『自分の顔が嫌いですか?』――自殺に至るケースも…わずかな欠点も気になってしまう“醜形恐怖”

健康・美容

2018/11/17

『自分の顔が嫌いですか?』(町沢静夫/ビジネス社)

「真の美人は内面が美しい人である」という言葉はよく目にするフレーズだ。しかし、本当にそうなのだろうかと疑問を抱いている人も多いのではないだろうか。外見の美しさは内面の美しさよりも瞬時に判断しやすい。そのため、人は少しでも美しい見た目になりたいと強く願ってしまうものだ。現代はSNS上で見知らぬ人に顔を見られる機会が増えているため、特にそうした思いが強くなりがちである。

 しかし、時に心の病気につながってしまうこともある。その代表例が「醜形恐怖」だ。醜形恐怖とは、自分の外見・容姿について、他人には特に気にならないわずかな欠点にまで、とらわれてしまう精神疾患のこと。そんな醜形恐怖の症例や心のゆがみを丁寧に教えてくれるのが『自分の顔が嫌いですか?』(町沢静夫/ビジネス社)だ。

■醜形恐怖で苦しむ患者の多くは美形

 醜形恐怖は正式には「身体醜形恐怖障害」と呼ばれ、患者は自分の「皮膚」や「体毛」「鼻」「歯」「目」に強いこだわりを持つ。日本ではとりわけ、「目の周辺」や「鼻」を気にし、二重まぶたであることを重視したり、高い鼻に憧れたりする人が多いのだそう。

 だが、この病気に悩んでいる人の多くは美形であり、他者から見れば悩む要素などなさそうに見える顔を持っていることも少なくない。そのため、当事者は他人に悩みをなかなか理解してもらいにくく、いくら外見を褒められても、自分のことを美しいと思えず、苦しい気持ちを抱えてしまう。醜形恐怖に苦しんでいる人はマスクや眼鏡を使って顔を隠そうとしたり、家中に鏡を取り付け、いつでも自分の顔がチェックできるようにもしていたりするという。

 また、この病気を患っている人の8割がうつ病を併発しているというのも興味深い点。中には、顔への絶望が強すぎて「死んだ方がましだ」と考え、自殺に至るケースも。

 このような事態を招く醜形恐怖は主に、本人の強迫観念から成り立っているが、外からの影響を受けて引き起こされることもある。他人が何気なく口にした、からかいの言葉が病気を誘発させる原因となってしまうことだってあるのだ。

 私たちは近しい間柄でないと、見た目だけで人を判断して嘲笑ってしまうことも少なくないだろう。しかし、軽い気持ちで自分が指を指して笑った相手が、その言動に心を痛めて精神疾患に陥ってしまう可能性もあるのだということを肝に銘じておく必要がある。

■美容整形を行えば醜形恐怖は治療できるのか?

 自分の顔に激しい嫌悪感を覚えると美容整形を駆使して、他人に見せられるような顔にしようと考える方もいるのではないだろうか。実際に著者の町沢静夫氏も、醜形恐怖の患者はむしろ増えているのに精神科の外来へ来る人は年々減っているように感じており、軽い醜形恐怖は美容整形で手術を受けているのではないかと考えている。

 しかし、それは本当に根本的な解決法になるのだろうか。精神科では醜形恐怖への治療にはSSRIという治療薬を使ったり、カウンセリング、認知行動療法などを行ったりしながら心の問題を解消していくことにスポットを当てている。そのため、顔を変えるだけでは、根本的な解決になるかは疑問である。

 自分の顔を好きになるのは至難の業だ。もし自分の顔や体形に死にたいほど嫌気が差していたら、本書を参考にしながら醜形恐怖を正しく理解し、心のSOSにできる対処法を考えていこう。

文=古川諭香