊び不足はストレスの原因にもなるので、満足できる遊び方やおもちゃを見つけ出していきたい。

 猫が楽しい部屋の作り方やトイレ・爪とぎ問題への対処法、内弁慶な猫の臆病克服法までもがぎゅっとまとめられた本書があれば、猫と心を通じ合わせることも夢ではない。「すべての猫が自信を持って、幸せに暮らせるように」をモットーにするジャクソンの問題解決法は、多くの猫と飼い主の笑顔を生み出していくだろう。

文=古川諭香