悪役はツラいよ…前世でプレイしていた乙ゲーの世界に転生したら、なんと悪役令嬢役!

マンガ・アニメ

2019/3/17

『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』(彩月つかさ:著、さき:原作、双葉はづき:キャラクター原案/KADOKAWA)

 マンガ、アニメ、ゲームなど、あらゆるコンテンツを盛り上げるために欠かせない“悪役”の存在。ときには「世界征服」を目指したり「恋の邪魔者」になったりと、あらゆる手段で主人公の目的達成を阻んできます。しかし、彼らの立場に立ってみると、罠を仕掛けるなど意外とやることも多いし、悪役らしく振る舞いつづけるのは精神的にも肉体的にも負担が多いような…。そんな悪役の苦悩を描いているのが『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』(彩月つかさ:著、さき:原作、双葉はづき:キャラクター原案/KADOKAWA)。

 人気同名小説をコミカライズした同作の主人公は、カレリア学園高等部に通うアルバート公爵家の令嬢・メアリ。彼女は、ある日、この世界が前世でプレイした乙女ゲーム「ドキドキラブ学園〜恋する乙女と思い出の王子〜」(通称:ドラ学)であることに気がつきます。しかも、彼女はゲームの主人公・アリシアをいじめて恋愛を邪魔立てする悪役令嬢。同時に、ヒロインの恋愛が成就したあかつきには、いじめの罪を咎められアルバート家は没落するラストも思い出すのです。するとメアリは「むしろ目指せ没落! 悪役街道を突き進むのよ!」と、悪役令嬢としての仕事を全うすることを決意。前世の記憶を頼りにゲームのイベントをたどりながら没落を目指します。

 しかし、悪役稼業は彼女の想像をはるかに超える高度なスキルを求められ、うまく悪役に徹することができません。メアリの定番イベント「財力自慢」を実行するために食堂に赴き、豪華な食事をアリシアに見せて「貴族と庶民の格の違いを見せつけてあげるわ!」と意気込むも、彼女が注文したのは「産地直送鮮魚丼」。きらめく海の幸がてんこ盛りの海鮮丼、日本人にとっては垂涎の一杯ですが、ドラ学の世界観にはそぐわず、従者のアディからも「お嬢、それはないです」とツッコまれてしまいます。料理のチョイスひとつとっても、悪役令嬢らしさを求められる大変さを感じますね。

 また、アルバート家主催の当主の生誕祝いは、パーティー慣れしていない庶民出身のアリシアを招待し、彼女の超絶野暮ったいドレスをバカにしたあげく、アリシアと結ばれる可能性が高いキャラ・パトリックとメアリのダンスをアリシアに見せつける、という重要なイベント。メアリもドレスを新調して気合十分でパーティーに臨むも、屋敷に現れたアリシアのドレスの野暮ったさに絶句。メアリの的確なファッションアドバイスと、アディのサポートによってアリシアのドレスが、とっても可愛く仕上がりました。そんな彼女の面倒見のよさが災いして、アリシアからは“お友だち認定”されてしまうのでした。

 悪役令嬢としての本分を全うしたいのに思うようにいかない、メアリ視点のドラ学。彼女の苦悩を目にすると「悪役になるのって相当大変なんだな…」と、哀れみの気持ちが湧いてきます。主人公の成功を阻むための努力を惜しまない、悪役のみなさんに敬意を表したくなる作品です。

文=丸井カナコ