ひとりぼっちの心配はもうない!「シェアライフ」で“新しい時代の幸せ”に飛び込もう

暮らし

更新日:2019/4/2

『シェアライフ』(石山アンジュ/クロスメディア・パブリッシング)

 近年の日本ではさまざまな生き方が浸透しはじめ、自分らしい人生も歩みやすくなってきた。しかし、その反面では核家族化や孤独死といった社会問題が浮き彫りになるほど、人間関係が希薄になってきている。私たちはたくさんのお金を所有することが豊かだと信じて時代の波に乗ってきたのに、どれだけ物質的に豊かになっても真の幸せが手に入らないことに気づいてしまった。

 そんな生き方を変えるには、「シェア」というキーワードが欠かせない。『シェアライフ』(石山アンジュ/クロスメディア・パブリッシング)は、「シェア(共有)」という概念によって、社会や自分の生き方をどう変化させていけるのかに気づける1冊だ。

“もし今、この本を手に取ったみなさんが、仕事や子育て、老後の心配など、毎日の生活の中で何か一つでも悩みを抱えているとすれば、「すべてはシェアで解決することができる」と断言できます。そして「新しい豊かさ」を手に入れ、もっと自由に楽しく生きていくことができるはずです”

 そう豪語する石山さん自身も現在、渋谷で「“ともに暮らし、ともに働く”意識でつながる家族」というコンセプトの「Cift(シフト)」というシェアハウスで暮らしている。Ciftには0歳から60代まで、約60名もの多様な人々が生活中。協同組合のような組織的な役割も果たしているため、ひとりひとりが支払った組合費は食費や家賃、誰かが困った時の救助費として使われている。

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 また、メンバーの中には複数の拠点を持ち、旅をしながら働いている人もいるため、メンバーの家であればどこでも宿泊できるというルールの「全国家族拠点マップ」も設けたそう。Ciftのメンバーは全国どこへいっても「ただいま」と言える居場所があるのだ。

 こうした暮らしを通し、石山さんは他人同士がひとつの家族として暮らすことに無限の可能性を感じ、「シェア」という考え方を社会に根付かせていこうと、シェアリングエコノミー(共感経済・共有経済)の専門家・伝道師に。2017年には政府から「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」に任命され、シェアを通じて地方自治体の課題を解決すべく、全国を飛び回っている。

“「血縁家族」という形にとらわれなくても、人は人とつながり支え合いながら生きていくことができるし、幸せや豊かさはつくれると思っていました”

 気づけば、ずっと「家族」を探してきたという石山さんが提唱する「シェアリングエコノミー」に触れると、あなたの人生観もきっと変わるはずだ。

■これからは「信頼」や「つながり」が価値となる時代

 石山さんは「シェア」を希望だと断言。彼女は分断された世の中をもう一度繋ぎ直す役目を「シェア」が果たしてくれ、私たちを孤独や生きづらさから解放してくれると訴えている。

 私たちは現在、これまでに経験したことがないほど「正解のない時代」の中で生きている。「何もない時代」から「何でもある時代」になったのに、私たちは未来に希望が持てていない。

 ひと昔前は大学を卒業し、大手企業に入社すれば、将来は安泰だと言われていた。しかし、今では会社が私たちを守ってくれなくなってしまった。無事に入社しても、終身雇用によって人生が保証される時代は終わったのだ。さらに、会社だけでなく、国も私たちを守ってはくれない。定年を迎えた時に不安なく、豊かな年金生活を送れる人は果たしてどのくらいいるのだろうか。そんな風に、未来に対して希望が持てないのが日本の現状だ。

 だが、国や会社がたとえ機能しなくなっても、個人同士のネットワークによって繋がり合えていたら、未来に希望の光が灯る。なぜなら、家や仕事、子育ての悩みは誰かとシェアし、支え合うことで乗り越えていけるようになるからだ。これからは「シェア」が人々の人生を明るく照らし、「信頼」や「つながり」が価値となる時代がやってくる。

 現在、わが国には1年間に3万人が孤独死しているという悲しい事実がある。こうした辛辣な社会問題を解決していくためにも私たちは「シェア」という概念を正しく、柔軟に取り入れていく必要があるのだ。

■シェアは新しい価値を生み出す

「シェア」は人々に多様な生き方を提唱するだけでなく、win-winなビジネスを行うためにも役立つ。

 例えば、空き家や廃校などはこれまで価値がないものでしかなかったが、「シェア」という概念を当てはめると、ゲストハウスとして生まれ変わらせることができ、大きなビジネスチャンスとなる。

 個人が持っている知識を誰かに「シェア」するのも同じだ。自分の経験や知恵、特技を人々に提供することで、そこに価値が生まれる。

「シェア」はこんな風に、一見無価値に見えるものや個人に価値を与えてくれる役割も果たす。繋がり合うことで自分も潤い、誰かの喜ぶ顔が増える。それこそが、シェアリングエコノミーの醍醐味。シェアリングエコノミーには他人に幸せのおすそ分けができるというおもしろさがある。これからの日本には、「人との繋がりは資産」だという考え方が浸透していくことだろう。

 これから先の日本がどのような国になっていくかは、まったく予想がつかない。だが、人同士が新たな形で繋がり合うことができれば、どんな時代になったとしても乗り越えていけるはず。人との繋がりをどれだけ貯められるか。――それは、これからの新たな豊かさの指標となるのだ。

文=古川諭香