緊張しないようにするほど、失敗する… 一流俳優が実践する目からウロコの緊張のとりかた

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公開日:2018/12/20

『まんが版 緊張をとる 人前編』(伊藤丈恭:著、岡崎圭:作画/芸術新聞社)

 お笑い芸人、俳優など、人前でパフォーマンスできる人は、なぜ緊張しないのだろうか? 実は一発勝負の舞台に上がる俳優の世界には、一般には知られていない独自の緊張をとるメソッドがあるという。

 俳優が学ぶ、緊張のとりかたを、漫画でわかりやすく教えてくれる1冊が『まんが版 緊張をとる 人前編』(芸術新聞社)。著者の伊藤丈恭氏は、吉本興業や演技のワークショップの講師として活躍する演技トレーナーである。

 本書の主人公は広告代理店勤務の若手男性社員。部署対抗のプレゼン大会に向けて、「緊張」をとりたいと思っているところ、スナック「とらのあな」を経営する元大物美人女優に、演劇的アプローチによる緊張のとりかたのレッスンを受けることになる。

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 緊張には「瞬間的緊張」と「慢性的緊張」があるという。人前に出たときや、失敗してはいけないときに出るのは瞬間的緊張だ。「慢性的緊張」は、上昇志向がある真面目な人ほどなりやすいもので、とるためには性格を変えていく必要があるという。本書では、プレゼンなどに役立つ、瞬間的緊張のとりかたを主に紹介している。

「リラックスしなくては」と自分に言い聞かせるが、より緊張するという経験はないだろうか。著者は「操作できない心でなく操作できる肉体からアプローチして誘導していくこと」と述べる。著者主宰の演技クラスでは最初に、「10秒ほどワーッと、ただ大声を出しながら暴れさせる」ことをしている。身構えていた心身をほぐすのに有効なのだそう。

 リラックスするためには、リラックスよりアプローチしやすい「集中」を先にもってくることだ。「集中」には対象が必要だという。漫画では、プレゼン前など、場所を選ばずできる「瞑想」を例に、呼吸を対象にする方法を紹介している。「緊張しないためには、心を無視して、気づいたら楽しめていた・集中していたというようになることだ」。

 元女優は「何かに夢中になったら時間がたつのも忘れるやろ。同じように何かに集中して緊張を忘れさせるねん」と、女子レスリング金メダリストの登坂絵莉選手はインタビューで、「試合前には20分ほど熱唱する時間をつくっている」「歌って、リラックスして会場にいく」と語っていた。

 誰でもできる「集中」のコツを掴む練習方法は、「電車や喫茶店で会話をしている人の近くに行って、仕事のことに集中してみる」ことだそう。このとき集中できているかどうかを確認しないこと。確認した瞬間集中が切れて会話に気がいってしまうからだ。サラリーマンにはピッタリの練習方法だ。

 本書には、滑舌と顔の緩めかたのエクササイズ、不安の解消方法など、「17の虎の巻」を掲載。虎柄のミニスカートが似合うキャラの濃い関西弁の元美人女優と、突っ込みをいれつつも成長していく若手社員と一緒に、緊張をとる方法を楽しく学べる1冊だ。

文=泉ゆりこ