【話題の衝撃作】なぜ彼女は「女の子」をやめたのか――女子で唯一“スラックス”で通学する元アイドルの葛藤

アニメ・マンガ

2018/12/24

『さよならミニスカート』(牧野あおい/集英社)

 のっけから自分の話で申し訳ないが、学生時代、痴漢や露出狂に遭遇したことがある。待ち伏せされ、車に連れ込まれそうになり、走って逃げたこともあった。

 担任にも報告したが「大きな声で叫べばいいのよ。平気な顔をすればいいの」としか言われなかった。交番にも行ったが、何かをされた記憶はない。当時は、困惑と悔しさが入り混じっていたものの、「女だからしょうがない」と自分を納得させ、記憶から抹消しようと必死だった。

 しかし、大人になった今ならわかる。あの時私は、怒ってよかったし、自分を責める必要なんて一ミリもなかった。

 牧野あおいのマンガ『さよならミニスカート』(集英社)は、学校の女子で唯一、スカートではなく、スラックスを穿いて通学する仁那(にな)の物語である。

 少女漫画誌『りぼん』で連載されている本作は、相田聡一編集長が「この連載は、何があろうと、続けていきます。」「このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。」という異例の声明を出したことでも話題を集め、SNS上でも反響があった。

 この物語の主人公・神山仁那(にな)は、アイドルグループ「PURE CLUB」で元センターを務めていた女子高生。彼女は、雨宮花恋という名で、サラサラのロングヘアーをなびかせ、短いスカートで堂々とステージに立っていた。

 だがある日、握手会で、刃物を持った男に手首を切りつけられる。犯人は今も逃走中で、心身ともに傷ついた彼女は、髪の毛を短く切り、アイドルを引退することを決意する。仁那は、周囲に自分の素性を隠し、学校生活を送ることになるのだが――。

 物語は、実際に起こった事件が想起されるのはもちろん、登場する女子が、様々な形で被害を受け、葛藤する様子が描かれている。

 例えば、仁那のクラスメイトで、色白で細く“男の理想”だと言われている未玖が変質者に襲われた時。担任は「太ももを触られただけ」と周りに告げ、男子は「短いスカートなら触られて当たり前」だと非難するが、未玖は笑って受け流す。

 また、大人しいクラスメイトで、度々痴漢に遭っている辻ちゃんは、未玖が「私はチカンなんてヘーキだから専用車両なんていらないし 男の人全員疑ってるみたいでなんかヤだな」と言ったせいで、専用車両が使いにくくなってしまう……。

 仁那は、そんな学校生活の光景を見て、幾度も傷つく。

 だが、仁那の正体に気がついた柔道部の男子・光に、自分の妹は、担任からセクハラされて引きこもったが、どんな時も何を言われても「女の子」を崩さないピュアクラに励まされていた……と打ち明けられたことで、励まされるのだ。

 物語は、犯人の正体を巡り、ミステリー要素も絡み、目が逸らせぬ展開が続く。

 次々と起こる衝撃的な展開に、我が身を振り返って考えさせられるのはもちろんのこと、「女性であるがゆえに消費される葛藤」が今の『りぼん』で描かれていることに驚きを隠せなかった。

『りぼん』を読む学生の女の子たちはもちろん、大人になり、『りぼん』を卒業した我々の心も大きく動かし、固定観念や価値観に揺さぶりをかけてくる。

 男も女も、その性ゆえに苦しむこともあれば、喜びを感じることもあるだろう。男女や世代問わず、この作品に「無関係」な人は一人もいないはずだ。

 本作を通して、様々な立場の人の思いや孤独を、多くの人と共有できれば嬉しいし、人知れず涙を流す者たちがいなくなることを願っている。

文=さゆ