ゲーセンは一番近所のテーマパーク! 陰で支えるスタッフの悲喜こもごもは…

マンガ・アニメ

2019/3/3

『ちこはゲーセン一番星!』(とく村長/双葉社)

 ゲームセンター、略してゲーセン。駅前やショッピングモールなどに位置し、賑やかな雰囲気を漂わせている。店頭にはクレーンゲーム機が設置されていることも多く、景品のフィギュアやぬいぐるみに目を奪われる読者もいるのでは。『警察白書』によると年々数を減らしてはいるそうだが、それでも小生の知っている店はいつも多くの客が楽しんでおり、その様子はさしずめ「近所のテーマパーク」といった趣だ。

 本書『ちこはゲーセン一番星!』(とく村長/双葉社)は、ゲーセンスタッフの視点で描かれる4コママンガ。女子大生の「大田ちこ」は気楽そうなショッピングモール内のゲーセンでアルバイトを始めるのだが、意外な忙しさに翻弄されてしまう。しかしチーフや先輩スタッフ、客との交流で徐々にやりがいを見出し、自身のセンスも開花させていく内容だ。作者自身がゲーセンでのアルバイト経験者なので、スタッフの仕事描写は実に納得のもの。実は小生自身も経験者なのでよくわかる!

 ゲーセンでの仕事というと、ゲーム機のメンテナンスや、クレーンゲームの景品補充、メダルの貸し出しとその管理が主なところだろうか。加えて、忘れてはならないのが掃除である。どうしてもゲーム機は手の皮脂で汚れやすい。さらにクレーンゲーム機などは、景品が綺麗に見えていなければならず、ケース表面の汚れは禁物である。小生自身も、接客の手が空いた時は拭き掃除を繰り返していた覚えがある。

 第一話でも、ちこは店のチーフから「手すきの時は常に掃除が基本」と言われて、渋々ながらクレーンゲームコーナーで拭き掃除を始める。すると、孫を連れた老人から景品のぬいぐるみを少し取りやすくしてほしいと頼まれる。実際、掃除をしながら回るのは、客の様子を見回ることにも役立つのである。ちこは新人の判断で取りやすくしてよいのか躊躇するのだが、孫が老人に期待をしている姿を見て、迷いを振り払いぬいぐるみの位置を調整。すると一発で取れてしまい、やり過ぎたかと冷や汗……。

 そこへチーフがやってきて「まずまずの判断だ」とねぎらう。このチーフ、ちょっと強面だがいわゆる「できる上司」で、奔放なちこに意表を突かれることもあるが、いつも優しく見守っている。チーフ曰く「取れすぎず取れなさすぎず、適正な割合がリピーターを生む」ということだ。楽に取れれば客は喜ぶと思いがちだが、すぐに飽きられるし当然だが経営にも負担だ。しかし、ある程度の手間をかけて景品を取れば達成感もあり、喜びが増す。そして手助けしてくれた店員にも愛着がわき、次回の来店を期待できるのだ。

 ところで本書では、クレーンゲームのコツを少しだけ紹介している。最も基本的な攻略法なのに、意外と知られていないようなので紹介したい。ちこもチーフに教わって初めて知ったのだが、景品を取る際にアームでバランスよく掴もうとしている人が結構多い。だが、アームの掴む力はとても弱く、景品の重心を掴んでも重さでその爪から落ちてしまうのだ。だから、少しずつ爪で引っ掛けては、取り出し口へとずらしていくのだ。決してワンコインで取れると思わず、楽しむための店への投資と思ってほしい。

 その昔、ゲーセンといえばゲーム好きが腕を競う場であったが、1990年代以降はクレーンゲームの景品がバラエティー豊かになり、またプリクラなどの写真プリントシール機の流行で、女性の来店も増加。気軽に遊ぶ層が増え、昭和の頃の暗い雰囲気はすっかり影を潜めてしまった。現在では親子連れの客も多く、まさに「近所のテーマパーク」と呼んでも差し支えないだろう。

 本書を読んで、ゲーセンのアルバイトに応募してみたくなる人がいるかもしれない。もしそうなら経験者として、是非ともオススメしたい。なぜなら、それは客を笑顔にさせるお仕事だから。楽しみを提供する側に回れるなんて、ステキなことじゃないか。

文=犬山しんのすけ